見て楽しいやって楽しい、それがグリッチ
出典: IGN公式Youtubeチャンネルより
2022年9月、Devs React to Speedrunsの新作としてInscryptionがIGN公式Youtubeチャンネルで公開されました。このシリーズは、ゲーム開発者にそのゲームのRTAを見てもらいリアクションを取ってもらうという企画です。が、多くの場合で開発は自分達が把握していないグリッチを見せつけられるという中々な内容となっています。なんというか、申し訳ない気持ちになるんですが……
いつの間にかSpeedrun.com上のInscryptionのルールが変更され、現在は好きなバージョンで記録を申請出来る様になりました。これでアップデートで修正されたグリッチも使える様になり、相応の難易度になりますが記録も伸ばしやすくなったと言えるでしょう。
ただ記事を書いている段階でRTAに有用なグリッチのまとめが存在しないため、備忘録も兼ねてこれから筆者が知る限りのグリッチや小技を紹介していきます。もしRTAとしてこのゲームに興味が湧いてきたら、または一番最後のマグニフィカス戦をまるまるスキップ出来る方法を見つけた方はDiscordチャンネル「Inscryption Speedrunning」でお待ちしています。
ショートカットキー
Inscryptionの劇中では、ゲームがフロッピーディスクに収録されていたりコンソール画面が表示されたりと、PC98やMS-DOS時代の古いPCゲームを強く意識された演出があります。そのためか、その頃のPCゲームではありがちなキー配置が一切の説明なく有効だったりします。ESCキーがオプションである以外にも有用なショートカットキーがありますので、ぱっと覚えて素早く攻略しましょう。
Zキー
Zキーとは、決定ボタンです。つまり、マウスの左クリックと同等です。テキストを飛ばすときは、クリックだけでなくZキーも叩きます。
……実はSpeedrun.com上のルールでは、キーアサインを1箇所だけ変更することが出来ます。多くの場合で、Zキーをマウスホイールにアサインして会話をスキップしています。
スペースキー
スペースキーとは、アクションゲームではジャンプボタンですが……Inscryptionではスペースキーでベルを鳴らす事が出来ます。いちいちマウスカーソルをベルに合わせる必要が無いため、プレイ全般に影響する非常に重要なショートカットキーとなっています。
また、Part 2でのP03エリアのパズルもスペースキーで解法のチェックが行えるほか、インタラクトのショートカットキーとして使えます。
Tabキー
Tabキーとは、ESCキーと同じようにオプションボタンとして用いられます。Part 2ではデッキ編集のショートカットキーとして、それ以外の場面ではオプションを開くボタンとして使用可能です。
マウスホイール
マウスホイールは、奥に回すとWキーとして、手前に回すとSキーとして認識されます。理屈としてはキーボードを叩くより、マウスホイールを使用して移動したほうが圧倒的に速く移動出来ます。
Shift + A + S
タイトル画面でShiftキー・Aキー・Sキーを同時押しすると、チャプター選択画面に移ることができます。これは、ゲームをクリアしていなくても有効です。
Shift + K + M
タイトル画面でShiftキー・Kキー・Mキーを同時押しすると、追加コンテンツのKaycee’s modを有効化する事ができます。これは、ゲームをクリアしていなくても有効です。
Part 1
Any%解説記事では「Part 1では正攻法で攻略する」と書きましたが、Part 1にもグリッチはあります。記事を書いた2022年3月当時のSpeedrun.com上でのルールは「最新バージョンを使用する」事が義務付けられていた為に、次の二つは修正されて使用出来なかっただけなのです。
ターン終了後のカードプレイ
最新バージョンやコンソール版では修正されてしまいましたが、Ver1.07まではスペースキーでベルを鳴らした直後にマウスクリックで手札を選択するとそのままプレイすることが可能でした。まるで相手の目を盗むかの様に後出しが行えますが、サマの現場を押さえない方が悪いので何も問題ありません。
……と書きましたが、時間短縮として有効な場面は探鉱者戦ぐらいしかなく、また配られるカード次第では実行する意味が無い事も多々あります。しかし、出来ると出来ないには大きな違いがあり僅かな可能性でも時間短縮が狙えるなら、やはり出来るに越したことはありません。
Boulder Sacrifice
出典: 走者PhyoidのYoutubeチャンネルより
こちらもアップデートにより修正されましたが、出来ない事をやってしまうグリッチらしいテクニックです。
