チームで走るRTA「ゼノブレイドクロス Any% Online」の魅力や裏話を聞いてみた

RPG

皆さんは、ゼノブレイドクロスの「Any% Online」というカテゴリをご存知ですか?

RTA in Japan Online 2020で披露されたほか、RTAGamersでも既に記事が執筆されているので、存在は知っているという人も多いかと思います。

【ゼノブレイドクロス】RTAのカテゴリー「Online」とは何か
画像は任天堂公式サイトより はじめに ゼノブレイドクロスは2015年4月29日にWii U専用ソフトとして発売されたゼノブレイドシリーズ第2作目のゲームです。 2020年8月13日~16日に開催された「RTA in Japan O...

 

このカテゴリの大きな特徴は、オンライン機能を利用して他のプレイヤーから装備を受け取れることで、良い記録を出すためにはプレイヤー自身のテクニックだけでなくサポーターとのスムーズな連携も求められるなど、他のRTAにはない個性的な点がいくつも見られます。

今回は、このカテゴリで世界1位・2位の記録を持つお2人に、ゼノブレイドクロスのAny% Onlineの魅力や裏話について伺いました。

本日のゲームと走者紹介

今回取り上げるゼノブレイドクロスは、任天堂から2015年4月に発売されたWiiU向けのRPGで、ゼノブレイドシリーズの2作目にあたります。

開発は、ゼノブレイドシリーズをはじめ、バテン・カイトスやゼノサーガなどの名作RPGを手掛けたモノリスソフトが担当しています。

 

Speedrun.com上にはAny%と100%の2つのカテゴリがあり、それぞれがOnlineとOfflineに分かれています。

Offlineではオンライン要素の使用が禁止されているのに対し、Onlineでは使用できるため、同じゲームでありながら両者の戦略は大きく異なります

 

今回は、このゲームの「Any% Online」で世界1位の記録を持つYMG-C氏と、同2位の記録を持つBlue氏にお話を伺いました。

YMG-C氏

YMG-C氏

ゼノブレイドクロスが発売された年からRTAを始め、Any% Onlineのカテゴリで世界記録を保有するプレイヤー。RTA in Japan Online 2020に同カテゴリで参加した経歴も持つ。レースゲームやシューティングゲーム、音楽ゲームでも全国トップクラスの成績を持ち、プレイヤーや解説でイベントに出ると「○○の人じゃなかったの?」というコメントがよく来るが、「全部自分です」とのこと。

 

Blue氏

RTA in Japan Online 2020のゼノブレイドクロスを見てRTAを始め、Any% Onlineのカテゴリで世界2位の記録を保有するプレイヤー。ゼノブレイドシリーズの他の作品もRTAに取り組んでいて、2021年の名古屋RTAオンラインフェスでは「ゼノブレイド2 黄金の国イーラ」のRTAを披露した。RTAGamersでもゼノブレイドシリーズの記事を複数執筆していて、前述のAny% Onlineの記事も執筆を担当している。

ゼノブレイドクロスとの意外な出会い

Shino.まずは、なぜお2人がゼノブレイドクロスのAny% Onlineを走るようになったかを教えてください。せっかくなので、ゼノブレイドクロスとの出会いから教えていただけますか?

YMG-Cゼノブレイドクロスとの出会いは、ゲームのバグを見つける仕事です。2014年ぐらいには30人くらいのチームを率いるリーダーになっていたんですが、その頃に「RPGの依頼があるんだがやってくれんか」って言われたのが、ゼノブレイドクロスでして。

エンドロールにもお名前が載っているとのこと。(画像はhttps://www.twitch.tv/videos/1054022575から引用)

Shino.すごい、発売前からじゃないですか!

YMG-C仕事で触ってた期間は8カ月くらいだったんですけど、クロスは面白くて、仕事が終わってからも「早く発売してほしいな」って思ってたんですよ。このゲーム全然まだやり足らんから、早くやりたいなっていう感じで。

Shino.それだけ魅力的なタイトルだったってことですね。では、なぜRTAをやろうと?

