なぜトトリのRTAは難しいのか?アトリエシリーズ最難関とも言える作品の詳細を追ってみた

RPG

はじめに

最初に自己紹介ですが、『トトリのアトリエ』のRTAを数年間やっている者です。
RTA in Japan Online 2020』にて、『トトリのアトリエ』の“Any% RTA”を披露したのでそれで覚えている方も多いかもしれません。

トトリのアトリエはアトリエシリーズの中でも難易度が高いことで有名で、普通にプレイするとトゥルーエンドになることすらある前作『ロロナのアトリエ』とは裏腹に初見プレイだとノーマルエンドを見ることすら難しい作品に仕上がっています。

当然通常プレイだけではなくRTAを行うのも難しく、特に道中のプレイを最適化するのが非常に難しいRTAなのですが、『RTA in Japan Online 2020』中では説明しきれなかった“いかにトトリRTAはいかに難しいのか”について紹介します。

アトリエシリーズについて

アトリエシリーズ自体を知らない方もいらっしゃると思うので、まずはシリーズの説明から始めましょう。

アトリエシリーズはコーテーテクモ(旧ガスト)より発売されている錬金術を題材としたRPGで、通し番号が付いたものを数えると現在までに21作品が発売されています。

アトリエシリーズ – Wikipedia

ダンジョンや採取地などを駆け回る冒険パート、冒険パートで見つけた採取品を元に錬金術を使って新たなアイテムを作り出す調合パートに分かれているのがシリーズ最大の特徴と言えるでしょう。

調合品を元にお金を稼ぐことが目的のアトリエシリーズなどSLG要素が強い作品もありますが、最近の作品ですとRPG要素が濃いめなこともあり、作品によってそれぞれゲーム性が異なるのも特徴です。

トトリのアトリエについて

トトリのアトリエはアトリエシリーズとしては13作目に当たり、2010年にPlaystation 3で発売されました。

冒険要素と調合要素の塩梅がちょうどよく、やろうと思えばチュートリアル戦闘の次の戦闘がラストバトルということも可能なほどの“圧倒的自由度”がいちばんの魅力だと筆者は考えています。

その反面、難易度調整はかなり難しいほうに舵を切っており、前述した通り初見プレイで最初にバッドエンドになってしまうのが珍しくないくらいの作品に仕上がっています。

追加要素を足して発売されたPlus版、メッセージ早送り機能や移動高速化モードなどを足してバランスを調整したDX版がそれぞれ発売されていますが、RTAとしてはロード時間が早いという点のみでDX版(PC版)が最速となります。

最速でバッドエンドを目指すカテゴリ、トゥルーエンドを目指すカテゴリ、さらにバッドエンド以外のエンディングなら何でもいいのでクリアを目指すAny%が存在していますが、今回の記事ではこのAny%のRTAの戦略を考えるのがいかに難しいのかについて紹介します。

実際のクリアに向けて

Any%でクリアを目指すということで、まずはトトリのアトリエのクリア条件を整理しておきます。

トトリのアトリエでは以下の条件を満たすことでバッドエンドに行くことなくゲームクリア(Any%の条件)となります。

  1. チュートリアル期間中にメルヴィアを仲間にする
  2. 4年目6月1日までに冒険者免許のランクをDIAMONDにする
  3. 6年目6月1日までに最果ての村のイベントを見る

それぞれ専門用語があってよく分からないと思うので、順を追って解説します。

チュートリアル期間

トトリのアトリエを始めると最初はチュートリアル期間からスタートします。

一定の期間までに冒険者免許を取得する”というのが大まかな流れになりますが、ここでは特に難しいことはありません。
ゲーム内の日付で5月14日までにメルヴィアというキャラクターを仲間にするところまでイベントを進めていると冒険者免許が取得できるので、最速でその目標に向かってイベントを進行させるだけで戦略を考える幅がありません。

本来ならばこのチュートリアル期間中に調合のやり方や依頼のやり方などを学んでいくのですが、RTAでは調合や依頼を一切しないというのは当然として調合素材の採取すらしません。メルヴィア加入フラグが立つまでひたすら会話イベントをこなしていく作業パートとなります。

免許更新期間

チュートリアル期間が終わると新たな条件が課せられます。

錬金術レベル(調合に関わるレベル)を5にする、冒険者レベル(戦闘に関わるレベル)を5にすると言ったようなさまざまな条件(ゲーム内ではこの条件を“ディスカバリー”と言います)をクリアするごとにポイントが溜まっていき、そのポイントを一定まで上げて冒険者免許のランクを上げることが求められるのです。

最初はGLASSランクから始まり、ここからIRON、BRONZEとランクが上がり、最終的にDIAMONDの条件となる“920ポイント”が必要です。
通常プレイなら問題なく貯まるポイントですが、RTAだと多くポイントが貰えるディスカバリーだけを狙って取得していく必要があります。

