2021年4月9日。スーパーマリオ64の120枚RTAにて、バトラ氏が世界記録を更新した。※本記録はすでに抜かれている。
本内容は以下の記事で紹介したので詳細はそちらを見てほしい。
ご存じの読者もいるかもしれないが、バトラ氏が世界記録を狙う裏側で、1年弱、私もそのお手伝い(アドバイス的なもの)をしていた。
マリオ64という競争率の高いRTAにて、社会人という“時間の制限”を持ちながら戦っていたバトラ氏――。一体どのようにして世界記録を出したのだろうか。
バトラ氏&私で考えたそのRTA上達のコツを本記事で紹介しよう。
ゲーム問わず、今現在RTAをしている上級者の方向けに書いたので、参考程度に読んでいただけると幸いだ。
※本記事は以前筆者が書いた『【雑記】RTAに技術コーチ的な存在は必要なのか?を論ずる』の第2段となる。
概要
効果を感じたコツは大きく5つある。
(1) 目標よりも1つ上のタイムを設定する
(2) ミスが続いた箇所は再検討する(常に行う)
(3) 自分が苦手な操作を極力減らす
(4) ルート選択時はリスクリターンを考える
(5) 途中途中にリセット基準を設ける
他ゲームのRTA走者の中には「自分もこれやってる!」という方もいるかもしれない。そういう場合はその項は読み飛ばしても良いと思う。
目標よりも1段階上のタイムを設定する
RTAの有名な練習法として、RTAの走り全体を区間に分けて練習する『区間分け練習』がある。
1つ目のコツは『区間分け練習を実践する際は目標より1段階上のタイムを設定する』というものだ。
その理由はタイムに余裕を持たせるためである。
『各区間の目標タイムの合計 = 本番の目標タイム』で設定した場合、本番で各区間の目標タイム通りに走らないと目標タイムを達成することができない。
一方で、『各区間の目標タイムの合計 = 本番の目標タイムより1段階上』で設定すると、
- 本番で想定通りに走れれば1段階上の目標タイムを狙えるし
- 多少ロスがあっても目標タイムを狙える
のである。
また、区間練習では、各区間の序盤はリセットで粘ることができる上、攻め気味な動きになる場合もあるので、そういう意味でも余裕を持ったタイム設定にしておきたいわけだ。
さて、ここでバトラ氏が設定した各区間の目標タイムを見てみよう。
当時の世界記録はcheese氏の1時間38分25秒。この記録を破るにあたり、バトラ氏は1時間37分45秒を設定した。
理由は、上記で話した通りで、「本番で1時間37分台を狙うようにすれば、多少ミスがあっても世界記録を出すことができるだろう」という考えがあったからだ。
各区間の目標タイムを乗り越えたバトラ氏は、本番にて、毎回世界記録ペースを出せるぐらいになっていたので、かなりの効果があったと感じている。
ミスが続いた箇所は再検討する(常に行う)
2つ目のコツは『通しで何度もミスしている箇所はその部分のパターン化を試み、パターン化しても安定しないのであれば1段階下のルートを検討する』というものだ。
加えて、『ミスした箇所のパターン化 or ルート再検討』を常に行うことで、より自分に合ったルートに近づき安定性が増すので、それもオススメしたい。
※パターン化: 『この模様を目印に〇〇という入力をする』みたいなこと。
また、このコツに並んで重要なことは目標タイムを設定することだ。
「他の上級者が〇〇ルートを使っているから自分も〇〇ルートを使おう」となる走者もいるかもしれないが、パターン化してもそのルートが安定しないことがある。
そういった時に、目標タイムを設定しておけば、『1段階下のルート』という選択肢も出てくるので、結果的に早く目標タイムを達成することができるのだ。
ひとつ例を紹介しよう。
バトラ氏がミスの多かった箇所として、『お堀の透明スイッチの赤コイン』がある。
同氏は、今までは上級者標準の『坂引っかけルート(以下の画像)』を選択していた。
しかし、通し中でのミス率が高く、リセットすることもよくあったため、1秒程度遅い『ダイブ復帰ルート(以下の画像)』へ変更。
変更のおかげで本ステージでのリセットが格段に減り、通し率が上がる結果となった。
今までよりも遅いルートへ変更することは心理的に勇気のいることだが、結局通し切らないと記録にならないので、思い切って変更してみるのもひとつの手だと考えている。
自分が苦手な操作を極力減らす
どのゲームのRTAにおいても、通し中にミスした箇所を後で見直している走者は多いと思う。しかし、ミスの共通点まで考えたことはあるだろうか。
