パズルゲームのRTAを見たことがある人なら、一度はこう思った経験があるのではないでしょうか。
大連鎖を組みながら、目にも止まらぬスピードでステージをクリアしていく実力者のプレイングは圧巻の一言で、その思考を分析するのは困難です。
ならば、聞いてみましょう。
この記事では、パズルゲームRTAのトッププレイヤーのプレイングを拝見し、プレイ中にどんなことを考えていたのか伺うことで、高度な思考の解明に迫ります。
(この記事は連載企画です。前回のXI JUMBO編、前々回のパズルボブル編もあわせてご覧ください。)
今回のゲームと走者説明
今回披露していただくのは、任天堂が1995年に発売したスーパーファミコン用のパズルゲーム「パネルでポン」(以下、「パネポン」と表記)です。
隣り合う2枚のパネルを入れ替えて、同じパネルを3つ以上並べて消すという単純なルールながら、連鎖や同時消しなどを駆使して戦うためには高い知識とテクニックが求められる、非常に奥深いゲームです。
RTA in Japan Winter 2021でも、このゲームのゲームキューブ版が披露されたため、記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな奥深いパネポンRTAに精力的に取り組むしゅが氏に、パネルでポンのRTA中に何を考えているのか伺います。
今回しゅが氏にお話を伺うのは、CPUとの対戦モードで全ての難易度をクリアする「VS COM EASY – S-HARD」というカテゴリです。
クリアするだけでも難しいS-HARDを美しい連鎖で打ち負かす技術力だけでなく、走者本人が「EASYが一番難しい」と評するEASYなど、同じゲームでありながら異なる戦略に注目です。
パネポンRTAの絶対的王者と呼んで差し支えないしゅが氏が、このRTAでどんな離れ業を魅せてくれるのかに期待しましょう。
そんなしゅが氏のプレイングを拝見し、お話を伺う役目は、筆者のShino.が担当します。
普段はパズルボブルを走っている。パネポンはS-HARDが未だにクリアできていない程度の腕前。毎日配信を続けようとして、2日目で挫折した経験がある。
プレイングを見てみよう
今回しゅが氏に解説いただくのは、2022年1月26日に樹立した「27分47秒」の記録動画です。この更新により、自身が所持していた世界記録を約12秒塗り替えました。
パネルでポンRTA VS COM EASY – S-HARD 27:47 | YouTube
プレイヤーには一体何が見えているのかと思うほどのスピーディーな連鎖と同時消しで、相手のCPUをものの十数秒で打ち負かしていく姿は、まさに王者の貫禄。
流れるようにパネルが消え、連鎖が鮮やかに続いていく様子は、同作品を遊んだことのない人にも衝撃を与えます。
では、パネルでポンのトッププレイヤーであるしゅが氏の思考に、早速迫っていきましょう。
(本稿で使用しているゲームのスクリーンショットは、特別に記載がないものは全て「パネルでポンRTA VS COM EASY – S-HARD 27:47」から引用しています。)
EASYはS-HARD
では、盤面が表示された瞬間はどこを見てますか?
盤面の形と配色を見てます。せり上がってくるパネルを込みで考えて、1連鎖目、2連鎖目のあたりをつける感じですね。
LボタンかRボタンを押すと、パネルをせり上げられる。せり上げるとその分ゲームオーバーが近くなるが、攻撃量を増やすために、上級者は初手でパネルをせり上げるのが基本。
まさか、せり上がってくるパネルの色が分かって……?
分かってるというより、「あったらいいな」って感じですね。あったらいいな、無かったら違うこと考えようかな、みたいな。
なるほど。超能力者じゃなくて安心しました。スタートまでのカウントダウンでそこまで考えてるんですね。
せり上げてから考えて始める時もあれば、スタートの段階で4連鎖くらいまで思いついてる時もあります。
パネルを消した時に、上に乗っているパネルが落ちてきて、続けて消えること。パネポンで相手に攻撃を送る手段の1つ。連鎖が続けば続くほど、相手に送れる攻撃は大きくなる。
では、この盤面だとどうでしょう?
緑と黄色の8個消しかなと思ったんですが、せり上げた中に緑か黄色があれば9個同時消しにできて、受けの範囲が広がると思ってました。
パネルを4つ以上同時に消すこと。パネポンで相手に攻撃を送る手段の1つ。同時に消したパネルの個数が多ければ多いほど、相手に送れる攻撃は大きくなる。
2連鎖目はその辺から、消した周りのパネルでどうにかしましょう、みたいな。
連鎖をその辺から拾ってこれるの、強いな?