この区間では4年目の6月1日までに920ポイントという条件を目指してプレイする必要があります。

後述しますが、RTAの戦略を考える上でこの免許更新期間が最も難しい区間です。取れる行動があまりに多すぎるためそれだけ分岐を考える必要があり、最適化を進めると無限に終わりが来ません。

免許更新後

無事に920ポイントを貯めたら、次は船を作って“最果ての村”に行く必要があります。こちらもゲーム内の日付で6年目の6月1日までに最果ての村に到達していなかったらバッドエンドです。

船も錬金術による調合で作るのですが、こちらは素材さえ揃えていれば特に難しいことはありません。問題は戦闘があることです。

免許更新期間は一度も戦闘を行わず、極端な話をすると冒険者レベルが1だろうと突破できます。しかし、バッドエンドを回避するために必要な最果ての村に行くには“フラウシュトラウト”という非常に強力なモンスターを倒す必要があります。
このフラウシュトラウトも相当に頑張れば冒険者レベル1で倒せるのですが、そのためには強力な攻撃アイテムや強力な装備を調合で作り出す必要が出てきて余計に時間がかかってしまいます。

この区間ではフラウシュトラウト戦のために準備は必要ですが、RTAではできるだけ少ない手順でいかに早く撃破できるだけの戦力を整えるかがポイントです。

何が難しいのか

ここまでバッドエンドにならないための条件を説明してきました。バッドエンドを回避し続ければ自動的にノーマルエンドになるためAny%ではそれを目指していくことになります。

バッドエンドを回避するだけで自動的にノーマルエンドになるのなら難しくないと思うかもしれませんが、早くクリアするための最適解を探すというのがとても難しくなっています。

理由は多くあるのですが、特に大きな理由を羅列してみます。

免許更新期間の圧倒的自由度

チュートリアル期間が終わって免許更新期間になるとポイントのためにディスカバリーを取得していくことになりますが、このディスカバリーの種類はかなり豊富です。

例えば、アイテムの調合をしていくと錬金術レベルが上がっていきますが、錬金術レベルに関わるディスカバリーと取得ポイントは以下のようになります。

条件ポイント
錬金術レベルを5にする5
錬金術レベルを10にする5
錬金術レベルを15にする10
錬金術レベルを20にする15
錬金術レベルを25にする20
錬金術レベルを30にする25
錬金術レベルを35にする30
錬金術レベルを40にする35
錬金術レベルを45にする50
錬金術レベルを50にする50

上記の表を見て分かる通り、錬金術レベルを50にするだけで必要な920ポイントのうち245ポイントが取得できる計算です。

しかし、免許更新後ならともかく免許更新期間中では錬金術レベルを上げるのにちょうどいい調合品が存在しません。50まで上げられるかどうかすら検証していませんが、相当な時間を消費することが予想されます。少なくともRTAでは現実的ではなく、私の戦略だと錬金術レベルは30までで止めています。

30までしか上がらないとなるとポイントもわずかしか得られないため、残りのポイントは他のディスカバリーで稼ぐ必要があります。
ディスカバリーには本当にさまざまな条件が用意されており、冒険者レベルを上げることでもポイントは貯まりますし、強敵を倒しても貯まりますし、採取地を訪れるだけで貯まるものもあります。依頼達成やアイテム欄を埋めることで貯まることもありますし、選べる選択肢が非常に多いです。

それらとの兼ね合いでどの行動が一番効率よくポイントを貯められるか、事前の戦術練りがとても重要となってきます。

実際のRTAだと“ワールドマップを計600日歩く”、“一度に依頼を12個達成する”、“依頼を一定期間中に10個達成する”辺りが対時間効果が高いディスカバリーですので、自分だけのオリジナルデッキと言わんばかりに取得するディスカバリーを吟味し、最終的に920ポイントになるよう調整していきます。

ディスカバリーだけでも戦略を練る上で相当な分岐がありますが、トトリのアトリエでは採取地もかなり多く、RTA中に行ける場所だけでも50箇所くらいは存在します。
上記画像の丸の箇所がすべて採取地となるのですが、画面内に見えているものだけでも相当な数があることが分かると思います。

戦略を練る際、たとえば採取地に3回寄ってアトリエに戻りたいと考えるだけでも「50*49*48」の組み合わせが存在することになります。大抵は寄る必要のない採取地なので机上のものですが、計算すると117,600通りの分岐ということになってしまいます。

