なんと今回で3本目となりました「RTAを始めるために」シリーズ。
前回までの記事はこちらから→
前回までの関連記事2本でRTAのプロ2名による考え方を学ぶことができましたので、今回はさらに界隈を絞りRPG(さらにいうとドラゴンクエスト)のRTAの始めかたについて記事を書いていきたいと思・・・っていたのですが、RTA in Japanの事後アンケートでは、この作品が見たいという意見が多数集まっているとのこと。
「次回のRTA in Japanにこの作品を!」との声を多くいただいております。
RTA in Japanの採用タイトルは応募制になっており、声を掛けられたから選ぶというものではありません。
今年夏のものですが、こちらが大まかな応募ルールですので一度ご確認ください。 https://t.co/H70WLzn1Il #RTAinJapan— RTA in Japan (@rtainjapan) August 29, 2020
ということで自分でこの作品のRTAをやるしかねえ!という方がこのあと激増することも見越して、RPG以外についてもある程度紹介したいと思います。
前提として先人がすでにRTAを行っていて、ある程度コミュニティが形成されている作品について情報の取得方法を紹介していきたいと思います。
ちなみに私個人としてはこちらも拝見させてもらっています。本当に一からRTAを始める、取り組み方が知りたいという方向けにパート別にわかりやすく記載されていますのでぜひご覧ください。
0.RPG RTAの特徴
まずは、RPG RTAの特徴ですが、それはなにより戦略性と実プレイ時間の長さではないでしょうか。
それぞれ見ていきましょう。
戦略性
もちろん作品にもよりますが、RPG RTAにはラスボスあるいはそれに匹敵する強ボス(事実上のラスボスと揶揄されることもある)が設定されていて、それに向けてどのように準備をしながら最短で進め、鮮やかな戦略で倒していくかが面白いところだと思っています。
その戦略の芸術性は数多のRTAプレイヤーを魅了し、攻略順や戦略をまとめた文章・メモは「チャート」と表現されます。前述のとおり戦略が重要なRPG RTAをはじめるにあたっては、先人のチャートを見ることはとても重要です。今回の記事は主に、チャート・あるいはそれに類する攻略方法の探し方を紹介していくことになります。
実プレイ時間の長さ
本来ゆっくりキャラを育てながら物語を進めていくことが想定されているRPGは、ゲームの特性上RTAの総プレイ時間も長くなりがちです。
その分アクションと比べて魅せプレイ度は低めですが、一度RPGをプレイしたことがある人なら苦戦した思い出を華麗にぶち壊し、やりこみプレイが好きな人はその戦略の美しさに感動すら覚える。その「プレイ時間の長さゆえの深さ」がRPG RTAが長いにも関わらず人気を維持し続けている理由ではないでしょうか。
さて、RPG RTAはそのシステムにより数十分で終わるものから数十時間かかるものまで様々です。自分の生活環境、体力、尿意への強さを考慮して作品を選ぶことをお勧めします。
ひとつプレイ時間の長さに関連した、RPG RTA界隈の特徴的なツールとして「連射機」があります。それについても今回ちょこっとだけ触れていきたいと思います。
1.チャートを探すために
パターン1:文献を探す
結論:「作品名」「RTA」「チャート」で検索する
RPGのRTAは戦略のほかに、イベントの必須フラグやアイテムの回収場所などやるべきことが多く、完全に間違えずに進めることははじめのうちはとても難しいです。
そのためチャートには戦略まとめの意味のほかに、RTA中に確認するための備忘録も兼ねており、そのまま公開されている方も多いです。
公開の仕方は個人のブログ、アップローダーの利用等様々ですがとりあえず万能なのはGoogle検索で「作品名」「RTA」「チャート」と入力することです。公開されているならばだいたいヒットしてきます。しかしこれだけでは見つからない、あるいは最新のチャートがヒットしてこないパターンがあります。(特にドラクエRTAでは動画はアップされていても、最新のチャートはないというパターンも多いです)
図1.Google検索結果「DQ3 RTA チャート」の例
パターン2:動画を探す
結論:「作品名」「RTA」「動画」で検索する
昨今はRTAを字幕付きで解説している動画も多いです。とりあえず検索すれば出てくるということもしばしば。視覚的に動きを見ることができるので、やはり学べる点は大きいです。
デメリットとしては、練習中にじっくりと見返しながら少しずつ進めることに向いていないところでしょうか。前述の必須フラグが詳細に語られていないことも多いので、注意が必要です。
また、企画物のアーカイブスを探すことも有効です。
RTA in Japanで採用されたことがある作品ならば、走者の丁寧な解説付きで動画を見ることができます。(アーカイブスはこちらから)