でも、この形は連鎖が伸ばしにくいので、無理して伸ばさずに同時消しを送ります。適当な連鎖を組むより、8個同時消しや9個同時消しの方が強いので。
なるほど。では、EASYだと「連鎖を組もう」ってよりも、「同時消しでおじゃまパネルをどんどん送ろう」って考えの方が強いんでしょうか?
連鎖や同時消しをした際に相手に送られる攻撃。隣接したパネルを消すと、普通のパネルに変化する。
そうですね。EASYは足りてれば勝てることが多いので。あと、EASYはパネルの消える速度や落下速度がゆっくりなので、S-HARDと同じように連鎖を組んでも時間がかかるんです。
同じゲームなのに、難易度で戦略が変わるんですね。
でも、消える速度も落ちる速度も遅いのにそこそこ攻撃量が必要で、タイミングが悪いと普通に消されるので、EASYって本当に難しいんですよね。10秒台で勝とうって思ったらそんなに難しくないんですけど、記録を狙って10秒台前半で勝とうと思ったら途端に難しくなって。EASYはS-HARDなんですよ。
パワーワードだ。
大事なのは愛
でも、この「コンピューターにおじゃまパネルを消されるか消されないか」って、かなり運の要素が強くないですか……?
いや、私は運ゲーだとは思ってないですね。リセットの原因は大抵私なので。「運ゲーだ」っていう人のことを否定するわけではないですが、運ゲーだって言ってると自分が成長しないですし。
偉い。
例えば、S-HARDのステージ1は14秒以内で勝つことを目標としているのですが、11秒でおじゃまパネルを10段分送っていても、コンピューターの残り少ないパネルで消されてしまうこともあったりします。
ふむふむ。
はたから見たら「運がなかったな」って思うかもしれないですけど、1回の攻撃で倒しきるって方法を使ってるから消されてしまったわけで。
ほうほう。
最初に4個同時消しを1つだけ送って、コンピューターの動きを変えるやり方も存在するわけですよ。パネポンのコンピューターは、おじゃまパネルがない時には好き勝手消すんですが、ある時にはおじゃまパネルを消す動きに変わるので。パネポンは本当に選択肢が多いゲームなので、私がこのやり方をしてるから仕方ないよね、って。
聖人かな?
もちろん、タイムを究極に突き詰めようとしたら運ゲーにはなるんですけど。毎回違うランダム要素(初期配置からのCPUの行動)の中で、RTA的にベストな解答を、こちらも毎回違う考え方でぶつける。これが楽しいんですよね~。
ランダム要素すら楽しむ余裕、これが貫禄か……。
だから、配信でも「コンピューターのせいで駄目だった」みたいな書き方をされちゃうと、ちょっとムスッとします。
そんなに!?
コンピューターはコンピューターとしてちゃんとやってるんだから、悪いのは私です。
慈愛が深すぎる。
コンピューターって、本当にかわいいんですよ。「あのパネルを消しに行こう」って思ってパネルを動かしてたらうっかり消えちゃって、持っていこうと思ってたパネルがなくなって消せなくなっちゃったり。何をしたいのかが分かってくると、「ああ、そうしたいんだね、かわいいね」、「したかったけどできなかったんだね、かわいいね」って。
親かな?
実際赤ちゃんだと思ってます。赤ちゃんは泣くのが仕事なのと一緒で、コンピューターはパネルを消すのが仕事なんですよ。
親だったわ。
それに対して一々イライラしてられないですからね。実は、私にもパネポンのコンピューターにキレてた時期があったんですよ。「私はこんなに攻撃を送ってるのに消される」って。
こんな慈愛に満ちあふれたしゅがさんがコンピューターにキレてるところ、全く想像つかないんですが。
でも、攻撃を送った後に暇でコンピューターの盤面を見るようにしたら、「そのタイミングで送ったら消されるわな」っていうのが分かってきたんですよ。
なるほど。
パネポンRTAが上手くなる段階って、いくつかあると思うんです。
このゲーム、クリアするだけでも難しいし、攻撃を安定して送れるようになるまでも時間がかかるんですけど、それを乗り越えてコンピューターの盤面を見れるようになってくると、「あ、運ゲーの要素もあるけど私も悪いな」ってところがいっぱい出てくるんですよね。
なるほど。
だから私はコンピューターにキレないし、コンピューターに愛を持って接してあげることがパネポンRTAでは大事なんじゃないかと思っています。
そうですね。身に染みる言葉だ。
パネポンのことはあまり考えたくない
ちょっと話が脱線してしまいましたが、記録動画に戻りましょう。「このくらい送れば勝てる」という目安はどこで判断してますか?