相当に膨大な選択肢の中からどれが最速なのかを見極めるのは至難の業です。圧倒的自由度故の難しさと言えるでしょう。

採取品に付与される特性はすべてランダムで制御できない

ディスカバリーや巡る採取地の分岐を説明しましたが、採取地で拾うことのできる採取品についても説明しておきます。

トトリのアトリエでは採取地で採取品を拾い、それらをアトリエに持って帰って調合アイテムとして利用することができます。
この採取品にはさまざまな特性が付いており、例えば“効果アップ・小”という特性が付いている素材を調合に使って攻撃アイテムを作成すると威力の上がったものが作成できると言った具合です。

特性は数十種類ありますが、すべてランダムでRTA中に欲しい特性が常に出てくるとは限りません。
黄金平原』という採取地で“売却価格が上がる特性”を、『免許更新後の採取地2箇所』で“攻撃威力が上がる特性”をそれぞれ狙いたいのですが、うまく採取できるとは限らないので採取できた寄せ集めのものを使ってアドリブで調合していくことも必要です。


(画像はRTA in Japan Online 2020でプレイしたときのものを撮影)

後述した攻撃威力が上がる特性ですが、強い特性については事前に調べ上げています。
ただ、数が多くて覚えられないので私の場合はこのように電子ノートを使ってメモとして残しながらプレイしています。ちなみに本当に運が悪い時はここに載っていない特性をアドリブで使うこともあります。

事前の戦略のみならず、プレイ中にその場でどのように調合するかを考えながらプレイしなくてはなりません。他のアトリエシリーズでもこのようなことはありますが、トトリは特にシビアです。

調合成功率は100%ではなく失敗したときを考えてアドリブが必要

今まで触れていませんでしたが、最終的に船を作ることになるので船を作るための調合が必要となってきます。

この船を作るまでの調合過程ですが、常に調合成功率が100%ではないので失敗したときに応じてその場でアドリブ調合をすることが必要となってきます。

ちなみに3回調合に失敗するとディスカバリーを取得できてそれがポイントとなるため、成功しすぎてしまうとポイントが足りなくなってまたアドリブが必要になってしまうという泥沼具合です。

狙った調合は常に成功させるよう戦術を組んでいる方もいらっしゃいますが、その場合だと錬金術レベルが上がるのが遅くなるので調合回数がかさんでしまいます。

最速を取るか多少時間を掛けて乱数要素を消すか、辛い二択が要求されます。

最後に降りかかるフラウシュトラウト運ゲー

ここまでさまざまな難関ポイントがありましたが、実はラストバトルであるフラウシュトラウト戦が運ゲーとなっています。

これはDX版で修正された箇所なのですが、フラウシュトラウトが1ターン目に必ず放ってくる全体攻撃『大津波』でクリティカルが発生するよう変更されました。

DX版以外では絶対にクリティカルが発生しなかったため大津波の最大ダメージ(49)以上のHPを保っていれば問題ありませんでしたが、DX版ではラストバトルまで来てトトリにクリティカルが飛んできたら確定で負けてしまうというものすごい運ゲーが待ち受けているのです。

ちなみに、トトリのHPが10%以下のときだと敵の行動を無条件でキャンセルできるスペシャルアシストを持つキャラクターを最終パーティーに入れていますが、トトリのHPは52なのに対し大津波のダメージ乱数は44~49となっています。44~46を引いても負けではないのですが、勝率は著しく低下してしまいます。

装備品を整える、さらに特性運ゲーが増えますが連続行動ができるようになるアイテムを作成する、あるいは冒険者レベルを上げてクリティカルが出ても耐えるようにするという選択肢も候補には上がりますが、現在の最速戦術では全員初期装備なのに加えてトトリの冒険者レベルは5(一回戦闘をするだけ)というとても時間のかからない戦術を取っているため、おそらく装備品や冒険者レベルを上げる戦術を取ろうとするならば最速記録は出ません。

まとめ

ここまでトトリのアトリエRTAの難しさを淡々と説明してきましたが、これに加えてワールドマップ上でランダムイベントが起こる頻度が少ないかどうか、ワールドマップ上でランダムエンカウントが多いかどうかなどでタイムが上下します。

早くクリアするための最適ルートを考えるのが難しく、さらに乱数要素も存在するなどタイムを狙う上では非常に過酷なタイトルとなります。
ただ、1周1時間20分程度とRPGにしてはクリアタイムが短く、試行回数で何とかこなせてしまえるタイトルでもあります。

PC版が最速となるとPCスペックにもタイムが左右されるのでおすすめは難しいですが、無印版、Plus版、DX版とバージョンごとにカテゴリも分かれているのでぜひ挑戦してみてください。

記録集の一覧はこちら
Atelier Totori: The Adventurer of Arland – speedrun.com
ニコ生RTA Wiki
Peercast Record/トトリのアトリエ – Peca視聴者Wiki

筆者記録&チャートはこちら
YouTube
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プレイするときにメモとして見てるやつ

※ゲーム画像はすべて YouTube – [WR] Atelier Totori DX Any% Speedrun in 1:19:51 より引用しました。

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