YMG-C発売後に普通にやり込んで、それが少し収まったくらいのタイミングで、初見攻略をしてる動画とか実況とかを見るようになって。僕ももう1回最初からやってみようかなって思ったのが、RTAのきっかけですね。やり始める前にドラクエとかのRTAをやってる人の配信にお邪魔してたんですけど、それでRTAに興味を持ってたのもあって、自分もやるならこのタイトルかなって。

Shino.なるほど。

YMG-Cで、Onlineをやる理由はめちゃくちゃ単純でして、Offlineより早いからです。どうせ頑張って1位を取るんだったら、このゲーム内で一番早いところにいるっていうのがかっこいいかなと思ったんで。俺が一番最初にセントラルライフを見つけられる人間だと。

Shino.めちゃくちゃかっこいいですね。

YMG-Cあとは、「チャートが簡単そうだから覚えるのが少なそう」って思ったのとか、自分のやり込みデータを反映できるって理由もあります。2015年の年末くらいからRTAをやってたので、それが6年続いちゃいましたね。

Shino.なるほど。Blueさんはどうですか?

BlueきっかけはRTA in Japan Online 2020です。当時はただ見てた人だったんですが、もともとゼノブレイドシリーズが好きだったので、RTAをやろうかなと思いました。でも、初めてRTAをやる人がいきなりやるのはキツいなって思って。

 

Tips:いきなりやるのはキツい

当時の世界記録は3時間半ほど。確かに、これまでRTAをやったことのない人がいきなりやるのはキツい。

 

BlueSpeedrun.comのページを眺めてたら、ゼノブレイドDEってゲームに収録されている追加ストーリーのRTAがあって、難易度を下げたモードならざっとやっても40分で終わるんですよ。まずはそれをやって、一区切りついたところで2番目にESTが短いゼノブレイド2の追加コンテンツをやって。これがWRが2時間10分くらいで、自分が最初にやったときは3時間くらいでした。

Shino.徐々に慣らしていったわけですね。

Blueちょっと長めので感覚を掴んで、こっちもある程度一区切りついたんで、じゃあ本題ってわけじゃないですけど、最初に見たやつにいこうかっていう流れですね。なので、Onlineを選んだのは単純に、「最初に見たやつにそろそろ行こうか」ってなったからです。

Shino.なるほど。

BlueYMG-Cさんと比べるとだいぶ短いんですけど……。

Shino.いや、これが普通なんで大丈夫です。

5000時間やり込めるゲーム

Blue実は、RTA in Japan Online 2020を見ていた時はゼノブレイドクロスは未プレイでして。

YMG-Cうんうん、そうでしたねえ。

Blueもともと、「どこかでやらないとな」とは思ってたんですよね。1もやって2もやって、クロスだけやってなかったんで。ちょうどいい機会だしやるかってことで、まずは通常プレイで100%クリアをして、それからRTAをやるって流れでした。

Shino.そうだったんですね。ちなみに、100%クリアってどのくらいかかりました?

Blue攻略サイトをガン見して、170時間くらいですかね。

Shino.そんなにかかるんですか!?

YMG-Cかかりますねえ。100%コンプするのは攻略サイトがないとほぼ不可能じゃないかなと思えるくらい壮大なゲームでして。僕は500時間くらいかかりましたね。

Shino.ご、500時間……。

YMG-Cそのくらいやりこみ要素が奥の深いゲームでして。何せ広いので、横浜市と同じくらい面積あるんですよ。

 

Tips:横浜市

神奈川県東部に位置する政令指定都市。面積は437.78km²(データは国土地理院「全国都道府県市区町村面積調」より引用)。

 

Shino.広っ!

YMG-C初回クリアも結構時間のかかるゲームでして、多分平均60時間~70時間くらいはかかるんじゃないかと思いますね。

Shino.すごいボリュームのゲームだ……。ちなみに、お2人は今ゼノブレイドクロスを何時間くらいプレイされてるんですか?

Blue340時間くらいですね。ただ、ディールで待機してる時間もカウントされてるんで、実働は300時間を切るくらいだと思います。

YMG-C私はRTAを含めると、もう5000時間くらいになってますね。

Shino.凄まじいやり込み……!

YMG-Cまだマリオカートには届いてないので頑張ります。まだやれるぞって感じはしますね。

今なお進化を続けるチャート

Shino.YMG-Cさんはゼノブレイドクロスが発売された2015年からRTAをやっているとのことですが、チャートはご自身で作られたんですか?

YMG-Cですね。Offlineのチャートを見ながらOnlineに落とし込んでチャートを作ってました。そこから「Onlineだったらここ省略していいんじゃないかな」ってところをどんどん改良してます。

Shino.なるほど。チャートを作るうえで特に苦労したところってありますか?