コンピューターの盤面の高さ・配色・形・カーソル位置の4点です。カーソル位置というか、コンピューターが次に何をするかを見ています。たとえば、一番右の1列だけ8段あって他の列が低い時に、コンピューターがカーソルを右に動かしてたら、「あ、消されるから全然足りないな」みたいな。
その4点を、コンマ数秒の間に判断してるってことですよね?
多分してるんだと思います。あまり自覚がないんですけど、慣れというか経験というか。
しかも、配信で喋りながら考えてるんですよね……?
ですね。配信中は音楽を聞いたり動画を見たりしてます。ついでじゃないですけど、何かをしながらの方がやりやすいので。
脳みそいくつあります?
勉強でも音楽聞きながらの方が捗る人がいると思うんですけど、それと一緒です。
……なるほど。
だから、あんまりパネポンに集中したくないんですよね。集中すると考えすぎちゃうから。パネポンは考えることが山のようにあるから、必要なときに必要な物だけ考えられればOKって感じでやってます。無意識でやってる方が、自分でも上手くいってるなって思うんですよね。
強いなあ。
予測が当たった時と外れた時
さて、EASYのステージ4にやってきました。
この8個同時消しは、さっきも言った「せり上がってくるパネルの予想」です。
この紫と水色の配色は、8個同時消し1個手前なんですよ。せり上げた時に水色がその下のとこにあれば8個同時消しになるし、無かったら上から持ってくるしみたいな感じで組んでます。これも大体、今までの経験から「あるやろ」みたいな感じで。
なるほど。本当に未来予知みたいですね。
その形を考えてたので、迷いなくやってます。
ちなみに、せり上がった後のパネルまで込みで覚えてる配置もあります。
記憶力の勝利だ。
もちろん、ないパターンもあります。
せり上げたところに水色があったら、鍵括弧(「)を反転したような形で水色の5個同時消しができるんですよ。でも、せり上げたらなかったんですよね。だからここ、困ってます。
なるほど。つまりこれは1種のリカバリなんですね。
そうですね。だからここで赤と水色の6個同時消しを入れています。パネポンは、自由度が高くてリカバリがしやすいゲームなので。
コンマ数秒の差に経験が生きる
ちょっと飛んでステージ9です。
ここは大事なポイントですね。5連鎖目のところで、コンピューターの盤面を見てます。
コンピューターのカーソル位置と配色を見ると、右上で黄色と紫をめちゃくちゃ消しそうなんですよ。ヤバいと思って。ここは絶対黄色も紫も消すんで、両方消しきるまでは攻撃を送れないと思って。
なるほど。この黄色と紫が消される前に送っちゃったら、おじゃまパネルを消されちゃいますもんね。
ここで紫を構えてるんですが、送らなくていいという判断をして送っていません。
まだコンピューターが黄色が消しただけで紫は残っていますが、なぜ「送らない」という判断をしたんでしょうか?
連鎖が終わった後、実際におじゃまパネルが送られるまでにはラグがあるんですよ。そのラグを加味して、紫が消された後に攻撃が送られるという判断をしました。
ほんとだ、数フレームの差だけど間に合ってる!
これは、経験が生きたなって感じがします。今回は結構余裕がある方ですよ。もっとギリギリの時もあります。
これで余裕があるのか……。
さて、EASYの最終ステージ、ステージ10です。この辺りから「EASYの記録が出るかもしれない」と思っていましたか?
VS COM EASY – S-HARDのカテゴリでは、4つの難易度を全て走るので、特定の難易度のみを切り抜いてSpeedrun.comに申請できる。ちなみに、この走りでEASYの自己ベストを更新し、HARDでは世界記録を更新している。
思ってはいましたね。
で、実際に更新された、と。
ほんと嬉しかったです。成長を感じたので。
では、記録更新を決めたこのステージ10はいかがでしょう?