ドラゴンクエストシリーズならば、Thedqrtachannelにて過去に開催された大会のアーカイブスが公開されていますので、ぜひRTAを始めたいという方はご覧ください。(アーカイブスはこちらから)
図2.Google検索結果「DQ3 RTA 動画」の例
チャートも動画はどちらも一長一短がありますので、できるならば両方をそろえたいところです。しかしながら、ネットの海から情報をそろえることは大変困難。というわけで、次はRTAをやっているコミュニティの探し方を紹介します。
2.オープンコミュニティに参加するために
結論:ニコニコ生放送でコミュニティ検索をしてみる、有志が作っているまとめから入る
さてRTAをやっている人にコンタクトを取るにはどうしたらいいのか。
個人のTwitterからコンタクトを取りにいくのも手ではありますが、オープンになっているところからコミュニティのようなものに参加できれば人見知りでも事務的に情報を取得することができますね。
今回はどの辺を見たらオープンな窓口を探せるかを紹介していきます。
RPG RTAのコミュニティの特殊性
他の解説ページを拝見すると、RTAのコミュニティはSpeedrun.comのリンクにDiscordサーバーページがあったりする場合、そこから参加できるというのが世界標準のようです。
ただそこで立ちはだかるのが、日本特有のRPG RTAコミュニティの特殊性です。
アクションRTAではSpeedrun.comにも日本人記録の記載も多く、カテゴリーわけが世界で認識されていることが多いと感じます。しかしながら、日本のRPG RTAはSpeedrun.comに掲載されている記録も少なく、もちろんDiscordのサーバーリンクもないことが多いです。
作品ごとのルール自体が日本のコミュニティの中で独自に発展・調整されてきたものも多く、Speesrun.comにのっているルールが日本で行われているメジャーカテゴリーとも限りません。
その点を踏まえながら日本でのオープンコミュニティの探し方を紹介します。
ニコニコ生放送のコミュニティを探す
RPG RTAの黎明期はチャートやレポートを中心とした戦略の美しさを競うことが重要視されていましたが、時代が進みRTAの一次人口爆発ともいえる現象に寄与したのは「ニコニコ生放送」での大会の開催がやはり大きいのではないでしょうか。
ニコニコ生放送には「コミュニティ」という読んでそのままの仕組みがあり、個人で配信用に持つことはもちろん、その界隈の代表者がコミュニティを作り企画ごとや情報の発信を行う「専用コミュニティ」が形作られています。
現在では、配信媒体は便利なTwitchやYouTube等にどんどん広がっていますが、コミュニティの形成と情報発信という点ではいまだに使いやすいということもあり、ニコニコ生放送コミュニティを探すことは有効であると思います。
ドラゴンクエストを例にあげましょう。ドラゴンクエストは作品ごとに「並走部」というコミュニティを持っています。これはドラゴンクエストシリーズのレース(並走)を行いたい人たちが集まったコミュニティであり、並走のミラー等が配信されています。並走のお誘いはDiscordで行われているのですが、このコミュニティのお知らせにDiscordの窓口が記載されています。これはドラゴンクエストに限らず共通であると思っていまして、Discordサーバーがない場合にもコミュニティ運営者の連絡先が書いてあることが多いです。(メジャーなRPGタイトルの総合コミュニティは下記の通り)
→元祖ドラゴンクエストシリーズRTAの元締めコミュニティ。各並走部へのリンクが記載されている。(いつもお世話になっております)
→ファイナルファンタジーシリーズのRTA大会が開催されている。各並走部・派生大会へのリンクが記載されている。
→サガシリーズRTA以外にも様々な企画が開催されている。各作品のコミュニティリンクも記載されている
→あらゆるゲームRTAの大会が開催されている。それに伴い広い界隈のRTAコミュリンクが記載されている。
まとめから探す
ちなみにRPG以外にもRTAサーバーは多数存在し、オープンに参加できるものも多数存在します。
オープンなRTAサーバーは、はるともさんがまとめられておりましたので今回紹介させていただきます。ここからやってみたいと思っているゲームがあれば、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
また、よねあきさんによりRTAの総合Discordサーバー,「ショッピングモール”RTA store”」が最近開設されました。
まとまったコミュニティがない作品もRTA走者が一同に会したサーバーであれば情報が集まるかもしれません!ぜひ参加を検討してみてはいかがでしょうか。
RTAの総合Discordサーバー,「ショッピングモール”RTA store”」を開設いたしました!