YMG-C苦労したというより、現在進行形で悩んでることなんですが、1つは中盤にある「ドールライセンス取得クエスト」ですね。15000以上の収益を得るってクエストがあって、世界を飛び回ってデータプローブってものを埋めていると、ゲーム内15分ごとにお給料が貰えるんですよ。

 

Tips:ゲーム内時間の15分

ゲーム内時間にはロード時間が含まれないため、ゲーム内時間の15分は、現実世界では15分+ロード時間で20分ほどかかる。

 

YMG-Cそれが15分ごとに得られるので、ドールライセンス試験が始まる直前に収益があったら、次の収益まで15分待たないとクリアできないんですね。タイミングよく受けないと周期待ちが発生するんです。

Shino.周期。RTAらしい言葉が出てきましたね。

YMG-C今のBlueさんのプレイだったら、ちょうどドールライセンスをやってるところで収益が入るんですけど、僕がやってるとその収益タイミングがずれちゃってて5分くらい待たされるってのがあって。その5分間の待ちをなんとか上手いこと使えないかとか、もう1つ早い周期に乗れないかとか、前半のチャートを更新して試したりしてます。

Blue今のチャートだと、スプリットの時間で大体1時間45分くらいに来るんだろうなってのは分かってるんですけど、そこから1周期早めるってなると相当頑張らなきゃいけないっていう状態で。

YMG-C相当なんかやらないと、1周期早くはならないですよね。この2カ月くらい相当頑張ってみたんですけど、1周早くは乗れなさそうなので、今のところはちょっと諦めようかなって。あとは、スカウトの装備やアーツ・スキルの組み合わせも未だに考えてますね。

 

Tips:スカウト

他プレイヤーのアバターを勧誘し、パーティーに加えられるシステム。

 

YMG-Cアーツは110個以上、スキルは90個以上あって、装備が近距離6種類に遠距離6種類、どの属性のどのボーナスが付いてるやつがいいかとか。構成が無限大に考えられるので。

Shino.エグいですね。

YMG-Cスカウトって自分で操作できなくて、AIが勝手に行動するので、中にはAIが使ってくれないアーツもあるんですよ。今は有識者から資料を頂いて大体分かるようになってるんですけど、僕の記録が4時間台の頃は自分の手で実際に試してましたね。1人で黙々と。正直、このスカウトの構成だけで500時間は使ってます

Shino.えっぐ。こんなに時間をかけて作り上げたチャートなのに、今でも更新されてるって本当にすごいですね。

YMG-Cちなみに、今朝も改良点が見つかってます

 

インタビュー30分前のYMG-Cさんのツイート

 

Shino.タイムリー!

Blue朝起きて、配信やってるって思って見に行ったら、「あ、ここちょっとチャート変わったんすよ」って言われて、「はえ~」って。本当に3時間前くらいの話です。

YMG-C何となく早起きしたんで練習をしたら、今までダメージが安定してなかったところの原因を新たに発見しました。でも、改良のヒントは、うちのチャットに来てくれてるガチ勢の方々が提供してくれるデータから見つけることが多いですね。4000時間とかやり込んでるガチ勢の方々がいらっしゃるので。

Shino.5000時間やってる走者と4000時間やってる視聴者、ガチ勢しかいないな? ちなみに、RTA in Japan Online 2020から1年ちょっと経ちましたが、やっぱりあの頃からチャートって変わってるんですか?


RTA in Japan Online 2020のアーカイブ。この当時はESTが4時間15分だった。

YMG-Cこのゲームは1章から12章まであるんですけど、3章からゲームクリアまでは全部の章で変わってます

Shino.そんな変わるんですか!?

Blue今のチャートを知ったうえで見たら、「なんでこれやってんだろ」って思うところが結構ありますね。そのくらい見る影も形もなく変わってますね。

YMG-C全然違うよね。

Blue全然違いますよね。

YMG-C一番劇的に変わったのは、エンデュロ鉛を3つ取得するチャートですね。去年の夏までは、エンデュロ鉛を5分ごとに運で貰ってたんですよ。イベントでは皆さんのお祈りが通じて無事走れたんですけど、通じなかった時のために「お祈りが通じてあるデータ」を用意しておいたので。お料理教室みたいに、「貰った世界線がこちらです」と。

Shino.「貰った世界線」というパワーワード。

エンデュロ鉛が出ていないことを心配するシーンも多い

YMG-C更新ペースでも運が悪いとそこで詰んでしまうっていうお祈りポイントだったんですけど、スカウトが使えるんじゃないかって。スカウトを連れた状態で一定の経験値を得ると、フロンティアネットから採掘されるものがランダムで1個手に入るんですよ。貰えるものはアバターをスカウトに登録した時にランダムで決定されるので、雇う側からすると何回雇っても同じものが得られるんですね。

Shino.ほほう。

YMG-Cなので、登録してあるアバターを引き出してレベルを上げたら、毎回同じものが貰えるんですよ。だから貰えるものをエンデュロ鉛にしたキャラクターを3つ作っておいて、レベルを上げてエンデュロ鉛を確実に得るってチャートを作ったんです。

Shino.大革命ですね! それ、どうやって思いついたんですか?

