【マリオ64】バトラ氏が悲願の世界記録更新! 執念とも言うべきその勝因を説く!

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2021年4月9日。

スーパーマリオ64(以下マリオ64)の120枚RTAにて、13,000名ほどの視聴者が見守る中、バトラ氏がついに世界記録を破った。

日本人が120枚RTAの単独世界記録を手にするのは、2015年3月のねろねろ氏の記録以来6年ぶりとなる。

旧世界記録: 1時間38分25秒 by cheese氏
新世界記録: 1時間38分21秒 by バトラ氏

巷では『日本人による単独世界記録』『バトラ氏が11年ぶりに手にした単独世界記録』といった点に注目が集まっているが、最も注目するべきは同氏が世界記録を手にできた勝因だ。

その勝因とは――徹底的にリスク&リターンを分析し、自分に合ったルートを選んだ点である。

この点は「世界記録を出したい!」という同氏の執念がひしひしと伝わってきた点であり、また、本記録を語る上で絶対に避けられない点なのだ。

今回は、直近の120枚RTAの白熱具合を軽く振り返った後、その勝因を詳しく見ていこう。

過去一番レベルで世界記録狙いが白熱!

世界記録争いが始まる! 最近120枚RTAが熱い件』で紹介したが、2021年に入ってから現在までの間で120枚RTAの世界記録狙いが白熱している。

現1時間38分台プレイヤーの自己ベストの更新履歴をまとめたのが以下の表だ。

日付タイムプレイヤー
1月29日1:38:25 (旧世界記録)cheese氏
1月30日1:38:54ほころび氏
2月27日1:38:51puncayshun氏
3月04日1:38:32puncayshun氏
3月05日1:38:48バトラ氏
3月21日1:38:39バトラ氏
4月05日1:38:28バトラ氏
4月09日1:38:21 (新世界記録)バトラ氏

cheese氏が1時間38分25秒の世界記録を樹立したのが2021年1月29日。そこから2ヶ月ほどで7度も更新があったことが分かる。

世界記録に近いタイムになればなるほど、そう簡単に自己ベストを更新することはできない。なのにも関わらず7度も更新があったわけなので、この事実だけでもどれだけ白熱しているのかが分かるだろう。

さらに、これら記録の他に、あと一歩で世界記録に届かなかった走りも数多くあるのだ。

多くのマリオ64視聴者に強い印象を与えた走りとして、以下の3つが挙げられる。

(1) puncayshun氏が1時間38分12秒ペースにてラストクッパを3度も投げミスしてしまった走り

(2) Simply氏が1時間38分06秒ペースにてレインボークルーズで転落死してしまった走り

(3) バトラ氏が前半パート終了まで(2階カギ扉タッチまで)で世界最速を出したものの、記録を出せなかった走り

2021年に入ってからは、このような複数プレイヤーによる熱い戦いが続いており、いつ・誰が世界記録を出してもおかしくない状況だった。

特にバトラ氏は4月中はほぼ毎日のように世界記録ペースで走っていたので、配信をよく覗いていた読者も多いのではないだろうか。

以上が120枚RTAの近況なのだが、これはあくまで表面的な情報である。

今回の新世界記録を真の意味で理解するには、バトラ氏の世界記録への執念とも言うべき”勝因”を知る必要があるのだ。

ということで、次のセクションにて、その勝因を見ていこう。

勝因は『徹底したリスク&リターンの分析』!

