1996年に発売された『スーパードンキーコング3 謎のクレミス島』。シリーズ3部作の中でも最高のグラフィックとボリュームを誇る本作は、RTA界でも古くから人気を博しているゲームです。
本作のRTAの特徴としては、『飛鳥文化アタック』『無の取得』などを多用する前2作品と比べて、正規ルートを逸脱するようなバグ技を利用する場面が少ないことが挙げられます。したがって、「ローリング」や「チームアップ」といった基本動作の最適化がタイム短縮のための大きな鍵を握る、硬派な競技であると言えます。
一方、ことボス戦に関しては、前作以上に凝ったギミックが用意されていることもあり、それぞれの戦闘に対してRTA特有のテクニックが開発されてきました。本記事では、それらの洗練されたテクニックの一部を動画とともに紹介します。
ボス戦テクニック紹介
『きょだいタル ボス ベルチャ』
ワールド1『オランガタンガ湖』のボスで、巨大なタルの怪物です。口の中にクリッククラックを放り込むとゲップによって後退しますが、放っておくとコング達を左端の穴に突き落とそうと少しずつ前進してきます。RTAでは通常、2ターンでベルチャを倒しますが、注目すべきは2回目の投げ入れ動作です。
動画のように、ベルチャが吐いたタルをチームアップ横投げで破壊し、そのままスムーズにクリッククラックを食べさせます。すると、本来タルを吐いた直後に起こるベルチャの前進モーションを回避することができ、ベルチャが穴に落ちるまでの時間を短縮することができます。見た目は派手ではありませんが、最適な動きから0.1秒でも遅れるとベルチャに前進を許してしまうので、非常にシビアな技です。
『きょうふのどくグモ ボス アーリック』
ワールド2『クレムウッドのもり』のボスで、緑色の毒玉を吐いて攻撃してくる毒蜘蛛です。タルを顎に4回ぶつけると倒すことができますが、通常はタルをぶつける度にアーリックが大量の毒玉を吐いてくるので、待機時間が発生してしまいます。
RTAでは、アーリックの背中に乗らずにチームアップで木の枝に素早く乗り、毒玉を吐かせる前に下からタルを当てることを繰り返します。動画のパターンはやや安定寄りの方法で、空中ジャンプを利用したさらに速い攻めルートも存在します。
『げきりゅうのまもの ボス スクワーター』
ワールド3『コットントップのいりえ』のボスで、滝の中に住む岩の化け物です。エリーの水鉄砲を、スクワーターが目を出した瞬間に当てるのがテクニックといえばテクニックですが、特筆すべきことはありません。つぶらな瞳がキュートですね。
『メカノスのきょうい ボス カオス』
ワールド4『メカノス工場のしま』のボスで、バロンクルールによって作られた攻撃用ロボットです。通常は回転する刃を足場にして頭を踏みつけることでダメージを与えますが、RTAでは様々な方法で地上から直接頭を踏むことでタイム短縮を狙います。
上の動画では、転がるディンキーを足場にすることで、カオスの位置が低くなったところを踏み付けることを繰り返しています。従来は『TASカオス』と呼ばれる、精密な入力を何度も要求される倒し方が圧倒的に速かったのですが、2018年に動画の方法が確立されたことで、少ないロスで比較的安定してカオス戦を突破できるようになりました(『TASカオス』に対してこの倒し方を『人間カオス』と呼ぶプレイヤーもいます)。
なお、以上の話は「Any%」などのカテゴリで用いられる日本版のカートリッジに限った話であり、北米版が主流の「103%」においては『1サイクル』と呼ばれる、さらに速い倒し方が可能です:
『K3のかいじん ボス ブリーク』
ワールド5『ゆきやまK3』のボスで、雪合戦を仕掛けてくる雪だるまです。本来は相手の投げてくる雪玉を避けつつ、ネクタイに雪玉を当てることで倒すボスなのですが、日本版限定で、『ブリークカット』と呼ばれる倒し方が知られています。やり方は極めてシンプルで、ブリークにわざとやられた後、暗転が始まる前の特定の1フレームのタイミングでスタートボタンを押すだけです。
ポーズ音と同時に暗転が始まれば成功で、何故か戦わずしてブリークに勝ったことになり、1分以上のタイム短縮になります。決まればとんでもないリターンですが、約1/60秒という精度の入力を、BGMだけを頼りに決めることが要求されるうえ、ミスする度に約16秒のロスになるという極めてハイリスクな技でもあります。
余談ですが、この技でブリークを倒すと、達成度は加算されるもののボーナスコインを取得できなくなってしまうため、完全クリアを目指す最中に遊びで使用する場合には注意が必要です。
『湖のばんにん ボス バーボス』
ワールド6『カミソリけいこく』のボスで、巨大なリラーチです。全3形態のそれぞれにRTA特有のテクニックがありますが、ここでは第2形態に注目します。バーボスの射出してくる巻貝ミサイルは時限式となっており、通常は画面内を大きく遠回りして紫色のリラーチの方を向くように誘導するものです。
RTAでは、バーボスと紫色のリラーチの隙間に上手く潜り込むことで、巻貝ミサイルを直接紫色のリラーチにぶつけます。上の動画では、スーパーダッシュの溜め動作を短く挟むことでピタッと停止する小技も利用して位置調整しています。
ちなみに、本作のGBAリメイク版では、バーボス戦の第2形態を丸ごとスキップしてしまう技が今年発見されています:
【世界記録紹介】スーパードンキーコング3 (GBA) Any%
『ふくしゅうのマシン ボス カオス』
ワールド7『カオスのかくれが』のボスで、カオスを倒すと真のボスであるバロンクルールが登場します。クレムリン軍団の親玉にあたる科学者なだけあって、多彩な仕掛けを活用して攻撃してくるのが特徴です。レバーを引くことで落ちてくるタルを素早く拾って背中にぶつけることを繰り返すのが基本的な倒し方です。
動画のシーンでは、左に移動する足場から上手くレバーへと飛び移ることで、クルールの往復移動を待たずに最短でダメージを与えています。タイミングが早すぎるとタルが電流に落ちて割れてしまい、遅すぎるとレバーを引く際にクルールにやられてしまうので、一連の動作を上手く固定する必要があります。
本記事では割愛しますが、隠しワールド『クレマトア島』でもバロンクルールとの戦闘が待ち受けています。こちらも猶予の短い即当てや、乱数に応じてこちらの行動パターンを変えることが要求される難しいボス戦となっています。
『レイドRTAマラソン』にてAny%のRTAが披露されます
『スーパードンキーコング3 謎のクレミス島』Any%のRTAが、『レイドRTAマラソン』にて、以下の通り披露される予定です。
日時:2020年11月14日(土)12:00~12:50
走者:とんこつ(筆者)
解説:テイラー
本記事で紹介したテクニックを中心に、本作のRTAの魅力を50分間で最大限お伝えできればと思いますので、是非本番の模様をチェックいただければ幸いです。
(本記事内のメディアは全て筆者のプレイ動画より引用しました。)
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