YMG-Cきっかけは、やり込みプレイヤーの方です。「こうしたらエンデュロ鉛が簡単に手に入るんじゃね?」ってチャットで言ってくれて、「え~、そんなことあります?」って感じで言ってたんですけど、「じゃあ俺作るわ」って言って作ってくれたんですよ。

Shino.聖人かな?

YMG-Cしかも、そのキャラを作るには、めちゃくちゃ低レベルで頑張ってコツコツレベル1の敵を倒し続ける必要があるんですよ。そのやり込みプレイヤーの方が3人作るって言ってくれたんですけど、それはあまりにも悪いので、1体は自分で作りました。

分かりやすい名前のキャラが複数体いる。(画像はhttps://www.twitch.tv/videos/1054022575から引用)

Shino.地道な作業ですね……。それ作るのに、どのくらいかかりました?

YMG-C3~4時間くらいですかね。それで安定するなら安いものだ、と。おかげでエンデュロ鉛を確実に得るチャートが完成したので、事実上走れないという状況にはならなくなりましたし、他のチャートの改変にも手軽に着手できるようになったってところはありますね。

Shino.1年ちょっとでそれだけ変わるんじゃ、チャートって覚えられるんですか? 見ながら走ってるんですかね?

YMG-C僕はメモ書きが一応あるんですよ。ちょっとお見せします。

 

YMG-Cさんが実際に使っているメモ

YMG-Cさんが実際に使っているメモ

 

Shino.ほ~。これはちなみに、ゲームだと何分間くらいにあたるんですか?

YMG-Cえっと、これで

Blue全部ですね。

Shino.全部!?

YMG-C僕が見てるカンペはこれだけです。

 

YMG-Cさんが実際に使っているメモ

せっかくなので再掲

 

Shino.3時間!? これで!?

YMG-Cはい。

Shino.信じられない……。Blueさんは、これを見てどう思いました?

Blueなんとなく分かります。

Shino.分かるんだ……。ということは、チャートをあれだけ変えても、頭に入ってるってことですよね?

YMG-Cチャートを変更したことを身体に染み込ませているので、頭に入ってるかどうかと言われると……。頭に入った物を引き出していると手元が遅れるんで。あとは、バトルとかでアドリブが入ることもあるんですけど、それはその場判断ですね。

Shino.身体で覚えるのかあ……。Blueさんはどうですか?

Blue私はチャートを全部出してます。最近は慣れてきて、メモレベルでも行けるなと思う時はあるんですけど、大体そういう時って「次なんだっけ?」ってやらかすんで、それするくらいなら出しとけって。でも、バトル中とかは初動だけ見ておいて、あとは流れで

YMG-Cボタン押し間違えたりとかもしますからね。

Shino.やはりやり込みの力は偉大だ……。

Onlineならではの面白さ

Shino.今の時点で既に興味深い話がゴロゴロ出てきてるんですが、そろそろ鉄板の質問に移りましょうか。お2人がこのRTAに感じている魅力って何ですか?

YMG-C一番は、サポーターの方たちとのコミュニケーションですね。装備を拾っていただいて、そのドロップ品をスコードの誰かに配ることができるんですよ。サポーターの方に「この装備取ってください」ってお願いすると、言った次の瞬間に取ってくれたりとか、想定以上に良いドロップを取ってくれて驚いたりとか。

 

Tips:スコード

インターネット上に集まった、最大32人のプレイヤーのグループ。Any% Onlineのカテゴリでは、走者をサポートするために数人のサポーターが同じスコードに入り、獲得した装備を走者に提供する。なお、この装備の提供は、走者の間で「投げる」と呼ばれることが多い。

 

Shino.配信を拝見してて思ったんですが、皆さん本当にチームワークがすごいですね。Speedrun.comに記録を掲載する時に、一緒にサポーターの名前も載せた方がいいんじゃない? って思っちゃうくらい。