セットアップとして左から2番目にカードを置いてトドメを刺した後に次のクリックで盤面が片付けられる場面まで進め、クリックして回収される前の手札を選択して盤面のカードをクリック出来ると生贄コストを支払う場面を保持する事が出来ます。この状態で次のカードバトルでリス/Squirrelの後にカードを場に出そうとすると、本来なら選択出来ない左から2番目にある岩/Boulderが既に選択されている生贄として認識されるので、そのままコストとして支払う事が出来ます。
実は岩/Boulderをコストとして扱える事はさほど重要ではなく、左から2番目のスペースを空けられる点に意味があるのです。これによりAny%では子オオカミ/Wolf Cubに素早く攻撃されて負ける事が、最速でレシーを撃破するMoon%では通常より早い2ターンで勝利する事が可能です。時間にして凡そ10秒ほどの時間短縮が期待できるので、積極的に狙っていきたいグリッチです。
このグリッチを発見したPhyoidさんは、前述したDevs React to SpeedrunsのInscryption回でも記録を採用された、パート別のカテゴリ全てで世界一位の走者です。Boulder Sacrificeも後述するEvent Dupeも、暇な時間に適当な操作をする彼の手癖の悪さのおかげで見つかりました。何が役に立つかわからないものですね。
小ネタ
暗転中の移動
Inscryptionのいくつかの場面では、操作受け付けが始まる場面がゲームの進行より早い場合があり、これはその一例です。とくに難しい操作はなく、暗転中にただただWキーを連打しながらマウスホイールを奥に回すだけで再現可能です。後述するFinaleの場面でも同様に、暗転中の移動が可能です。
一足早いニューゲームの操作
これもニューゲームが有効化される前から操作を受け付けているので、映像が乱れる演出が入る前からニューゲームを選択する事が出来ます。
Part 2
Part 2からは細かいテクニックも要求されるため、マウス操作の精度が需要になってきます。
カードパック開封直後のオプション展開
スクライブ戦後のカードパック開封終了直後に……、具体的にはマウスクリックでウィンドウを閉じると同時にESCキーまたはTabキーを押すと、オプションを開くことが出来ます。後述するグリッチの前準備として非常に重要なテクニックなのですが、タイミングが難しく筆者の成功率も10回に1回程度です。今の所は安定した方法が見つかっていないので、さらなる研究が必要です。
P03との会話スキップ
レシーとの会話が終了後、そのまま移動せずに一度タイトル画面に戻りゲームを再開すると、本来存在するP03との会話イベントをスキップする事が出来ます。RTA的にはここで必ずタイトル画面に戻るためにオプションを開くので、前述したオプション展開のグリッチを行えばさらにカードパック一つ分だけ早く処理することが出来ます。
グリモラとの会話スキップ
墓石パズルの最後のピースを揃えるとほぼ同時にTabキーを押すと、本来は受け付けてくれないキャラ操作が行えるようになります。この状態でグリモラの前まで移動し、自動で始まるグリモラとの会話を確認次第スペースキーでさらに話しかけると会話そのものをスキップする事が出来ます。
マグニフィカス戦後のカードパック開封スキップ
このグリッチはゲームがリリースされて早々に見つかり、1年経った現在でも未だに修正されていません。2通りの手順があるので、チャートに合わせて採用してください。
タイトル画面に戻る方法
マグニフィカスとの会話が終了直後から一つ目のカードパックを開封するまでの間、ESCキーでオプション画面を開く事が出来ます。このままタイトル画面に戻りロードし直すとカードパックの開封をスキップする事が出来ます。
マグニフィカス戦後に動画パートを入れる方法
Any%解説記事でも取り上げましたが、マグニフィカス戦後に動画パートが始まるとその後のカードパック開封の演出中に移動することが出来ます。レシーの後にグリモラと戦い、その後のカードパック開封でオプション展開が出来れば動画パートを次以降のスクライブ戦に後回しにすることが出来ます。これでマグニフィカスと戦いグリッチを行うのが、現行の最速チャートとなっています。
小ネタ
ルークが驚いている間にデッキ構築
Part 2のマップに初めて移動した際に始まるルークが驚く場面ではTabキーが有効なので、本来は待機時間である彼が驚いている演出中にデッキ構築をする事が出来ます。
マウスドラッグによるオブジェクト操作
Part 2、オプション操作及びタイトル画面……所謂オリジナルのInscryptionでは、もろもろの操作をマウスドラッグでも行う事が出来ます。正確なマウス操作が必要になりますが、このちょっとした事で数秒ほど早くプレイする事が出来ます。
グリモラ戦後の会話後から動画パートが始まるまでの間は移動可能
ほんの少しだけですが、ビデオカメラのバッテリーが切れる演出が入るまでは移動することが出来ます。