3つ目のコツとしては『ミスの共通点は自分の苦手な操作だと考えられるので、代替案があるのであれば変更する』というものとなる。
その理由は、苦手な操作を減らすことがミス率の低下につながるためだ。
……とは言っても、あまりイメージがつかないと思うので、ひとつ例を紹介しよう。
当時、バトラ氏が通し中にミスしやすい箇所の共通点を分析してみた結果、『RボタンとC下ボタンの同時押しのミス』が挙がった。
この操作は、マリオ遠目視点(カメラ)へ変更する操作で、セットアップでしばしば使われる操作となっている。
※セットアップ: 『特定の視点を作ることで入力を簡単化する』みたいなこと。
この共通点を知った同氏は、本操作を使用するセットアップを極力使わないように変更。
例えば、チックタックロックの最初にて、以前はマリオ遠目視点のセットアップを使っていたが、
ミス率が地味に高く、ミスすると大幅ロスとなるため、セットアップを使わなくなった。
このような変更をいくつか行なった結果、該当箇所のミス率がガクっと減り、通せる率が上がったのである。
苦手な操作を知り、それを極力使わないようにする――これは結構効果を感じられたコツなので、皆にもオススメしたい。
ルート選択時はリスクリターンを考える
4つ目のコツは『ルートやアプローチを選択する際はリスク&リターンを分析し、自分に合ったルートを選ぶ』というものだ。
その理由は、深く考えずに新ルートなどを採用すると、そのせいでリセット率が上がる場合があるからである。
このコツは『【マリオ64】バトラ氏が悲願の世界記録更新! 執念とも言うべきその勝因を説く!』にて、バトラ氏の勝因のひとつとして紹介したのでここでは割愛する。
- リスク: 成功率やミスした時のロス(秒数)など
- リターン: タイム短縮量など
だと思ってくれれば良い。
あなたが何気なくやっている難しいルートや技――成功率はどれぐらいなのか、ミスしたら何秒ロスするのか、成功したら何秒速くなるのか。
これらを分析し、本当にやる価値があるのかを考えてみると、新たな知見を得ることができるのではないだろうか。
途中途中にリセット基準を設ける
5つ目のコツは『途中途中にリセット基準を設ける』というものだ。その理由はむやみにリセットしないようにするためである。
リセット基準とは、『〇〇の時点で〇分〇秒より速ければ続行、そうでなければリセット』というタイム基準のことである。
これはマリオ64RTAに限らず、他ゲームでも多くの走者がやっているコツだと思う。
1時間38分台を狙っていた当時のバトラ氏を例に紹介すると、以下のような基準があり、基本的にはこれを満たしていれば通すようにしていた。
タイミング | 目安タイム |
---|---|
あっちっちさばく終了 (スター34枚) | 30分00秒切り |
2階カギ扉タッチ時 (スター74枚) | 1時間03分30秒切り |
スノーマンズランド終了 (スター103枚) | 1時間24分30秒切り |
軽く経緯を振り返ると、バトラ氏は以前、ラップに+が付くとリセットを検討するような通し方をしていた。
それを見た私が「あっちっちさばく終了で30分を切っていれば1時間38分台は出せるから、30分を切ってるならリセットせずに通したらどうか」と提案。
提案通りに通すようにした結果、通し率が上がるだけでなく、「こんなミスだらけの走りでこのタイムなのか」という知見を得て自分のプレイへの自信にもつながっていた。
このように、効率だけでなく精神的にも良い影響があるようなので、特に長距離のRTAならオススメしたいコツとなっている。
むすび
バトラ氏と私で考えたRTA上達のコツを紹介したが、いかがだっただろうか。
ゲームタイトルやカテゴリによっては使えないコツがあるかもしれないが、多少は役に立つのではないかと思い書いてみた。
本記事などをきっかけに、RTAの練習法に関するノウハウが色々共有されることを願っている。
なお、今更ではあるが、本記事はアドベントカレンダーの20日目の記事となっている。
他にどのような記事が投稿されているのかを知りたい場合はアドベントカレンダーを参照してほしい。
スーパーマリオ64のRTAをやっています。
暇な時にマリオ64RTAの解説系動画をYouTubeに投稿しています → https://www.youtube.com/channel/UCDOLszv_4qtFycO6lIM5h2g
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