YMG-Cそうそう。チームですよね、完全に。役割分担して。他のRTAにはないコミュニケーションじゃないですか。僕は少なくとも、あそこまで視聴者さんの協力を得ながらやるRTAは見たことがないので、今のところ唯一無二のカテゴリなんじゃないかと思ってますね。そこが魅力的ですね。

Shino.YMG-Cさんの現世界記録の動画を見ていても、チャット欄の雰囲気がとても良いと感じました。

YMG-Cあの時は、序盤は運が悪かったんですけど、中盤以降はほぼSoBと同じペースでした。10章が早く終わったところで「これはいけるんじゃないかな」って思った瞬間からめちゃめちゃ緊張しましたけど、チャットでいつもの常連さんが応援してくれてたんで。

10章終了時点でのチャット欄。「ナイス」の掛け声が温かい。(画像はhttps://www.twitch.tv/videos/1054022575から引用)

Shino.なんという優しい世界

YMG-C「いいぞ!」とか言ってくれる空気感が、めっちゃありがたいんですよ! おかげで、緊張感がありながらリラックスした状態でできましたね。なので、自分でも「いいぞ!」とか「ナイス!」とか言うようにしてます。その優しい世界があったからこそ、記録が出たかなと思ってますね。

Shino.本当にチームって感じがしますね。RTA配信を見てて記録が出た時って嬉しいですけど、このカテゴリの場合は実際に自分が参加してる分、それ以上に団結力が強いというか。

YMG-C実は、つい最近まで「3時間切りは絶対無理」って言ってたんですよ。Blueさんにも確か言ってたと思う。

Blue聞いてましたね。

YMG-C自己ベストが3時間10分くらいの時は、現状のチャートでは3時間切りは絶対無理って話をしてたんです。でも、そこから細かいチャートの改良に改良を重ねて、「SoBを見るとなんとか切れそうな感じになっているな、運をつかめばいけるかもしれない」って感じで挑戦してましたね。

Shino.走者の努力とサポーターの協力で達成された記録だったんですね。

YMG-Cあとは、サポーターの方の役割はプレイ時間で言うとだいたい2時間くらいのところで終了して、そこからは自分だけの戦いになるので、気を引き締めるところがあるんですよね。「さあ、ここからは僕の戦いだぞ」って切り替えができるのも魅力です。

Blue私もそこは面白いと思います。あとは、スカウトで他のプレイヤーが使えるので、このカテゴリでは後半になればなるほど安定するんです。RPGのRTAって、だいたい後半になればなるほどキツい状態になると思うんですけど、そういうわけではないので。

YMG-Cですね、後半になればなるほど楽ですね。

Blue攻撃指示だけ出して、「あとはお願いしま~す」って言って眺めてたら、「あ~終わった終わった」って感じなので。

YMG-C後半の方がテクニックが要らないっていう。

Blueなので、前半さえ乗り切っちゃえば、タイムはどうであれ走りきれちゃうってところが楽だなって。Offlineの動画を見てると、後半になればなるほどきつくなってるのは見てても分かるので。

YMG-Cさっきのエンデュロ鉛も、Onlineでは確実に手に入るようになりましたけど、Offlineではまだ運ですからね。海外勢のOfflineを走ってる方が手に入れられなくて、そのまま配信が終わるのも見たことがあります。

Shino.Onlineの恩恵って大きいんですね……。

Onlineだからこそ起こるトラブル

Shino.反対に、Onlineだからこそ起きるトラブルってありますか?

YMG-Cたまに、スカウトがいなくなる時があるんですよ。

Blueありますね。

YMG-Cスカウトって新規順に並ぶんで、ずっと登録したままにしておくと下がってくるんですよ。カーソルを動かす時間がロスになるので、新規登録お願いして一番上にいる状態にして走ってたんですけど、新規登録した瞬間に他のユーザーさんがスカウトしてそのままログアウトすると、一覧からいなくなるらしいんですよ。で、その人がログインしてスカウトを返すか、3日間くらい経たないと復活しないらしいんですね。

Shino.それは困りますね。それ、走り出してから気付くんですか?

YMG-C走る前ですね。走る前に毎回「いるな、ヨシ!」って確認してから走るんですけど。

Shino.ヨシ!

Blue現場猫並みにやりますね。

YMG-Cあとは、パスファインダーがフィーバーしてるかも確認してから走ります。

 

Tips:パスファインダー

民間軍事組織「ブレイド」の部門の1つ。各地にデータプローブを設置し、フロンティアネットを拡充する役割を担っている。

 

Shino.フィーバーとは?