RTAの情報発信や,交流を目的としたサーバーになります.
参加のほどお待ちしております!https://t.co/xVNjfJvpYD— よねあき (@yoneaki1201) July 9, 2020
3.長時間作品をはじめるために
2つ目の特徴に上がっていたプレイ時間の長さ。自分がやりたいRTAが思ったより長そうな場合どうすればいいのか。その一例を紹介していきたいと思います。
パターン1:トイレタイムを探す
意地でもRTAは通しでクリアしたいあなた。
体力やリアルの都合がつくことを前提とした場合、重要なのは生理現象をいかにうまく処理するかです。長時間RTAではトイレにいかないことはオムツでも使わない限り困難であり、人間としての尊厳を失わないためにRTA中のトイレタイムはぜひとも探っておきたいところです。
こちらも先人によって調査されていることがあるため、前述の方法で走者にコンタクトを取ってみて聞いてみてがいかがでしょうか。
例:ドラゴンクエスト7「離席タイミング一覧」(ping値さん調査)
パターン2:プレイ時間を短くする
体力が持つか心配、リアル都合で時間がそんなに長時間とれないというあなた。
RPG RTAは基本的にRTA開拓期に定められた計測区間・ルールにより、メジャーカテゴリーが決定づけられるパターンが多いです。しかしながら、それにとらわれる必要もないと私は考えています。
ドラゴンクエストシリーズで例を挙げると、あまりにも長い7と8については「中断ありRTA」というルールが存在します。競技である以上どこでも中断していいわけではなく、確定で中断するポイントを設ける必要がありますが、長時間のプレイが厳しい場合は自分で区切るポイントを考え挑戦するのもよいでしょう。(参考:DQ7中断ありルール、DQ8中断ありルール)
日本に広まっているルールに従う必要もないので、Speedrun.com等で自分にちょうどいい時間のカテゴリーを探すのも手です。
余談:連射機の扱いについて
RPG RTA特有の文化に「連射機」の使用があります。
プレイヤーの方々でいろいろ意見はあるでしょうが、RTAPlay!様のページが歴史としてとてもわかりやすく書かれているので紹介します。(→「連射機のコミュニティ間の認識の差について」)
連射機の扱いがされてきた理由については下記の文に集約されるでしょう。
特にドラゴンクエストシリーズの中でもDQ7などはイベントの時間だけで何時間にも及びますが、連射機を許可しないとただボタンの連打が早いだけの人が戦術が優れている人よりタイムで勝ってしまうという戦略至上主義だった当時としては許容できないことが起こってしまう
連射機について、今ではこの他に長時間のプレイの補助という役割も担っていると思っていまして、長時間のRPG RTAでは使用が許可されているケースが多いように感じます。
しかしながら、アクション等コマンド精度をRTAスキルとする世界では連射機の使用がタブーであるのと同じように、海外でも連射機は多くのゲームでチートとして認識されているとのこと。(ルールに特記される形で、使用が許可になっていることもあります)
せっかくRTAをするならば記録をSpeedrun.comに載せたいという方は、コミュニティでの認識をしっかりと確認して連射機を使用しましょう。
ちなみに、レトロゲームの連射機はRPG RTA勢の増加に伴い市場に流通している数が激減し、高騰が進んでいます。(特にRPG RTAがよく行われるハードであるスーパーファミコン、プレイステーション2の連射機について、数年前から秋葉原のレトロゲーム専門店から連射機が消えていることを確認しています)連射機を入手するための個人的コツを紹介しますので、なんとしても連射機を使いたいという方はご参考ください。
①コンバーターを使って他機種のものを使用する