同氏が新世界記録を手にできた勝因――それは、徹底的にリスク&リターンを分析し、自分に合ったルートを選んだことにある。

これだけだと分かりにくいと思うので、抽象的な例を紹介しよう。

例えば、ルートAとルートBがあったとする。

ルートAは最速ルートだが、80%の成功率でミスすると5秒ロス。その一方で、ルートBはルートAよりも1秒遅いが、95%以上の成功率を誇る。

ルートタイム(リターン)安定性(リスク)
A[◎] 最速[△] 80%の成功率&ミスすると5秒ロス
B[◯] 1秒遅い[◯] 95%以上の成功率

この場合、読者の皆はどちらのルートを選択するだろうか。もし私なら以下の選択をするだろう。

【選択】ルートBを選択。
【理由】1秒短縮のために、精度の落ちるルートを使って5秒ロスというリスクを背負いたくない。ここよりも別の場所でリスクを取って大幅短縮を狙ったほうが良い。

上記はシンプルな例だが、バトラ氏はこのような分析を120枚全てのスターごとに行ない、また、必要に応じて何度も分析し直したのだ。

簡単な話に聞こえるかもしれないが、実はここまで徹底して分析するプレイヤーはなかなかいない。というのも、

「上位プレイヤーが使ってるから自分も同じルートを使おう」
「安定性は少し落ちるけど、かっこいいからこのルートを使おう」

などと、深く考えることなくルートを選ぶプレイヤーが多いからである。

やはり「世界記録を取りたい!」という強烈な思いが、同氏をここまで突き動かしたのだろう。

さて、今回はせっかくなので、『どのような分析をしてどのようなルートを選んだのか』の代表例を紹介しよう。

バトラ氏のルート選択3選

以下3つが、バトラ氏が世界記録を出すために行なったルート選択の代表例となる。

今後さらなる記録を狙う場合、再検討が行われる可能性が高いので、その点は留意してほしい。

(1) やみにとけるどうくつ BLJルート(ムシャーナ)

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BLJルートとは、『やみにとけるどうくつ ケムリめいろをぬけて』にて、上下エレベータでBLJ(ケツワープ)をするルートのことだ。ムシャーナとも呼ばれている。

バトラ氏の代名詞とも言えるBLJルートだが、実はリスク&リターンをしっかり考えて選択しているのだ。

ルートタイム(リターン)安定性(リスク)
BLJルート[◎] 最速[△] ミスすると大幅ロス
BLJ無しルート[△] 6秒程度遅い[◎] ミスしても微ロス&比較的安定する

同氏がBLJルートを採用する最大の理由は安定性を上げられる”とある方法”にあるだろう。

その方法とは、ゴロ岩地帯の緩やかな坂(以下の画像)でBLJを1回追加するという方法である。

この方法を用いることでマリオの速度が安定し、より確実にこの先の壁を抜けることができるのである。

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同氏がコツなども含めてリスク&リターンを分析していることがよく分かるのが、このルート選択なのではないだろうか。

 

(2) おほりのとうめいスイッチ ダイブ復帰ルート

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ダイブ復帰ルートとは、『おほりのとうめいスイッチ 赤コイン』にて、赤コイン4枚目付近をダイブ復帰で進むルートのことである。

多くの最上位プレイヤーは坂引っかけルートを使っているが、バトラ氏は一段階遅いダイブ復帰ルートを使っている。その理由がまさにリスク&リターンにある。

ルートタイム(リターン)安定性(リスク)
坂引っかけルート[◎] 最速[△] 坂引っかけミスで最大4.7秒ロス
ダイブ復帰ルート[◯] 1秒程度遅い ※アプローチによる[◎] 比較的安定する

最速の坂引っかけルートでは、以下のように赤コイン4枚目後に坂で引っかけなければならないのだが……

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これが非常に安定しにくく、通しの中で時々ミスすることがあった――同氏の悩みの種となっていたのだ。

改めてルートのリスク&リターンを分析した同氏は、比較的安定するダイブ復帰ルートでも1秒ロスで抑えられると気づき、4.7秒ロスを回避するためにそちらに変えたのである。

このルート選択から、『あくまで自分に合ったルートを選んでいる』というのがよく分かると思う。

 

(3) ちびでかアイランド100赤 11枚ルート

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11枚ルートとは、『ちびでかアイランド 100枚+赤コイン』にて、ちび島で11枚のコインを集めるルートのことである。