コンピューターがかわいかったですね。コンピューターはあんまりパネポンが上手くないので、左側を1個落としたら次は右側を落として、また左側を落として、っていうかわいい動きをするんですよ。
かわいいな。
だから、攻撃量も足りてる自信があったので、ここで止めましたね。で、一応追撃だけ用意して、という感じで。追撃でちょうどぴったりになることもあるので、追撃を用意しておくのは大事です。
パネルの気持ちになって動かそう
では、NORMALに入りましょう。まずはステージ3です。
問題のティアナ戦ですね。連鎖はすごい良かったんですけど、はいここ。緑を5個同時消しにしました。これアウトです。
1段あればいいかなと思って5個同時消しにしてるんですけど、本当は2段必要だったんですよ。緑と黄色の8個同時消しが割と簡単に組めたので、2段送れる8個同時消しが正解でした。
ここで5個同時消しを送った時点で、「あ、やらかしたわ」って思ったんですよ。これでちょうどですけど、コンピューターは赤を絶対落とすので1段足りないんです。
ああ、なるほど。
この時もし8個同時消しがすぐ送れてれば、勝てるくらいの余裕がある動きをしてくれてたんですよ。私の今までの経験上、あの感じだとコンピューターの動きが間に合わなくて多分勝ててたので、反省です。
上の方で連鎖になってるのも、これは運が悪いんじゃなくて消されてしまった私が悪いので。消されなければ、こんなことにはならないので。やらかしましたね。でも、タイマーはまだマイナスだったので、焦らずに。やらかした後はやらかしがちなので。
気持ちの立て直しは大事ですね。
NORMALはこのくらいいっぱい消す子もいるから、「次はちゃんとコンピューターの盤面見てしっかりやらないとな」っていうことですかね、改めて。悪いのは私なので怒りません。イライラも一切してないので。
優しいなあ。続いて、ステージ5はいかがでしょう?
ここは、最初に赤を落とそうとしてたんですけど、連鎖が組みづらそうだと思って変えています。
このまま赤を落として6個同時消しから始めると、2連鎖目以降が入れにくいんです。黄色の5個同時消しをアクティブ連鎖で入れることもできますが、2連鎖目からテクニックを使うのはあまりやりたくないので。
パネルが消えている間に別のパネルの位置を交換して、連鎖を継続させること。RTAでは、タイミングよく挟み込んだり落としたりというテクニック要素の大きいアクティブ連鎖も使われる。
できなくはないんですけど、RTAでは安定性を取りたいので。実際、10回やって9回成功するようなものもあるんですけど、失敗するリスクを考えたら、あくまでも「できますよ」くらいでやってます。
なるほど。ちなみに、このテクニックが必要なアクティブ連鎖ってどうやってるんですか? フレーム数で管理してるとかですかね?
いえ、パネポンではフレームのことは一切考えてないし知らないですね。パネルに対して、恋人だと思って優しく接してあげたらだいたい入ります。
……はあ。
気合いを入れて無理やり「ふんっ」てやろうとすると、入らないんですよ。いかに「入れられるパネルのことを考えてあげるか」が大事です。
なるほど?
パネルの気持ちになってAボタンを「えいっ」って押すと、「ぱっ」って入ってくれるので。
コンピューターだけじゃなくてパネルにも優しい人だ。
数分前の反省も糧にする
続けて、NORMALのステージ8です。ここでは、一度攻撃を送った後「ちゃんと送ろう」と言って、更に3段分攻撃を送ってます。
この判断は、何を基準にしましたか?
最初に送った攻撃は、4連鎖の3段と同時消しの3段で計6段です。これだけあれば足りると思ってましたが、コンピューターの盤面を見たら右端の赤が消されそうで怖いなって思って。
なので、ここで赤の5個同時消しを送りました。さらに、1段じゃ足りないなと判断して、紫と黄色の6個同時消しの2連鎖を送ります。これで追撃を3段送れたので、攻撃がぴったり足りました。
コンピューターの盤面を見て、「1段じゃ足りない、でも4段も要らない」って感覚で分かったんですよね。結果、ぴったりでした。
こんな短時間で、どうしてそこまで考えられるんですか……?
これはステージ3の反省が生かされてますね。やらかしたから。
数分前の反省を生かしていく姿勢、素晴らしいです。
では、続けてステージ9を見ていきましょう。この最後、コンピューターの盤面が1段せり上がるんですよね。この現象は何なんですか?
ああ、「にょき」ですね。
この「にょき」、何なのでしょうか?