YMG-Cゼノブレイドクロスのアジアサーバー全体で、1日にどのくらい経験値を積んでいるかがサーバーに溜まっていて、前日の経験値を超えるとフィーバーが起きてユニオンのレベルが上がりやすくなるんです。そのユニオンのレベルが上がりやすい状態じゃないと、今はランが成立しないんですよ。
だから、サポーターさんの都合を合わせるのと同時にフィーバーも起こしておかないと、自己ベストが絶対出ないんです。で、その仕込みをしやすいのが土曜日だから、2人とも土曜日に走ってるんです。

Shino.事前に仕込みが必要なRTA。

YMG-C平日だとサポーターの方が集まらない可能性があるし、日曜日だと土曜日にプレイヤーが多くてユニオン経験値が多いから、朝一から仕込みを頑張らないといけないんです。でも、土曜日はお昼くらいには大概フィーバーに近い状態になるから走りやすい。

Blue土日の連投がないってのも同じ理由ですね。土曜に走ると、走った分の経験値も入っちゃうので。

YMG-C自らの首を締めつつ走ることになってしまう、と。

Shino.走るまでのハードル高すぎません?

YMG-Cで、その仕込みの時にBlueさんがたまたま経験値を稼いだら、エンデュロ鉛が貰えるはずのキャラクターでエンデュロ鉛以外が手に入ったんでびっくりしたっていうのが、昨日のランの前のことです。

Shino.あ~、昨日「仕込みに時間がかかってる」って言ってたやつですね!

 

インタビューの前日、定期ランの出走予定時刻が1時間30分遅れるトラブルが発生していた。

 

Blueアイテムが手に入ると「○○が手に入りました」みたいに表示されるんですけど、エンデュロ鉛じゃないものが表示されて。

YMG-Cエンデュロ鉛のところは更にチャートを改良してて、エンデュロ鉛用のスカウトを1体雇う時間を節約するために、4章のレベル上げのところで使うキャラがレベルアップするとエンデュロ鉛が貰えるように仕込んでおいたんですよ。けど、僕そのキャラクターの改善点を寝ぼけながら考えてたら間違えて新規登録しちゃってたみたいで、走る直前になってBlueさんから「報酬がエンデュロ鉛じゃなくなってます」って連絡が来て

Shino.はわわわわ。

YMG-Cで、Blueさんと相談して、ずっと僕が「申し訳ねえ申し訳ねえ」って言いながら粘ってたんですけど、結局仕込めなかったんですよね。なので諦めて、3人雇うのではなく、1個は運で手に入るのに賭けようって。

Blue調子が良かったら3人雇って安定した記録狙おうかなって思ったんですけど、3章で1回死んだので、あまり考えることもなく「突っ込んでみるか」って。

Shino.なるほど、そんなことが……。今回はそれでも完走できてましたが、「このキャラがいないから走れない」ってケースもあるんですか?

YMG-C今回みたく報酬が違うだけなら、報酬用のキャラを3体用意すればいいんで大丈夫です。ただ、「いない」ってなったら走れないですね。一番大事なのがレベル上げ用の「わら」で、あのキャラがいないとまず走れないです。替えが効くキャラも数体いるんですが、残りのキャラはいなかったら「走れないな、おやすみ!」ってなります。

Shino.必要なものがいっぱいだあ……。あと、サポーターの方を集めるのも下準備の1つだと思うんですが、サポーターを集めるのって大変ですか?

YMG-C今はレギュラーで協力してくれる方が5名くらいいらっしゃるんですが、気軽に参戦できるような状態にするにはかなり時間がかかりました

Shino.今の環境ができるまでは苦労されたんですね。ちなみに、Blueさんは走る前からサポーターをやってました?

Blue走り始める何週間か前にやっとって感じですね。自分の環境がやっと整って。

Shino.そうか、ある程度やり込んで環境を整えたデータを持ってないと、サポーターのスタート地点にすら立てないんですね。

YMG-Cそうですね。

Shino.本当に大変だなこのRTA。

YMG-C今はレギュラーで来てる方もいるんですけど、その方々も「今日は観戦で行きたいな」ってのもあると思うんですよ。なので、まだまだサポート募集中です

Shino.ゼノブレイドクロスをやり込んでいてサポートに興味があるそこの方、ぜひDiscordサーバーに参加してYMG-Cさんに連絡を取ってみてください。

リセットができないRTA

Shino.ところで、このゲームってリセットってできるんですか? 例えば、2時間走って「お疲れ様でした!」ってなったあとに、「ごめん、これリセットするわ!」なんてのはさすがに難しいですよね……?