過去、バトラ氏は最上位プレイヤー標準の16枚ルートを使用していたが、16枚ルートは動きが難しく、通し中にミスして大幅ロスしてしまうことが多々あった。

そのことから、本スターのルートを再検討することにしたのだ。

2, 3日間、寝る間を惜しんで色々試し・検討していたので、それだけ選ぶのに苦労していたように感じられた。

ルートタイム(リターン)安定性(リスク)
16枚ルート[◎] 最速[△] 動きが難しい&乱数に依存する
11枚ルート[◯] 2秒程度遅い[◯] 比較的安定する&乱数にほぼ依存しない
100レース[◯] 実測値で
最速~2秒程度遅い
[◯] 動き自体は簡単&乱数次第でリセットレベルのロス

実際の検討では、16枚ルートと11枚ルートの他に、前世界記録保持者のcheese氏が採用している『100枚スター+ノコノコレース(100レース)』の組合せも検討。

検討当初は、比較的簡単だったことから100レースを採用する流れだったが、『乱数次第でリセットレベルのロス』という致命的なリスクに気づき、振り出しに戻る。

最終的に、ちびでかアイランドは致命的なミス(ロス)を避ける方針にし、2秒遅いのを受け入れて11枚ルートを選ぶに至った。

損失を回避したい人間の心理から、速いルートから遅いルートに変えるのは結構勇気がいることだ。そう考えると、このルート選択は『世界記録を出すためにどうしたら良いか』を徹底した同氏だからこそできた選択なのではないだろうか。

人類未踏の1時間37分台が出る可能性はある?

ここまで、バトラ氏が世界記録を出すことができた勝因を説いてきた。

誤解のないよう加えておくと、同氏はリスク&リターンの分析以外にも、

  • 細かい最適化を試す&導入する
  • 通し時にミスした部分の原因を調査&リカバリも考えておく
  • 120枚RTAを5区間に分けて練習する

など、人一倍工夫を凝らす姿勢が見られた。それらも今回の世界記録に繋がったと考えられる。

さて、ここまで来ると見えてくるのが1時間37分台だ。

昨年7月にバトラ氏が前半パートの世界最速を更新した時は、世界最速でようやく1時間37分台が出せるレベルだった。

前半最速後半最速合計
1時間02分51秒35分07秒1時間37分58秒

言い換えると、現実味は帯びてきたものの、「人間が1時間37分台を出せる」とまでは言い難い状態だったのである。

※上記内容は『120枚RTAにて、2階カギ扉タッチまでの世界最速が更新された件』で紹介している。

現在はというと、前半パートの世界最速が大幅に更新されて13秒もの余裕ができており、噛み合えば1時間37分台が出てもおかしくない状態となっている。

前半最速後半最速合計
1時間02分39秒35分07秒1時間37分46秒

特にバトラ氏は、1時間37分台を出すためにほぼ必須の『前半パート1時間02分台終了』を頻発しているので、もしかしたら今年中に1時間37分台が見れるなんてことも……あり得るかもしれない。

むすび

今回は11年ぶりに単独世界記録を手にしたバトラ氏に焦点を当て、話を進めてきた。

同氏の世界記録に対する執念が少しでも伝わったのなら、書いた甲斐があったと思う。

さて、まだ120枚RTAは白熱しており、初心者~上級者までの多くのプレイヤーが記録を狙っている状態だ。興味が湧いた方は、ぜひTwitchなどで各プレイヤーの記録狙いを視聴してみてほしい。

※引用のない画像は全て自分の動画から使用、アイキャッチ画像はバトラ氏にご許可をいただき使用した。

コメント

  1. SS より:

    1コメ( *・ω・)ノ

  2. 匿名 より:

    良記事

  3. 匿名 より:

    バトラとコーチの血と涙と執念の結晶ですね。
    気の遠くなる様なチャレンジを配信してたのを時折見てましたけど、念願の世界レコードが出て嬉しかったですし次は137を目指して欲しいものです。
    読みやすくて丁寧に分析された記事でした。寿司

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