【RTA in Japan 2019向け】今のマリオ64 16枚RTAはこうなっている!

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まえがき

毎年末お馴染みのオフラインRTAイベント『RTA in Japan』。もちろん今年末も開催予定で、大トリにはマリオ64の16枚RTAのレースが予定されている。(2019年12月31日 19時34分から開始予定)

2016年末に開催された時にも16枚RTAがあったので、人によっては「また16枚RTA?」となっていることだろう。そこで今回は、あの時と比べて今の16枚RTAがどう違うのか、また、個人的に思う注目ポイントを語ることにする。

なお、RTA in Japanの詳細は本記事では語らないので、公式サイトを参照してほしい。

-RTA in Japan- スーパーマリオ64

はじめに: 16枚RTAはもはやeスポーツレベル?

16枚RTAとは、30枚スター扉をBLJ(バグ技)で抜けることを制限した最速クリアRTAである。

30分以内で完走でき、手軽に始められることから、2008年頃のニコニコ生放送(当時は30分枠)を中心に爆発的な人気を博した。

16枚RTAの2016年末と現在を比較した数字が以下である。(speedrun.comより)

★世界記録(-20秒08)
2016年末: 15分24秒35 by Xiah氏
現在: 15分04秒27 by Dowsky氏

★15分30秒切り達成者数(+10名)
2016年末: 2名
現在: 12名

2016年末は「誰かが15分10秒台を出したら終わりだろう」という雰囲気だったが、いくつかルートが進化したことや、限界を目指すプレイヤー達によって、なんと15分切り手前まで来てしまった。また、2016年末は世界記録レベルが15分30秒切りだったのが、現在では15分30秒切りが上位勢の入り口になってしまったことも上記から分かると思う。

長年マリオ64RTAを見ている人間であれば「そんな更新余地なかったよね……?」とつい口に漏らしてしまうほどではないだろうか。

ここまで煮詰まった背景には、ルートの進化はもちろん、動きの精度がおかしいレベルにまで達したことにもある。具体的には、いかに正確に毎回同じ入力を再現できるかを競うレベルにまで達していて、これはもはや、eスポーツの競技に匹敵するレベルと言っても過言ではないと、私は思う。

このことについては、ルートの進化を述べた後に語ることにする。

2016年末から見たルートの進化

2016年末から見て、進化したルートの代表例を4つ紹介する。が、しかし、一発で通さなければならないRTA in Japanの本番では使わないかもしれない。

もしかっこよく決めてくれたら、ぜひ、プレイヤーに盛大な拍手を送ってほしい。

(1) 闇の世界のクッパ 赤コインスター
dwreds 4303 4796

16枚RTAにおいて一番最初に回収するスター。記録を更新するためにギリギリまで詰めないといけなくなったことや、(最初なので)リセットしやすいこともあって、最適化が進んだスターとなっている。

  • 2016年末: しあサイクル・シゲルサイクルと呼ばれるルートが一般的だった。
  • 現在: 月島サイクルと呼ばれるルートを使うようになった。

このステージには、ステージに入ってからの固定サイクルで動く卵焼きの足場があり、どのサイクルに乗れるかでタイムが変わる。

[速い] 月島サイクル < しあサイクル < シゲルサイクル [遅い]

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卵焼きの足場(赤枠)は左右に動く仕様となっている © 2019 circumark994

月島サイクルは、2011年頃、16枚RTAの上位プレイヤーだった月島はと氏が初めて成功させたことからそう呼ばれるようになった。

当時は、「こんなのワンスター(特定のスターを最速で回収する競技)でしか使えないよ」と言われるぐらいの高難易度ルートとして知られていたが、現上位プレイヤーが詰めに詰めた結果、RTAでこのルートを使うのが当たり前になってしまった。

16枚RTA世界記録を狙うのならほぼ必須のルートで、成功させれば、シゲルサイクルと比べて3~3.5秒程度速くなる。

(2) バッタンキングのとりで 鳥かごへストーンスター
WF Fall onto the Caged Island 10.96 x with dj strat

16枚RTAの序盤で回収するスター。本来はふーこ(鳥)を使って回収するスターだが、RTAではふーこを使わないのが一般的である。

  • 2016年末: 三段カゴ(人によっては反転カゴ)と呼ばれるテクニックを使うのが一般的だった。
  • 現在: 二段カゴと呼ばれるテクニックを使うプレイヤーが出始めた。

