箱根路をQWOPが駆け抜ける!? QWOP箱根駅伝並走会

RTAイベント
箱根駅伝並走会

Flashのサービス終了を間近に控えた2020年12月13日、Flashお別れRTA会でのとある走者の発言に衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか。

「2021年の1月2日、新年にですね、箱根駅伝にQWOPで並走しようという企画がございます。」

QWOPといえば、かつて世界記録紹介の記事でも取り上げたとおり、1歩踏み出すだけでも相当な技術力と精神力を必要とされるゲームです。

今回は、このイベントの詳細はもちろん、「なぜこんな企画を立ち上げてしまったのか」など、気になることを主催者に質問してきましたので、その模様もあわせてご紹介します。

QWOPってどんなゲーム?

まずは、QWOPをご存じない方のために、簡単にこのゲームについて説明します。

 

QWOPは、ブラウザ上で遊べる陸上ゲームです。作者のBennett Foddy氏の公式Webサイトにアクセスすれば無料で遊べます。

Q,W,O,Pの4つのキーで陸上選手を操作して走らせるのが基本的なルールですが、とにかく操作が難しく、通常の人間であれば一歩進むことすら困難です。実際にやってみれば分かるので、ぜひ挑戦してみてください。

QWOPのスクリーンショット

筆者が実際に走らせた様子。この後すぐ後頭部を地面に打ち付けるし、そもそも前に進めていない。(画像はQWOPから引用)

 

理不尽なほど難易度の高いゲームですが、近年日本国内でRTA人気に火が付き、世界記録が更新されたほか、トップランナーによるリーグ戦が行われるなど、大きな盛り上がりを見せています

現在speedrun.comに掲載されているカテゴリは、「100 Meter」と「10 Meter」の2つ。前者は24人の走者が記録を登録している人気カテゴリで、上位6位までを日本人走者が占めています。

QWOPでタスキをつなぐ! イベント概要

10m走ることすら困難なQWOPで、箱根駅伝と並走しようというまさかの企画。このゲームに触れたことのある人なら、いかに常人離れしているかご理解いただけるのではないでしょうか

ここでは、そんなQWOPを極めた者たちによる「QWOP箱根駅伝並走会」の概要を紹介します。

イベントのルール

  • 箱根駅伝の往路と並走する。
  • 箱根駅伝のスタートと同時に走りはじめ、QWOPでリレーを行う。
  • 走る距離は、各走者の自己ベストや平均タイムなどから計算し、合計時間が箱根駅伝の10位と同程度になるよう調整する。

走る距離こそ箱根駅伝には及びませんが、2020年の箱根駅伝の10位の往路記録は5時間29分8秒(拓殖大学)。1人1時間以上QWOPで走り続けるという前代未聞の長距離走です。

走者紹介

箱根駅伝の往路と同様、5人の走者でタスキをつなぎます。箱根路を共に駆け抜ける5人のQWOP走者を紹介します。

  • くろうど氏
    100mと10mで二冠、世界最速のQWOPプレイヤー。100mの自己ベストは50秒834。
  • ミロク氏
    100mで世界3位の記録を持つ。100mの自己ベストは56秒530。
  • シャーフロイ氏
    第1回QWOPリーグの優勝者。100mの自己ベストは56秒550。
  • りゅういっち氏
    100mで世界2位の記録を持つ。100mの自己ベストは56秒290。
  • aMSa氏
    スマブラプロゲーマーでありながら、QWOPも世界9位。100mの自己ベストは1分9秒022。

区間エントリー

箱根駅伝のエントリー発表に合わせて、QWOPで並走を行う選手もエントリーが発表されました。
https://twitter.com/cld_el/status/1343874262826807298?s=20

気になるあれこれを主催者に聞いてみた

さて、イベントの概要は分かりましたが、それでも分からないことが多すぎやしませんでしょうか

かく言う筆者もその一人ですので、今回のイベントの主催者であるくろうど氏に、イベントに関して気になったあれやこれやを質問してみました。

 

――お聞きしたいことはいろいろあるのですが、一番気になったことをまず質問させてください。なぜ、こんなイベントを思いついたんですか?

 

くろうど氏:そんなに大した理由じゃないんですが、年末年始、暇かなあって。今年も正月家にいて、駅伝見ながらゆっくり過ごすのかなって想像したときに、「あ、駅伝か。やるか」みたいな。

最初は一人でフルマラソンでもしようかなと思ったんですが、「人いるから駅伝できるじゃん」って思いつきました。2020年はQWOPの走者が増えたので、数人集まって何か企画することが可能になったのが大きかったです。

https://twitter.com/cld_el/status/1316739993763672066?s=20

リーグ戦が行われるほど走者が増えているQWOP

 

――なるほど……。そんなくろうどさんの提案に対して、他の走者の方はどんな反応だったんですか?

 

くろうど氏:「本当にやるの? やるなら参加するよ」みたいな感じでした。今年は実家にも帰れなかったりで、正月に時間を取れそうな人が5人集まった感じですね。

ノリがいい皆さん(一例)

 

 

――皆さんノリがいいですね。今回の並走会では1人あたり1時間ほど走ると思うのですが、それほど走れるまでQWOPを極めたのには何かきっかけがあるんですか?