→新世代機器の連射機を、入手が難しいスーパーファミコン、プレイステーション等旧世代機器で使用できるようにしてくれる機械です。「PS SFC コンバーター」みたいなざっくりした調べ方でもヒットします。無線機能、USBのものを使用する際には「レシーバー」でヒットするパターンもあります。
②ジャンクコーナーの箱から漁る(ハードオフ、中古ゲーム屋等)
→私は出張先にあるハードオフでよくやっています。郊外ほど掘り出し物が多いイメージです。まれに、調べてもよくわからない連射機が出てくることがあるため要注意。購入検討の材料としては最大連射数が多いもの、長時間のプレイ補助の観点から連射ホールド機能がついているものがよいです。(連射機ごとの考察は後述)
③交渉して入手する(RPG RTAプレイヤーは連射機の予備を複数保持している可能性が高いため)
→連射機の丈夫さには当たり外れがあり、すぐ壊れてしまうこともしばしば。従って予備は貰えないときは貰えない。連射機を入手したらしっかりとメンテナンスをしましょう。
前述のとおり、ジャンク品で連射機を見つけたはいいものの、出所や連射数が不明であったりすることがあります。実は連射機もピンキリで、最大連射数が少ないと実践では使用が難しい機種も存在します。逆に連射が早すぎると受け付けないパターンもあるなど、ここで語ると連射機の深さは底が知れません。今回はいつも参考にさせていただいているサイトを紹介させていただきます。見つけた連射機が使えるものかどうかの判断材料としてご参考ください。(今回は特に現在入手が難しいスーパーファミコン、プレイステーション2の連射機についてのみ記載します)
ファミコン・スーパーファミコン対応連射機:SSSPによる連射コントローラの連射回数比較(ブイハチの徒然なる日常 2nd Season様)
プレイステーション2対応連射機:おすすめ連射パッド・コントローラ・アダプタ ドラクエ5 PS2版対応(右弐のホームページ様)
連射補助アイテム:オレコマンダー(HORI)
これが身体に影響を及ぼすとして購入にR制限がかかったあげく、販売終了してしまった伝説の連射補助アイテム
オレコマンダーだ pic.twitter.com/z7VfSLa4gs— 御茶麒麟 (@GiraffeTea) June 10, 2020
最後に
ここまでRPG RTAの特徴から、前準備に必要な情報を集めるための手段を並べてみました。
「RTAを始めるために」の記事をはじめに書かれたHiSTさんの言葉を借りますと
「とりあえずやってみるのが大事です!
ぜひ皆さんもRTA走者になってみてください!」
これに尽きると思います。
先日行われたRTA in Japanは今回も大いに盛り上がり、筆者も大変楽しく見させていただきました。
その事後アンケートでは、こういう作品が見たいという意見が多数集まっているとのこと。
「次回のRTA in Japanにこの作品を!」との声を多くいただいております。
RTA in Japanの採用タイトルは応募制になっており、声を掛けられたから選ぶというものではありません。
今年夏のものですが、こちらが大まかな応募ルールですので一度ご確認ください。 https://t.co/H70WLzn1Il #RTAinJapan— RTA in Japan (@rtainjapan) August 29, 2020
しかしながら、公式でも発表されているように声を掛けられたから選ぶというものではなく、見たいRTAは自分でやるしかないのです!
ということで、ぜひともこの記事を読んだあなたもRTAを始めてみてはいかが?
おもにドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーのRTA情報を発信していきます。
オフラインイベントにもよく顔を出しているので、記事執筆はお気軽に御声掛けください。
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