一部のプレイヤーのみ二段カゴを採用している。名前の通り、今まで三段ジャンプ・反転ジャンプでカゴを壁キックしていたところを、二段で壁キックしてスターを回収するテクニックである。

魅せプレイチックなかっこいいテクニックだが、見た目ほどタイム短縮できないので(約0.4秒差)、本番で使われるかは不明。

(3) あっちっち砂漠 きょだいピラミッドのないぶスター
SSL Inside the Ancient Pyramid 12.93 x

失敗したら死ぬこともあるスター。本来は4つの柱を登った後に回収するスターだが、RTAでは、ボムピラ(バグ技)を使って柱を無視して回収するのが一般的である。

現在の16枚RTAでは、2018年2月に見つかった『タマピラ(Tamapless)』と呼ばれるテクニックが使われている。テクニック名の由来は発見者のTama氏からで、今までのやり方より少し難易度が高くなるが、1~2秒程度速くなるために使われるようになった。

(4) 炎の海のクッパ コース単体
16用 ultimate FS

クッパステージ3つのうちの2番目のステージ。スターを回収する必要はないため、ステージに入ったら最速で土管を目指す。

  • 2016年末: ノンストップポールバグ + みみっちールート(動画右)が一般的だった。
  • 現在: ノンストップポールバグ + Ultimateルート(動画左上)を狙うようになった。

(1)と同様、このステージには、ステージに入ってからの固定サイクルで動く金網リフトがあり、RTAでは、最速サイクルに間に合わせた上でどれだけ速く進めるかがカギとなる。


金網の足場(赤枠)は上下に動く仕様となっている © 2019 circumark994

2018年9月。私がUltimateルートと題し、短距離カテゴリ向けのガン攻めルートをおふざけ半分でアップしたのだが、1秒でも詰めたかった上位プレイヤー達の目に留まって採用されることになった。

このルートを使えば1秒~1.5秒程度は速くなるが、非常に難易度が高いので、本番で決めたら大拍手が起こること間違いなし。

個人的に思う16枚RTAの注目ポイント

注目ポイント1: 操作精度がおかしい

2016年末と比べると上位プレイヤーの操作精度が格段に向上した。ここでの”操作精度向上”の意味は、毎回正確に同じ入力を再現するようになったという意味である。

“操作精度向上”が分かるスターのひとつに、バッタンキングのとりでの『たいほうでぶっこわせ!』というスターがある。

本来大砲で壁を壊してから回収するスターだが、RTAでは壁を壊さずに回収する。通称『ぶっこわ(さない)』と呼ばれるバグ技で、超有名なテクニックのひとつだ。

WF Blast Away the Wall 8.40 x

ぶっこわは、壁沿いに落下しスターの判定に触れることで成功させることができるのだが、スターの判定が超狭く、かなり厳密に入力しないと成功させることができない。

その難易度ゆえに、かつては実質運ゲーと言われていたし、多くのプレイヤーが「ぶっこわが決まらないから通したくない」と愚痴をこぼすぐらい、プレイヤーを苦しめてきた。

2014年10月にほぼ100%ぶっこわを成功できるセットアップが開発され、以降はどのカテゴリにおいてもセットアップが主流となった。しかし、セットアップは通常よりも2~4秒ほど遅いというデメリットがある。

ゆえに、現在の16枚RTAの記録狙いでは、セットアップを使わずに、『ぶっこわが決まる入力』を正確に再現することでスターを回収してしまうのである。

この話だけでも、16枚RTA上位プレイヤーが尋常ではない入力精度だということが分かるだろう。

このような精度にまで発展した主な理由は『練習ツール(チートコード等)が浸透・発展したこと』にあると考えられる。

練習ツールがなかった時代のマリオ64RTAは『少ない時間から安定させるコツを学んで練習し通す』というのがセオリーだった。練習ツール無しでの練習は非常に効率が悪いため、バカみたいに練習時間をかけても成果が出にくかったからだ。

