レア社が誇る一連の名作アクションゲーム『スーパードンキーコングシリーズ』といえば、誰もがSFC版の3作品『スーパードンキーコング』『スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー』『スーパードンキーコング3 謎のクレミス島』を真っ先に連想するのではないでしょうか。本サイトで筆者が取り上げてきたRTAの話題も、今まではこれらの3作品に関する記事でした。
一方、これらの3作品に対しては、GB、GBC、GBAの3機種で全7作品ものリメイク版が発売されています。リメイク版はオリジナル版と比べると知名度が低く、RTAの競技人口も圧倒的に少ないと言わざるを得ません。しかしその中でも、ここ半年で急激に走者が増え、世界記録が活発に更新されている作品が1つ存在します。それが本記事で紹介する『スーパードンキーコング3(GBA)』です。
スーパードンキーコング3(GBA)とは
『スーパードンキーコング3(GBA)』とは、SFC版の『スーパードンキーコング3 謎のクレミス島』のリメイク作品であり、原作の発売から9年後にあたる2005年に発売されたゲームです。基本システムやステージ構成はSFC版と同じですが、新規ボス・ミニゲームや独特の操作感などの様々な要素が、原作とは別物と思わせるほど異色の雰囲気を醸し出しています。
特に、完全新エリア『パシフィカのたきつぼ』に追加された6つのステージはいずれも高い難易度を誇っており、SFC版ファンの心をくすぐること必至と言えるでしょう。夜の桟橋を突き進む『あらしのまえ』や水没した木の中を泳ぐ『すいちゅうたんけん』は、デビッド・ワイズが新たに書き下ろしたBGMと相まって、追加ステージの完成度の高さを感じさせます。
そんなGBA版のRTA界は今、SFC版に勝るとも劣らない異例の盛り上がりを見せています。以下の画像が示すように、本稿執筆現在の上位記録は、ここ最近達成されたものばかりです。この活気を生み出しているのは、SFC版には見られない、GBA版特有の目新しいルートの数々です。「GBA版」RTAの魅力
前述したように、GBA版では多くのステージで、原作にはないオリジナルの攻略方法が見られます。新たなルートの研究は2020年に入ってから非常に盛んであり、半年前に59分台だった世界記録がとうとう50分台に突入したほどです。この大幅更新をもたらしたテクニックの全てを紹介するにはとてもスペースが足りないので、ここでは3つの主要な技をピックアップします。
止まった時の中をゴリラが駆ける『ザ・ワールド』
まずは以下の動画をご覧ください。7-3『カミナリに気をつけろ』というステージ名に反して、カミナリが全く鳴らなくなります。それどころかあらゆる敵の動きが止まり、当たり判定すら無くなっていることが分かります。
この不思議な状態を作り出しているのは「チームアップを組みながら水に落ちる」という動作です。本来このゲームでは、チームアップを組んでいる間のみ敵のモーションが硬直する仕様となっています。しかし、足場の端で水に落下しながらチームアップを組もうとすると、正常にチームアップ動作が完了しないために、「永遠に敵が固まったままコングたちだけは自由に動ける」という夢のような状態が得られるのです。
この状態でボーナスに入ると更におかしな現象が発生して、「第1ボーナスから第2ボーナス出口まで一気にワープする」ことが可能となります(詳細は割愛します)。現行のAny%ルートでは、最低2回は時を止めることが必要となりますが、この技は1F技であり、約1/60秒という入力精度を要するので、タイムを左右する難所でもあります。
画面外をゴールまで一直線に泳ぐ『水中壁抜け』
次に紹介するのは、今年の発見の中でタイム短縮に最も大きく貢献した壁抜け技です。以下の動画では、3-5『はらペコ ニブラ』の序盤の壁からステージを抜け出して画面外を泳ぐことで、ニブラが腹を空かせる間もなく一気にゴール付近までショートカットしています。
このゲームでは、入れ替え動作が完了した瞬間に座標の修正処理が行われるのですが、特定の壁際で入れ替えを行うと、本来踏んではいけない座標を踏もうとすることになってしまいます。それに対する補正処理があらぬ方向に働くことで、壁の中をサルが泳ぐという奇妙な光景が実現します。
この壁抜けは、2020年2月に筆者が配信中たまたま発見したものでしたが、それ以降、ほとんどの水中ステージで壁抜けを用いた短縮ルートが次々に発見され、このゲームのRTAを大きく変えることとなりました。難易度は、ほぼ確実に成功する簡単なものから運要素の絡むシビアなものまで様々であり、合計のタイム短縮幅は4分近くにも及びます。
絶壁をチームアップでよじ登る『天国への階段』
最後に紹介するのは、チームアップを活用したアクロバティックな技です。次の動画では、6-5『ロープで大さわぎ』の右端にそり立つ壁を、空中チームアップを繰り返すことで強引に登っていきます。
「壁に投げて跳ね返ってきたディンキーに乗る」というアクションはSFC版にも存在しますが、GBA版ではこれを空中で行うことで「ディクシーの所に舞い戻ってきたディンキーを再び壁に投げつけて踏む」ことが可能です。
同様のアクションは、滝ステージの画面端でも行うことができるため、3-4『たきのぼり ふたたび』や5-3『ながれゆくタル』では、ステージのギミックを丸々無視してひたすらチームアップで滝を登ります。また、ディンキーを空中で踏む動作自体が極めて汎用的なRTAテクであり、これをボス『カオス』戦で応用すると、敵に1度も攻撃のターンを与えずに連続で踏んで倒しきることができます。
『V0oidathon 3』にてAny%のレースが行われます
本記事で紹介した『スーパードンキーコング3(GBA)』のRTAは、海外のオンラインイベント『V0oidathon 3』にて、以下の通りレース形式で披露される予定です。
日時:2020年5月19日(火)午前2:00~3:00(日本時間)
走者:Anankoz、dna423、emptysys、とんこつ(筆者)
解説:Doumeis
配信場所:https://www.twitch.tv/v0oid
ここ1週間で新たに発見された複数の大技(次回の記事で解説予定)も含めて、本記事で紹介しきれなかったGBA版の魅力をたっぷりとお伝えできればと思います。深夜帯かつ英語解説のみではありますが、GBA版のトップ4走者による、ハイレベルなレースに是非ご注目ください(本番のアーカイブは以下の動画です)。
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