【マリオ64 RTA】新時代の始まり?! 最先端の情報を駆使したプレイヤーがついに世界記録を取った件

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まえがき

日本時間で2020年4月1日。Liam氏により120枚RTAの世界記録が更新された。

旧世界記録: 1時間38分54秒 by cheese氏
新世界記録: 1時間38分43秒 by Liam氏

Liam氏が世界記録を取った――これは、マリオ64RTAコミュニティ的には「新たな時代が始まった」という特別な意味を持つ。

こう言える理由は、2年以上世界記録を保持していたcheese氏を破ったから……ではなく、『理論値型』であるLiam氏が120枚RTAでトップに立ったからだ。

ピンと来ない方が多いと思うので、今回はこの意味を詳しく説明した後、その背景にある『最先端の情報』を語ることにしよう。

120枚RTAのトップが安定型から理論値型へ!

マリオ64には、様々なプレイスタイルのプレイヤーがいるが、おおよそ以下に分けることができる。

  • 可能な限り最速の動きを求める『理論値型』
  • 安定性が低下しないレベルで最速の動きを求める『バランス型』
  • 最速の動きよりも安定性(ミスをしないこと)を求める『安定型』

120枚RTA以外のメインカテゴリは現在『バランス型』や『理論値型』がトップを占めている。

しかし、120枚RTAに限っては、通すのに長い時間(1時間40分ほど)かかるという特徴上、ミスによるロスが差になりやすいために『安定型』が強いという風潮があった。

今までずっと1位だったcheese氏はまさに『安定型』で、自分なりの安定法を編み出すことで一次元高い安定性を獲得している。

その他、昔からトップ争いをしているpuncayshun氏も『安定型』といって良いだろう。

この風潮は2020年に入った段階でも続いていて、「120枚RTAだけは理論値型が1位になることは無いのでは」と思われていたのだが……。

2020年4月1日、『理論値型』のLiam氏によってついにこの風潮が破られ、新たな時代が始まったのである!

Liam氏はどんなプレイヤー?

120枚RTAはcheese氏の印象が強く、Liam氏を知らない方が多いと思うので、少し彼について話そう。

同氏は2017年夏頃からマリオ64RTAを始めた比較的新しいプレイヤーだ。

3DマリオのRTAをよく視聴する方であれば、彼の顔を一度は見たことがあるかもしれない。

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画像の左上がフェイスカメラ。いつも暗い部屋でプレイしているのが印象的である。
出典: [WORLD RECORD] Super Mario 64 120 Star Speedrun in 1:38:43

同氏はcheese氏らとは真逆の『理論値型』であり、1フレームでも速いタイムを求める印象が強い。

このことを裏付けるものとして、『Ultimate Sheet』と呼ばれるRTA練習用シートがある。

このシートは、100名以上のプレイヤーの各RTAルートのタイムを管理している巨大なシートだ。

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シートの左列(B, C列)には『人間ベストタイム』『人間ベストタイム保持者』が記載されているのだが、同氏の名前(赤枠)が頻繁に出てきていることが分かるだろう。

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要するに、同氏は各RTAルートごとに人間の限界に近いタイムまで詰めているのだ。

これが1フレームでも速いタイムを求める印象が強い所以となる。

同氏がここまでタイムを詰めることができている背景には、人並み外れた時間をマリオ64に費やしていることはもちろん、最先端の情報を積極的に取り入れるという姿勢にもあると考えている。

最先端の情報とは?

マリオ64のRTAは、細かい部分にまで目を向けると日々変化している。この変化の裏側にあるものこそが最先端の情報である。

最先端の情報とは、例えば以下のような新発見を指す。

  • コンマ数秒速くなる最適化が見つかる
  • マリオ64の内部仕様からルートが編み出される
  • ミスした時のタイムロスを軽減できるリカバリが見つかる など

こういった新発見はタイム短縮率が低いものが多いため、頻繁にルートをアップデートしたくない大半のプレイヤーは「誰かが導入するまでは保留しよう」と考えがちだ。

しかし、Liam氏はこの点が他プレイヤーと違い、『新発見が出たら積極的に試し、使えるならすぐさま取り入れる』という考えなのである。(と私は思っている)

では、どれぐらい積極的なのかというと――。

私は最先端の情報を作る側の人間なのだが、私がルート案などをアップした翌日には試しているぐらい積極的だ。

具体的に同氏がどのようなものを取り入れてきたのか気になると思うので、私が「おっ、使ってるじゃん!」と驚かされたものを3つ紹介しよう。

Liam氏が取り入れたものを3つ紹介!