私にも分かりません。
なんと。
パネポンRTAをやってる日本人のお友だちとも話したことがあるんですが、「しばらくせり上がりが止まった後に、せり上がりが自動暴発することがあります、何故か」って結論だったんですよ。
走者が2人集まっても謎のまま。
多分、コンピューターがせり上げの入力をしてるわけじゃなくて、システム的に自動で上がってるんですよ。コンピューターがせり上げたいと思うタイミングではないと思うので。不思議ですね。
不思議ですね。
でも、「あっ、これは来るな」って分かるタイミングもあるんですよ。だけど、「なんで?」って訊かれたら、「いやあなんで、なんでなんだろうなあ……」みたいな。
有識者の方、ご意見お待ちしております。
「分からないけど、私を助けてくれる現象なのでヨシ!」って思ってます。
2連鎖目のゆとりが心のゆとり
さて、続けてHARDです。HARDはこれ単体で世界記録を更新する走りでした。
早かったですね。2回コンピューターに消されたので、走ってる最中はそんなに早いと思ってなかったんですが、終わってからタイマーを見たら「HARD早っ!」って。びっくりでした。
では、そんなHARDのステージ1から見ていきましょう。
ここ、分かりますかね? 6個同時消しがあったのに消さずに赤を操作してたの。
たしかに! なんでわざわざ赤を持ってきたんですか?
2連鎖目に余裕を持ちたいからです。余裕がない状態で2連鎖目をやると、3連鎖目の余裕も4連鎖目の余裕もなくなっちゃうんで。
なるほど。
余裕がなくても連鎖自体はどうにか伸ばせるんですけど、余裕がなくなると、コンピューターの盤面を見る余裕がなくなっちゃうので。だから、1連鎖目から2連鎖目が大事なんですよね。いかに余裕を持てるかが重要なので、連鎖の下準備をしておきます。先に調味料を作っておくみたいな感じで。
合わせ調味料みたいな。
そう。それが大事ですね、私の中では。
では、続けてステージ6を見てみましょう。
これは「同時消しすぐ入れる入れない問題」ですね。今回はすぐ入れたんですけど、これ結構大事です。
パネポンでは、同時消しの攻撃がコンピューターに送られる前に違う同時消しをこちらがすると、その同時消しの処理が終わるまで送られないって仕様になってるんですよね。
パネポンRTAでよく見る、「同時消しのパネルが一気にドサドサ送られる」やつですね。
で、ここで同時消しを入れると、連鎖の分の攻撃だけが送られるんですよ。
ここで私が8個同時消ししてなかったら、同時消しの攻撃が一気に落ちてるんですけど、8個同時消しをしたので、4連鎖分のおじゃまパネルだけの時間が生まれちゃうんですよね。
ここからが大事なポイントで、同時消しの攻撃が足りてる場合は、新しい同時消しをしないで送られるのを待ちたいんですよ。追撃するなら、送られたのを確認してからってパターンが基本です。
なるほど、早く攻撃を送りたいですもんね。
でも、絶対足りないのが分かってる時は、すぐに次のを送った方が良いです。その方がロスが少ないし、勝ちやすいので。この判断の見極めは大事だと思っているので、私は結構気をつけてますね。ほんとにちょっとしたことなんですけど。
でも、そういう細かいところの積み重ねって大事ですよね。
大事ですね。すぐ入れてれば勝ってたみたいな場面もよくあるんで。今回なら、コンピューター側が4段分まで下げてくるだろうなって思ったので、すぐに入れたんですよね。
瞬時の判断、さすがです。
経験を積めば誰でもできます
さて、最後のS-HARDにやってきました。この辺りに来ると、そろそろ記録のことを意識し始めるんでしょうか。
いや、だいたいS-HARDでやらかして記録をなくしてきたので、ステージ11をマイナスで突破した時にやっと「記録あるかな」って思いました。マイナスがついてると、余計にやらかしがちなので。
たしかに。マイナスがついてるとドキドキしちゃう気持ち、めっちゃわかります。
守りに入ったが故、遅くなるみたいな。だから、普段通りを意識してやりましたね。
では、ステージ3を見ていきましょう。
ステージ3は良かったですね。ここ、4連鎖目で連鎖を止めます。
なんで止めたかの理由は分かりやすいです。コンピューターの盤面をみると、おじゃまパネルと接してるパネルのうち、消せるところが全くないんですよね。
ほんとだ。
この状態で、コンピューターの盤面の上3段分には、縦3つと一番上の横3つで消せるパネルがないんですよ。なので、ここで送ろうという判断をしました。
ここで送っちゃえば、おじゃまパネルを消されないだろうと。
そう。自信がありましたね。これは勝てるだろうという。こういう判断が大事になってきます。一瞬で見てぱっとやらないといけないので。
瞬時の判断能力は、日々の積み重ねの賜物なんだというのが伝わってきますね。
コンピューターの盤面見る時は情報が欲しいから見るので、何の情報が欲しいかが分かっていれば、そこだけ見ればいいのでだいぶ楽ですよ。
なるほど。
誰でもできます。
このタイプの「誰でもできます」は信じちゃいけないやつだって、私知ってます。
全部見せます! パネポンのプロのS-HARDコーデリア戦
では、遂に最終ステージ、S-HARDのコーデリア戦です。スタート前はどんな気持ちでしたか?