2014年頃から練習ツールが普及し、ツールの使用が当たり前になった現在では、『安定させるコツを学んだ上で、練習ツールを使って効率よく練習しまくる(数をこなす)』というのがセオリーとなっている。なので現在は、練習量の半端ないプレイヤーが多く、精度が尋常じゃないのである。

注目ポイント2: 同じことをしているのになぜか差が出ている

マリオ64のRTAをカジュアルに見ている方の中には、「どうしてミスがなくて同じ動きをしているのに差が出ているの?」と疑問に思う方もいると思う。その答えは「素人目には分かりにくい最適化をしているから」なのだが、ひとつ例を紹介する。

例. 闇にとける洞窟 ドッシーのちていこスター

HMC Swimming Beast in the Cavern 15.00 x

このスターでは、箱の上で三段ジャンプする『箱三段』と呼ばれるテクニックを使う。しかし、箱三段をただ単に決めるだけのプレイヤーと、最適化を分かっているプレイヤーとでは、下手をしたら0.5秒以上の差が出ているのだ。

誰が見ても分かるパートは、箱三段の足場の動きである。


箱三段の足場(赤枠) © 2019 circumark994

足場を上から見たのが以下(黄色が[!]箱、赤丸が反転ジャンプの開始位置、赤線が箱三段のライン)。

ただ単に決めるだけのプレイヤーはくねくねしながら赤丸に向かうことが多い。理由は、N64コンの3Dスティックのくぼみとカメラの関係でそちらのほうがやりやすいからである。

しかし、最適化を分かっていてコンマ数秒でも詰めたいプレイヤーは、直線で赤丸に向かうことが多い。理由は言うまでもないと思うが、こちらのほうが無駄な歩きがないからだ。

上位プレイヤー達はこのような最適化をよく知っていて、『その走り内で攻めるか攻めないか(最適化するかどうか)』を瞬時に判断している。これが同じような動きしていてもタイム差が出る理由となる。

注目ポイント3: 高難易度テクニックをしっかり決める

当たり前だが、現在16枚RTAで使われているルートやテクニックはどれも高い難易度を誇る。

例えば、先の『2016年末から見たルートの進化』セクションで紹介したものは、常人であれば成功させるだけでも難しいものばかりだが、上位プレイヤーであれば難なく決めてしまうのだ。

今まで注目ポイントを2つ述べたが、RTA in Japanの場で一番注目するべきはこのポイントである。一発通しが要求される本番にて、全ての技を成功できるかは分からないが、走者はどちらも上位プレイヤーなので、十分期待して良いと思う。

むすび

今回のRTA in Japanで走るのは、現世界2位のアッキー氏と現世界6位のかんの氏

ふたりは『RTA Station』『RTA in Hokudai』(オフラインイベント)でレースしたことがあるため、今回が3度目のオフラインイベントでのレースとなる。どちらも15分20秒切りの実力のあるプレイヤーなので、レベルの高い&面白いレースを見せてくれるはずだ。

RTA Station スーパーマリオ64 16枚リーグ【修正版】 – YouTube
rta_hokudai – 【ゲスト枠】スーパーマリオ6416枚並走part4 RTAinHokudai – Twitch

speedrun.comの集計ページによると、ここ最近、マリオ64の総プレイヤー数がマリオオデッセイに一時的に抜かれていたようだが、この走者ふたりであれば「まだRTAの3Dアクションといえば(オデッセイじゃなくて)マリオ64なんだぞ」ということをしっかり伝えられるのではないだろうか。

なお、アッキー氏については、2019年5, 6月にアメリカで開催されたイベントにて16枚RTAで招待された経験があり、その内容をもか氏が記事にしているので、まだ読んでない方は一度読んでみることをオススメする。

『マリオ64』スピードラン大会の決勝戦が米eスポーツイベントで実施。「日本の高校生」と「世界記録保持者」が最速クリアで競い合う
2019年5月31日から6月2日にかけて、アメリカのウィスコンシン州を会場にeスポーツイベント『Smash'N'Splash 5』が開催された。

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