YMG-Cないですね。リセットポイントを作るとしたら、オンラインでサポートしてもらわない序盤ですね。

Blueリセットするにしても、1回の配信でリセットはせいぜい1回ですね。

YMG-C「やめるわ」って言ったら、多分サポーターの方も気を悪くすると思いますし。

Blueそれこそ「WiiUがフリーズしました」とか言われたら仕方ないですけど、単純にタイムの都合だけだったら……ってのはありますね。

YMG-Cたまにこのゲーム、ソフトロックがかかるんですよ。僕は7回起きてます

Shino.5000時間もやってれば、7回くらいソフトロックもしますよね。

YMG-C1回は、Blueさんとレースしてる時に

Shino.それはさすがにタイミング悪すぎでは!?

YMG-CRTARacingでレースをやってる時だったんですよ。4章をクリアする時にソフトロックがかかって、4章はじめくらいからやり直してます。

 

画面左、YMG-Cさんの操作キャラが動かなくなる。

 

Shino.ひえぇ……そんなタイミングでソフトロックしなくても。

YMG-Cこの時のは原因が分からないんですけど、原因を特定できたものもあります。敵をターゲットして抜刀するとたまにソウルボイスってのが出て、操作キャラが喋るんですよ。そのセリフが消えた瞬間、1フレームの間にイベントラインに触るとソフトロックするんです。

YMG-Cさんが原因を特定したソフトロックの例

Shino.猶予1フレームのソフトロック。ゲームが上手いばっかりに。

YMG-C丁度引きやすいところが昔のチャートにあったんですよ。なんかソフトロックしやすいなって思ってたんですけど、そういうことだったんだって。

Shino.なるほど。またリセットの話に戻りますが、「この記録は駄目だな」って思った時、どうやってメンタルを保ってますか?

YMG-C僕は最後まで走りきりますね。リセットしたいのはイッセイテントウムシが全然出ない時くらいで、それ以外でリセットしたいって思ったことはほぼないですね。

Blueカボチャはどうですか?

 

Tips:カボチャ

アイテムの1つ「ギ・ドゥかぼちゃ」のこと。中盤のドールライセンス入手クエストで3個集める必要がある。

 

YMG-Cカボチャは別に、そこまで来ちゃったらリセットしたいとは思わないかな。

Shino.「ここまで来ちゃったら、残り半分頑張って走りきるぞ」って感じですかね?

YMG-Cですね。記録狙いしてはいますけど、後半の練習にもなるので。やってると何か発見があるし、出会ったことのないシチュエーションに出会ったりするんですよね。だから、最後まで走りきることに今でも全然価値があると思ってます。

Shino.5000時間やっててもこう言えるのがすごい……。Blueさんはどうですか?

Blueたしかにリセットしたいポイントはありますけど、でもRPGは絶対何か起きると思ってるんで、まあそれはそれかな、みたいなところはありますね。

Shino.そんなこと言える人になりたい。

いつかOnlineが走れなくなる日が来たら

Shino.あと、これも気になってたことなんですが、そう遠くない将来、WiiUのオンラインサービスも終了する日が来ると思うんですよね。そうしたらお2人はどうしますか?

YMG-Cその時のために、オフラインもできるようにしようと思ってます。僕はオンラインサービスが終了したときに1位であれば、SRC上で永久に1位が決定するので、それを死守しようと思ってます。

Shino.かっこよすぎる。

Blueそれに対抗できるの、私しか今いないんですけどね。

YMG-Cいないねえ。海外勢で走ってみたいって人がいるんですけど、海外とは仕様が違うんで、どういうタイムになるかまだ分からないですし。

Blue今使ってるスカウトも、アジアサーバーでしか使えないんですよ。なので、今のこのチャートって、アジアサーバーに接続できる人しか走れないっていう、半分日本人だけが走れるみたいなとこはあるんです。

Shino.じゃあもう、これは日本勢の知恵と情熱の蓄積の賜物なんですね。

Blueよく他のゲームで「海外版だとこのバグができないので日本版で走ります」みたいなのがあるじゃないですか、あれと同じことが起きるかもしれないです。

YMG-C日本版で走る海外勢が出てくる可能性はゼロではないですね。

Shino.聞けば聞くほど面白いですねこれ!

