【世界記録紹介】スーパードンキーコング3 (GBA) Any%

2Dアクションゲーム

はじめに

今回は『スーパードンキーコング3 (GBA) Any%』の世界記録について紹介します。

世界記録:50分02秒

プレイヤー:とんこつ(筆者)

記録動画:https://youtu.be/J6o8CEHRn5I

スーパードンキーコング3 (GBA) とは

スーパードンキーコング3(GBA)』とは、SFC版の『スーパードンキーコング3 謎のクレミス島』のリメイク作品です。基本システムやステージ構成こそ原作と同じですが、ことRTAにおいては別作品と呼べるほど独特の面白さに溢れたゲームです。その魅力の一部については前回の記事で解説しておりますので、まだの方は是非ご一読ください:

【スーパードンキーコング3】時を止め壁を泳ぎ崖をよじ登る「GBA版」RTAの魅力

Any%RTAについて

『Any%』は、ラスボスの『バロンクルール』を撃破するまでのタイムを競うカテゴリです。最終ワールドの開放条件にはGBA版オリジナルワールド『パシフィカのたきつぼ』のクリアも含まれるため、SFC版より多い全8ワールドを攻略することになります。

基礎動作や終盤の乱数要素に加えて、前回記事で取り上げた『ザ・ワールド』『水中壁抜け』『天国への階段』といったGBA版特有のバグ技の数々がタイムを左右する本作のAny%ですが、そのルートは最近になって加速度的に進化しています。今回は特に、ここ2ヵ月で新たに発見され、世界記録の更新に大きく寄与した最新の技術を3つ、ピックアップしてご紹介します。

壁抜けは水中だけじゃない『ふわふわダクト天井抜け』

まずは以下の動画をご覧ください。4-5『ふわふわダクト』序盤でバズに被弾するとともに天井を抜けることで、一気に中間バレル付近までショートカットしています。

この技は被弾の直前に「右キーを5フレームまたは6フレームの間だけ入力する」ことで成功する2フレーム技です。約1/30秒という入力精度を必要とする15秒短縮技であることから、この技の発見以降、『ふわふわダクト』は序盤の大きなリセットポイントとなりました。

この天井抜けの原理は前回記事で紹介した『水中壁抜け』と全く同じです。敵に被弾するとパートナーが被弾位置まで駆け付けるのですが、駆け付け時に行われる座標修正処理が天井付近では正常に行われず、壁の内部側に座標を補正してしまうことを利用しています。

バグそのものは2015年には知られていましたが(元動画)、RTAにおける使い道が見つかっていない状況が続いていました。2020年5月、本作の解析に着手したLeftover氏によって現在のセットアップが確立されました。

巻き貝なしでガードをダブルキル『バーボススキップ』

次に紹介するのは『湖のばんにん ボス バーボス』戦において、第2形態を丸々カットする約15秒短縮技です。以下の動画では、第1形態のリラーチを上手く壁に反射させることで、第2形態に持ち越しています。

バーボス戦の第2形態では本来、こちらを追尾してくる巻貝を誘導してガードを1つずつ倒すのが正規の攻略方法です。2020年4月、第1形態のリラーチを持ち越すことでガード2体を一瞬で処理できるという事実をSarekoube氏が発見し、動画のルートが主流となりました。見た目は気持ちいい技ですが、反射角度の計算とスクロール調整どちらが狂っても簡単にミスになってしまう、中盤の大きな難関ポイントです。

たった1サブピクセルの穴を突く『コンベアロープZIP』

最後に紹介するのは、7-1『コンベアロープ』の終盤を高速スクロールで一気にカットする大技です。特定のロープの右端に到達すると一瞬画面がフリーズしたあと、ゴールまでひとっ飛びして約12秒の短縮になります

このゲームでは元々、コンベアロープの右端まで到達すると、コーナーブーストが発生して「同じ高さにある次のロープ」までワープする仕様となっています。普通にプレイしていてもこのような現象が発生しないのは、ロープ右端ギリギリに到達したときに座標を左側に戻す処理が走るためです。しかし、特定のサブピクセル(ゲーム内の座標の最小単位)を踏んでしまった場合には例外的にこの処理が行われず、ワープが発動します。これが高速スクロールの正体です。

なお、「同じ高さにある次のロープ」がステージ内に存在しない場合には、ゲームは完全にフリーズして進行不能となってしまいます。このZIPが発見されたのは、動画とは異なるロープで2020年5月に筆者が偶然このソフトロックを起こし、その再現をDna423氏が別のロープで試みたことがきっかけでした。

発見当初はこの技を人力で安定させられるかどうか疑問視されていましたが、その翌日にはLeftover氏が「ロープの左端に触れてサブピクセルを固定」することを利用したセットアップを開発しました。その結果、「ロープの真ん中付近でぴったり20フレームの間だけダッシュ状態を解除する」ことによって所望のサブピクセルを踏むことができるようになり、『コンベアロープ』は最終ワールドの大きな鬼門と化しました。

ちなみにZIPという名称は高速スクロール系の技を指す英単語由来であり、有名なファイル圧縮形式とは何の関係もありません。

現在の世界記録

本カテゴリにおける世界記録は、本稿執筆時点で、とんこつ(筆者)による50分02秒となっています。以下の画像は、2020年5月27日時点でのリーダーボードです。

次に、この上位タイムを『水中壁抜け』が発見された2020年2月23日のものと比較してみましょう。3ヶ月という短期間で劇的にタイムが短縮されていることが分かります。

以下に示す画像は、本カテゴリの世界記録の変遷をグラフにしたものです。2017年10月にAvanor_氏が初の1時間切りとなる59分35秒というタイムを記録して以来2年間、記録は長らく停滞していたことが見て取れます。

この状況を打破したのは、Anankoz氏をはじめとする、ヨーロッパの走者たちでした。SFC版のリーダーボードでも上位に名を連ねる彼らは、GBA版のルートにも数々の最適化を加え、4ヵ月で3分もの記録更新に成功しました。

そして2020年2月に筆者が本作のRTAに着手したことをきっかけに、本記事で紹介してきたような日本人による発見が相次ぎ、世界記録は遂に50分切り目前まで来ています。国内外のGBA版走者の研究の集大成とも言える節目の記録の達成に、是非ご期待ください。

『名古屋RTAオンラインフェス』にて披露されます

本記事で紹介した『スーパードンキーコング3 (GBA) Any%』のRTAは、『名古屋RTAオンラインフェス』にて、以下の通り披露される予定です。

日時:2020年5月30日 12:00~13:00

走者:とんこつ(筆者)

解説:Leftover2 氏

配信場所:https://www.twitch.tv/nagoyarta

SFC版原作をご存じの方もそうでない方も楽しめる、魅力的なルート満載のGBA版RTAにご注目いただければ幸いです(本番のアーカイブは以下の動画です)。

名古屋RTAオンラインフェス – スーパードンキーコング3 #758RTA

(キャプションの無いゲーム画像はすべて [WR] Donkey Kong Country 3 GBA Any% 50:02 より引用しました。)

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