 

くろうど氏:極めようと思ったことは、おそらくないですね。「面白いことがやりたい」というのが出発点で、好奇心が続く限りはやってみようかなと思っていたのが、ここまで続いている感じです。

おじさんを宙返りさせフレームアウトさせて遊ぶくろうど氏

 

――「面白い」ですか……。具体的には、QWOPのどんなところが面白いですか?

 

くろうど氏:動き、ですかね。あの独特な……。最初は、「速く走ろう」ってことよりも、「人間みたいに走らせられないかな」ってところが出発点だったんですよ。

シュールな場面が好きなので、「QWOPのおじさんが人間みたいに走ってたら面白いな」ってところからのめり込んだ感じです。

 

――なるほど。では、練習を始めたきっかけでいうと、どうですか?

 

くろうど氏:本格的な練習は2019年の5月頃から始めたんですが、練習を始めたきっかけはRTA in Japan 2019とVTuberの八重沢なとりさんです。

RTA in Japan 2019: QWOP | YouTube

それまでQWOPはいわゆる「上手く操作できないクソゲー」として配信で扱われていたのですが、八重沢さんだけは違って、普通に走ってるんですよ。それを見て、「お、これは」って思いまして。

このゲーム、走れるまでに相当練習をしないといけないんですが、知名度の高いインフルエンサーがそこまでやり込んでいる姿を配信で見たとき、響くものがありました

【耐久】QWOPならフルマラソン余裕だって……!?【スポーツゲーム実況】八重沢なとり VTuber | YouTube

同じものをやりこんでいることがうれしくて、「俺ももう一度走るか」という気持ちになったのが、QWOPを走り始めたきっかけです。それがまさかここまで続くとは想像してなかったので、「ここまで来ちゃったか……」って感じです。

「ここまで来ちゃった」時のツイート

 

――八重沢さんのひたむきな姿がきっかけだったんですね。今やspeedrun.comでも二冠を達成しているくろうどさんですが、QWOPで記録を出すためにやってきたことは何ですか?

 

くろうど氏:このゲームの場合は、参考になる人がいなかったので、まずは現実の選手のフォームを見て「右足が地面につくとき、左足はこんな動きをしてる」って感じで研究しました

勉強熱心

それをゲームで再現できるできるように練習してましたね。

 

――QWOPをやるのに、「現実の陸上選手の動きを……」とか、普通考えないですよね。

 

くろうど氏:この発想は「人間みたいに走らせたい」って好奇心からきたものだったので、それが結果的にRTAに生きてきたのは運が良かったですね。

 

――このゲーム、意外と奥が深いですね。そういえば、くろうどさんは以前「QWOPフルマラソン」という企画をやってましたよね。

 

くろうど氏:この企画自体は八重沢さんがやっていたものなので、他人の企画に乗っかったというか、「舗装された道を俺も走る」って感じでしたね。「QWOPのリーダーボードの上にいる自分が走ったらどうなるんだろう」って好奇心もありました。

https://twitter.com/cld_el/status/1266515157150134272?s=20

くろうど氏の記録は9時間台。一方、先駆者の八重沢さんの配信は35時間にも及んだ。

それまで距離に着目して走ったことがなかったので、実際に走ってみて、長距離走がQWOPの実力を測るファクターになりうると思いましたし、長距離を競技にするのもありだと思いました。

 

――では、その時の経験が、今回の箱根駅伝並走会につながっているのでしょうか?

 

くろうど氏:確かにつながってますね。「QWOPは長距離でも面白い」という手ごたえはあります。

 

――そうだったんですね。では最後に、箱根駅伝並走会に向けて意気込みをお願いします。

 

くろうど氏:こんなこと言っていいのか分からないですけど、個人的にはあまり意気込んでなくて

 

――(笑)。

 

くろうど氏:「面白ければOK」というスタンスでいるので、10位のシード権獲得を競えればいいなと思います。

それぞれの平均速度と10位前後のタイムで走行距離を決めるので、個人個人が頑張れば上位争いができるし、調子が悪ければ繰り上げスタートになるかもしれないので、シード権を獲れるようにしたいです。

 

――本当の駅伝みたいですね。熱いレースを期待しています。ちなみに、今後走者が増えたら、2022年は往路と復路を両方走ったりもしますか?

 

くろうど氏:全然あります。2022年もやるとしたら、10人でやりたいです。その時は公募制にして、いろんな人に参加してもらいたいですね。

 

――2021年もQWOPのRTAが盛り上がって、1年後には10人で駅伝ができるといいですね。楽しみにしています。今日はありがとうございました。

箱根駅伝を応援しながらQWOP並走会を応援しよう!

2021年の箱根駅伝は、当日変更枠が拡大されたこともあり、各大学の駆け引きがより盛り上がるとの見方もあります。

しかし、戦略性という面で言えば、普通に走らせるだけでも難易度の高いQWOPも負けていないのではないのでしょうか。

 

そろそろ自分でも何を言っているか分からなくなってきましたが、とりあえず1月2日はテレビで箱根駅伝を見ながらQWOP箱根駅伝並走会を応援しましょう!

配信場所:https://www.youtube.com/channel/UCLxJfj_Dq8Ks89tUVR3z7ug


なお、この記事の作成にあたっては、情報提供やインタビューなど、くろうど氏に多大なるご協力をいただきました。この場にてお礼申し上げます。

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