Blue自分は、オンラインがあるうちは頑張ってますけど、なくなったら他のゼノブレイドのタイトル走ってるかもしれないですね。

YMG-Cそのくらいには次のゼノブレイドクロスが出てますよ。

Shino.たしかに。

YMG-Cもう6年待ってるけどな……。

Questing for Gloryの見どころ紹介

Shino.YMG-CさんはQuesting for Gloryにこのカテゴリで参加されますが、特に見てほしいポイントや見どころはありますか?

YMG-C6章・8章・9章のオーバークロックギアっていうシステムを使ったバトルが爽快なので、そこは見どころかなあと思いますね。あとは特に見てほしいところと言えば、唯一壁抜けをするところがありまして。

Shino.RTAっぽいですね。

YMG-C本当は敵の基地の中に潜入して奥の方にいる中ボスと戦うんですけど、裏手からテクスチャの裏側へ入って、地面の下からイベントポイントに触れて中ボスと戦うっていう場所が11章にあります。ちなみにこのバグは、Any%に導入されるにはちょっとドラマがありまして。「100% Online」っていうカテゴリを走ってた時に、6時間くらい経過した時点でバグで詰みが発生したんですよ。

Shino.あっ、それRTAGamersで見ました

 

【ゼノブレイドクロス】27時間に及ぶ100% RTAの軌跡
はじめに 以前『【ゼノブレイドクロス】RTAのカテゴリー「Online」とは何か』という記事を書かせていただきました。 この記事の最後に「ゼノブレイドクロスRTA走者のやまぎしさんが100%RTAを行う予定です」と宣伝させていただきまし...

 

YMG-C手に入るべきアイテムがオーバーフローで手に入らなかったのにイベントが進行したせいで、鍵がない状態で鍵を開けろと言われたんですよね。

Shino.絶体絶命。

YMG-Cその状況で「いやこれもう再走かなあ」って話をしてたら、やり込み勢の方から「裏世界からドールで近づいていったら触れませんか」って言われて。「何それ」って思ったけど実際にやってみたらイベントが発生して、無事に進行できたんです。で、これAny%にもっていけるんじゃないか? って。

Shino.記事にもこう書いてあるんですよね。

 

※余談ですが、このバグ技を応用すると、any%の記録をさらに更新できる可能性があるそうです。

 

Blueその当時はそこで終わってるんですよ。

YMG-CそういうドラマがあってAny%に持ち込まれたテクニックなので、ぜひ見ていただきたいですね。

Shino.なるほど。Blueさんはイベント当日どうする予定ですか?

BlueJapanese Restreamで解説を担当します。でも、金策で武器を投げる時って、タイミングがそこまで重要じゃないんですよね。なので、その時にJapanese Restreamで話をしながらコントローラーを持って投げてみようかなってちょっと思ってます。

Shino.解説しながらサポーター、かっこいい!

今後に向けて

Shino.では最後に、今後に向けての目標などをお聞かせください。

YMG-COnlineはまだ更新できる余地があるので、引き続き定期ランをしながら更新できればなあと思ってますね。あと、今海外のサーバーで「100%カテゴリを一気に走るんじゃなくて、休憩時間を入れてもいいか」が議論されていているので、休憩を挟んでも良いとなったらまた100%も走りたいなと。あとは、Questing for Gloryが終わったらOfflineも勉強しようと思っています。

Blue一旦3時間5分を切るところかなと思います。それができたら次は3時間を切ろうかなというところで。YMG-Cさんが3時間5分くらいの記録を出した時とほぼ同じチャートになっていて、原理的には自分もいけるはずなので、数はこなせないですけど地道にやっていこうかなと思いますね。あとは、他のゼノブレイドもちょこちょこ触っていこうかなとも思ってます。

Shino.では、読者の皆様にメッセージなどあればどうぞ。

YMG-Cサポーターもそうなんですが、走者も募集してます。ゼノクロがお好きな方、ぜひ僕とBlueさんのランを見て走ってみたいなと思っていただけた方がいらっしゃったら、ぜひご連絡くださいませ。サーバーに参加して連絡してもらえたら、何でも教えますので。お声がけください。

まとめ

ゼノブレイドクロスのAny% Onlineは、普通のRTAとは異なる点が多く、とても興味深い話を聞くことができました。

今回お話を伺ったYMG-C氏は、日本時間の11月13日14時35分頃からQuesting for Gloryでこのカテゴリを披露します。Japanese RestreamではBlue氏が解説を担当されるので、あわせてご覧ください。

 

なお、本記事の執筆に際しては、YMG-C氏・Blue氏に多大なるご協力を賜りました。この場を借りてお礼申し上げます。

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