(1) かいぞくのいりえ 大砲スター 三段ジャンプダイブルート

このスターでは、マリオを左から見るカメラにし、幅跳び2回+壁激突で大砲に入るのが一般的だ。

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これの改良版として発案されたのが『三段ジャンプダイブルート』である。

マリオを右から見るカメラにし、三段ジャンプダイブで大砲に入る案となっている。

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三段ジャンプダイブルートは、一般的なルートと比べ、以下3つのメリットがあるのだが……。

  • 理論上1フレーム速い
  • 安定して速いタイムが出る
  • 処理落ち(ゲームが重くなる現象)をゼロにできる可能性が高い

0.5秒も変わらない微妙な案なので、「わざわざ変えるほどでもないだろう」というのが大半のプレイヤーの意見だ。

しかしその一方で、Liam氏はこの案を取り入れ、現在もなお使っているのである。

(2) ちびでかアイランド ノコノコレーススター

2019年9月に、マリオ64の仕様からノコノコレースの最適ルートが発案された。

詳細は『【調査レポート】ちびでかアイランド ノコノコレース』に書いてあるので気になる方は読んでみてほしい。

発案されたルートは、例えば、『14.5~14.9秒の間でゴールすること』だったり、

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『ゴールした後はステージの端で待つこと』だったりと、覚えるのが面倒な点が多かった。

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それゆえ、発案当初は「大幅にタイムが変わるものではないし……」と避けられがちだったが、一方Liam氏は、発案された2日後には取り入れていたのである。

(3) ほのおのうみのクッパ 赤コインスター新ルート

新ルートとは、かごまわりの赤コインの回収順を変えることで動きを簡単にするルートだ。

2019年に挙がった案のうち、5本の指に入るほど衝撃的な案だったので、知っている方もいるかもしれない。

このステージでは、金網リフト(赤枠)が上下に動いており、どの周期に乗れるかで大きくタイムが変わる。

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新ルートは旧ルートと周期が同じなので、発案当初は「旧ルートと同じ周期なら変えなくて良いのでは」という意見が多かった。

しかし、新ルートのメリット(以下)に目をつけたDrogie氏が、発案された3時間後の70枚RTAレースでこのルートを披露。

  • 金網リフトまで1秒ほど速くたどり着くことができる
  • 処理落ちが減るため、リアルタイム的に速くなる
  • 入力が簡単になる

結果、多くのプレイヤーが取り入れ始め、最終的に主流ルートとなったのである。


(上記がDrogie氏の70枚RTAレースの切り抜き。初お披露目で緊張したのか失敗してしまったようだ。)

もちろんLiam氏も早期に取り入れたひとりであり、発案された後の2, 3日間は新ルートをずっと練習していた覚えがある。

 

この3つ以外にも数多くの新発見をすぐに試し、必要に応じて取り入れるのがLiam氏というプレイヤーだ。

最先端の情報を作る側の人間からすれば、Liam氏のような色々試してくれるプレイヤーは有り難い限りである。

詳しいからこそのデメリットもある!

最先端の情報を覚えることでマリオ64RTAに詳しくなっていくわけだが、実は詳しくなることのデメリットも存在する。

それは、詳しくなればなるほど記録更新が難しくなるというデメリットである。

例えば、みずびたシティーの豆リフトスターで、『ワープ時に壁を擦る(こする)ようにすると1フレーム速くなること』を知ったとしよう。

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(速度30%。左の動画が壁擦り、右の動画が壁押し。)

この場合、RTAの通し中に壁を擦ることを意識するようになると思う。

もしミスしてしまったら、「ああ、ミスって壁を押しちゃった」という感じで、分かっているのにできなかった悔しさを感じるだろう。

要は、上記例のような情報を数多く知っているプレイヤーほど、

  • 意識するポイントが多いせいでミスが増える
  • 分かっている最適化などをミスしてしまうと悔いが残り次のプレイングに影響する

という事象に苛(さいな)まれ、記録更新が難しくなるのだ。

膨大な時間をマリオ64に費やすLiam氏

Liam氏はこのデメリットに対し、人並み外れた時間を費やすことで対応している。

配信時間などを調べることができる『TwitchTracker』を確認したところ、毎日8時間程度はマリオ64RTA配信をしていることが分かった。

以下が1週間分のスクリーンショットだが、この週だけこの数字なのではなく、数ヵ月単位で見てもこんな感じになっていた。

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“hrs”が配信時間(hours)を示す。
出典: Liam – Streamer Overview & Stats · TwitchTracker

マリオ64RTAを知らない方でも、この数字を見れば、同氏が尋常ならざる時間をマリオ64に費やしていることは理解できるだろう。

ちなみに、同氏は配信外で練習してから配信を始めるスタイルなので、実際はもっと多くの時間を費やしていると思われる。

むすび

今回はLiam氏を取り上げたが、マリオ64RTAには彼以外にも面白いプレイヤーが多数いる。

次の機会があれば、他のマリオ64プレイヤーを取り上げてみても良いかもしれない。

余談になるが、現在、マリオ64RTAでは、

  • 16枚RTAの15分切り
  • 70枚RTAの47分切り
  • 120枚RTAの1時間38分40秒切り

などに賞金が懸けられている。

「誰かが賞金を手にする瞬間を見てみたい!」という方は、Twitchなどで賞金に近いプレイヤーの配信を視聴してみてはいかがだろうか。

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