Part 3
Part 3ではいよいよゲームが壊れます、Any%を行う上ではどれも重要なテクニックです。
Archivist戦でのファイルサイズ参照
アーカイビスト戦第一段階では、プレイヤーのPCに保存されているファイルの大きさでダメージを与えていきます。基本的にはギガバイトサイズのファイルで事足りますが、可能ならテラバイトサイズのファイルを用意するとカートバトルが格段に楽になります。紳士淑女のゲーマーならこの程度のファイル一つや二つは持ってるでしょうし、お手軽かつ非常に有効なテクニックではないでしょうか。
ファイルサイズ | ダメージ |
Byte | 0 |
KB | 1 |
MB | 2 |
GB | 4 |
TB | 8 |
Fight Skip
出典: 走者Grantr1eのYoutubeチャンネルより
Any%解説記事でも紹介しましたが、立ち上がって座ってもう一度立ち上がるまでにイベントマスをクリックするとイベントを保持することが出来ます。この状態で、カードバトル中にイベントを終了させるとカードバトルが終了します。
……と説明しましたが、これは正確ではありませんでした。カードバトル中に保持したイベントを終了させると、終了させたイベントの代わりにカードバトルを保持する事になります。Any%の現行チャートでは、保持したカードバトルをマップ移動中に操作して時間短縮を図っています。
Event Dupe
出典: 走者PhyoidのYoutubeチャンネルより
Dupeとはアイテムなどを不正に複製するオンラインゲーム上での行為を意味し、つまり本来は消費してしまうイベントマスを複製するグリッチです。立ち上がって座りイベントをクリック、直後に一度Wキーでデッキ参照画面に移りSキーでマップ移動画面に戻ることで、消えて無くなるはずのイベントマスが消費されず複製されます。マップ上の移動距離が短くなるだけでなく、操作を失敗してもやり直しが効くようになり、走者の精神的な余裕が確保された点でも非常に有用なグリッチと言えるでしょう。
墓標前へワープ
Part 3でのゲームロード時の再開は、最後にオートセーブが行われたマップ上から始まります。ウーバーボット戦後の勝利演出中で、実は墓標前が表示されている場面でオートセーブが入ります。これを逆手に取り、墓標が表示されるタイミングでタイトル画面に戻りロードし直すと現在地を墓標前にむりやり変更する事が出来ます。特にフシギ戦の後に行われるスクライブと暗躍するイベントは非常に時間がかかるのですが、このグリッチでまるまるスキップする事が出来ます。
小ネタ
アーカイビスト戦での、重要なファイルとは何か
アーカイビスト戦の第二段階でも、参照されるファイルでカードの強さが決まります。具体的には現在の年からファイルが作られた年の差が、カードのステータスになります。RTA的には、3年前のファイルがテキスト量が一番少なくなります。
またこの場面で画像ファイルを選ぶと、P03の顔に反映されます。他にも、Daniel Mullins Gameがリリースした過去のゲームの本体ファイルを選択すると、それぞれ固有のテキストが表示されます。
限定的なフォトグラファー戦前の動画パートスキップ
何らかの方法でアーカイビスト戦終了後の動画パートをスキップした場合、次に動画パートの演出が入る場面はフォトグラファーがいる小屋の前です。この時、本来クリック出来ない小屋に進入する矢印が何故かクリック出来るため、動画パートの演出中にフォトグラファー戦を始める事で動画パートをまるまるスキップする事が出来ます。ただ、その後のプレイ中はオプションを開く事が出来ないためにワープグリッチを使用する事が出来なくなります。
Finale
ストーリーも佳境、ここまでくると出来る事はほぼありません。我々InscryptionのRTAコミュニティは引き続き、マグニフィカス戦をスキップする方法を探していきます。
小ネタ
コマを一マス先に動かせる
グリモラのゲーム盤でコマが配置される前から入力が受け付けられているので、通常より1マスだけ移動が先に行えます。
暗転中の移動
マグニフィカスと邂逅する前の暗転中から、やはりPart 1の小ネタと同様に、Wキーとマウスホイールで前に前に移動することが出来ます。
※11/16 他の記事に合わせて表記揺れを修正、グリッチの説明を追記
© 2021-2022 Daniel Mullins Games.
© 2021-2022 Devolver Digital.
© 2022 IGN Entertainment.
© 2022 Ziff Davis, Inc.
Shoutcast時代から約20年ぐらい、配信を趣味にしている人。
最古参配信コミュニティの一つ、限界集落なんでも実況Vの民。
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