【スーパードンキーコング】「RTA8分切り」の壁を壊した『ステージ離脱バグ』

2DACT

1994年に発売された名作アクションゲーム『スーパードンキーコング』。本作のRTAに立ちはだかってきた「8分切り」という大きな壁が破られたのは、史上ただ1度だけでした。2020年始に、ある1つのバグ技が発見されるまではーー。

今年に入り、本作のRTAでは『ステージ離脱バグ』を用いた記録更新が相次いでいます。本記事では、この技の原理や発見された経緯、RTAに与える影響について説明します。

『ステージ離脱バグ』とは?

まずは以下の動画をご覧ください。6-5『さいごのステップ』を、たったの14秒で終わらせます

ボーナスステージに入っただけのように見えますが、暗転が明けると何故か6面のマップに戻っており、ボス戦へと進めるようになっています。この現象の秘密は、前のステージで予め仕込んでおいた『シンクロバグ』にあります。

『シンクロバグ』とは、「2体のコングを同時に操作する」という、古くから知られているバグの1つです。仕込みは以下の2ステップから成ります。

  1. DKバレルを投げた直後にステージを退出します。すると内部では「ドンキーが救出された状態」として扱われます。
  2. 空中で被弾して落下します。ステップ1の効果により「次に操作するコング=ドンキー」として扱われることになります。

この状態でDKバレルを割ってドンキーを救出することで、「画面上にドンキーが2体も!?」となって混乱したゲームは、ドンキーとディディーを同時に操作できるようにしてしまいます。これが『シンクロバグ』であり、今回の『ステージ離脱バグ』の元凶です。

動画のボーナス入場シーンをよく見てみると、シンクロバグを発動しながら「ディディーはボーナスステージへ発射される一方、ドンキーは落下して残機が減っている」ことが分かります。こうなると正常のステージ退場処理は行われず、結果として6-5のステージ全体を丸々カットできることになります。

実はこのバグ自体は、2019年12月9日にSnakpak氏によって、他のステージで発見されていたものです。しかし、6-5以外のステージでこの技を使っても、次のステージへ進むための道が出現しないため、すぐには実用化されませんでした。2020年1月6日に6-5での応用がDKCyaLater氏によって発見されたことによって調査が進み、現在では、同じ技術で短縮できるステージは他にないだろうと考えられています(理由は複雑ですが、ステージ退場後に道を描く処理のパターンに原因があることが分かっています)。

Any%「8分切り」という壁の崩壊

ステージ離脱バグの影響を最も強く受けたカテゴリが、ゲームの最速クリアを目指す『Any%』です。同カテゴリでは、炎龍氏が史上初の8分切り(2019年4月24日、7:59.11)を達成して以降、その記録が破られる気配はありませんでした。

そんな本作のAny%が今回の発見によってどう変わったかは、以下の画像(執筆時点でのリーダーボード)を見ると一目瞭然です。8分切りというラインに多くの走者が到達できるようになったのは、ステージ離脱バグがもたらした約20秒のタイム短縮とルートの簡単化にあります。

本作のAny%では、以下の順番でステージをクリアしていきます。

1-1 → 6-2 → 6-36-46-5 → 6-ボス → キングクルール

まず、前述のシンクロバグを利用したワープによって6面へ飛びます。その後はラスボスである『キングクルール』戦まで順番通りにクリアするのですが、特に難しかったのが赤字の3ステージです。これらはいずれも1フレーム(約1/60秒)の入力精度を要求する技を含んでいましたが、ここ最近の発見で以下のように簡単になりました。

6-3『どくガストンネル』

1フレーム技に対するセットアップが改良され、入力猶予がとても長くなりました(2018年11月、Snakpak氏が発見)。

6-4『やみのスイッチトンネル』

1フレーム技を用いたルートが存在しましたが、シンクロバグを事前に仕込んだ状態で普通にクリアする方が早いことが分かりました(2020年1月、筆者&炎龍氏が発見)。

6-5『さいごのステップ』

ステージ中盤に1フレーム技が存在しましたが、ステージ離脱バグで比較的楽にカットできるようになりました(2020年1月、DKCyaLater氏が発見)。

以上のルート変更の結果、単に20秒早くなっただけでなく、Any%を完走するハードルが以前よりも遥かに低くなっています。

他のカテゴリでの使用はOK?

本作のRTAには、Any%の他にも5つの主要カテゴリがあります。今回の新技がこれらのカテゴリで使えるのかどうかについて、「明らかに使用OK」「明らかに使用NG」「要議論」の3つに分けて紹介します。

明らかに使用OK

Reverse Boss Order (RBO)』が該当します。「ボスを逆順に倒す」ことさえ守れば、何をしても良いルールだからです。同カテゴリは別記事にて先月紹介しましたが、その後のルート更新の結果、世界記録は筆者によって27:48まで更新されています。

明らかに使用NG

101%』『No Major Skips (NMS)』が該当します。実は、ステージ離脱バグを使っても当該ステージクリア分の達成度は加算されないため、完全クリアを目指す『101%』では使う意味がありません。また、ワープ等の利用が禁止されている『NMS』では、当然今回のバグを使ってはいけません。

要議論

All Stages』『Old Summon』が該当します。特に、全ステージクリアを目指す『All Stages』では、今回のバグ発見以降、その使用可否について、カテゴリ創設以来の激しい議論が繰り広げられました。詳しくは述べませんが、論点となったのは今回の技を使って「ステージをクリアしたと言えるかどうか」でした。

使用可否を巡る投票は1週間に渡って行われ、走者間での多数決の結果、『All Stages』ではステージ離脱バグの使用が認められることとなりました。一方、「旧ルートでのAny%」にあたる『Old Summon』は、当時から知られていた技術だけが許可される『Legacy Old Summon』と、今回の離脱バグを使用できる『Modern Old Summon』の2カテゴリに分離することとなりました。

『All Stages』は本作で最も競技人口の多い「花形」とも言える人気カテゴリですが、その歴史が今、大きく動こうとしています。昨年末時点での世界記録は31分50秒台でしたが、今回の発見によって今後どこまで世界記録が更新されるのか、目が離せません。

(キャプションの無いゲーム画像はすべて【新ルート解説】スーパードンキーコング ボス逆走RTA 27:48【世界記録】より引用しました)

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