タイマーはマイナスでしたが、ステージ11でかなり消されたうえに、前回の記録もコーデリアが早かったので、「早く倒さないと記録更新は無理じゃん」って思ってました。
なるほど。では、プレイングでは何を考えてますか?
S-HARDのコーデリアは、私は詰ませることしか考えていません。
コンピューターの盤面に、おじゃまパネルを消すためのパネルが全くない状態にすること。
コーデリアはカーソルの移動速度が速いので、勝つためには詰ませるのを狙って連鎖を組むのが一番確実だと思っています。
なるほど。では、詰ませるための連鎖を見ていきましょう。
緑と紫の9個同時消しから、2連鎖目を赤の3個消しにして、3連鎖目に緑と黄色と水色の9個同時消し。
ここで緑と赤の6個同時消しを入れて、次に水色の5個同時消しにしてますね。
6連鎖目に紫を構えてたんですが、ここで連鎖が終わっちゃうんですよ。なので、左側で違う連鎖をして伸ばして。
そんな繋ぎ方が!?
連鎖が終わると攻撃が送られちゃうので、「あ、連鎖終わる、ヤバい」と思って左側で適当に消して。別のところから始めると繋がって連鎖が増えていくって仕様を使って、連鎖を違うところでどうにか伸ばしました。この状態で送っても消されるって思ってたので。
この大きさの連鎖を組みながら、そこまで考えられるのか……。
で、黄色を入れた後が難しいんですよ。めちゃくちゃ頑張れば黄色が連鎖にできるんですけど、私の操作速度だと無理ってのは分かってたので。
で、もう連鎖が伸ばせないってタイミングで、コーデリアが水色を消してくれるんです。
次に紫を消してくれる。ここで黄色の4が消えた瞬間に勝ち確です。
「詰み」が確定したわけですね。
黄色の4個同時消しの後に水色を消しているんですが、黄色の4個同時消しがせき止めてくれているので、おじゃまパネルと接してないところで消えているんです。
ありがとう黄色パネル! GGです!
だから、「タイミング良く連鎖を止めた」というよりは、「連鎖は止まっちゃったけど運が良くて勝てた」みたいな。相手の盤面を見てタイミングを見て送ってるんですけど、コーデリアもコンピューターなので毎回消しきってくれるわけもないので。だから、本当に運が良かったですね。
パズルゲーム上手いマン、みんなそう言うな?
今後の展望
今回の走りを振り返ってみていかがでしたか?
上手いところは上手いし、下手なところは下手だなと思いました。あと、成長は感じましたね。毎日やってると気付きにくいんですけど、今まで発想になかった形とか、コンピューターの盤面を見る余裕とか、連鎖量がどれくらい正しく把握できてるかとか、メンタル面とか。
では、今回の記録が出た要因は何だとお考えですか?
EASYの自己べ更新とHARDの世界記録です! もうこれしかない。
確かに、めちゃくちゃ速かったですもんね。
この2つのおかげでマイナスがついてると言っても過言ではないので。
では最後に、今後の目標などお聞かせいただけますか?
S-HARDの世界記録の更新です。具体的には、Speedrun.com基準で6分50秒は切りたいと思っています。今の記録に満足してないので。その記録を出したら、ゲームキューブ版のV-HARDの記録を更新したいです。あと、Twitchパートナーにもなりたいと思ってます。毎日配信しているので、ぜひ……!
今後もしゅがさんのパネポンRTAを楽しみにしてます!
まとめ
毎日パネポンRTA配信を続け、記録更新に向かってひたむきに取り組み続けるしゅが氏。RTA中の思考には、終始一貫した「パネポンへの愛」が見られました。
しゅが氏のパネポンRTAを支えているのは、連鎖を組むための思考力や、相手の盤面や動きを見極める力はもちろんのこと、根底に流れ続けるパネポンへの深い愛なのではないでしょうか。
本稿は、しゅが氏の多大なるご尽力により完成しました。心より感謝申し上げます。
パズルボブルRTAをやる人。みんなからはタイトーの回し者と呼ばれておるぞ。
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