バグとグリッチはRTAの華
これまでの解説では真っ当にゲームを攻略したり、またはそうでなかったりしましたが、RTAでAny%と言えばやはりグリッチを用いた時間短縮が注目される場合が多いでしょう。
Inscryptionでもリリースから2ヶ月後の2021年12月に、大幅な時間短縮が図れるグリッチが見つかりました。当時はポケットモンスターBDSPのストレージ技が発見され世間的にも大きな注目を集めていましたが、我々InscryptionのRTAコミュニティでも似たようなストレージ技が見つかり内々で盛り上がっていました。いや、まぁ……ポケモンと比べたらそりゃあね……
Part 3攻略は、隅から隅までゲームを壊して
今回はP03が力を掌握したInscryptionをプレイする、所謂Part 3について解説していきます。これから新旧2つの攻略チャートを紹介していきますが、どちらの場合でもゲームが成り立たなくなる程度には壊していくので期待してください。
Fight Skipチャート
出典: Inscryption ゲーム画面より
現行のAny%を行う上で必須テクニックとなっているのが、Fight Skipと呼ばれるグリッチです。読んで字の通りPart 3でのカードバトルをスキップする強力な方法なのですが、これが時間のかかるウーバーボット戦でも有効なため、それまでのチャートと比べて7分程度の大幅な時間短縮に成功しました。
Fight Skipの仕組みと注意点
P03の指示を受けてバッテリーを回収後、プレイヤーはカードバトル中を除いて任意のタイミングで立ち上がることが出来ます。そこで特定のイベントマスをクリックしながら立ち上がったり座ったりを繰り返すと、イベントが解決しないままマップ移動に戻ることが出来ます。この状態でカードバトルに突入しイベントを解決すると、ゲーム側が終了フラグを誤認してカードバトルが突然終了します。
たったこれだけなのですが、まるで詰み将棋の様な繊細なチャート構築が不可欠です。マップ全体を把握して保持出来るイベントの場所と解決するバトルの場所を関連付けて、効率よく立ち回る事になります。また、イベント数よりバトル数の方が2個多いため最低でも2回は正しくカードバトルを解決する必要があります……が、それ以降のカードバトルではソフトロックが発生するので適時タイトル画面に戻らなければなりません。
他にも、全く同じイベントを2つ以上保持すると先にスタックさせたイベントが操作不可能になるなど制限も多く、Part 3全体を通して一回でも失敗するとリカバリー不可能なためハイリスクハイリターンなグリッチとなります。
実際の運用例
ここまでアレコレ書きましたが、動画を見ての通り通常より明らかに早く攻略する事が出来ます。なにより、ここにきてカードバトルを行わないテクニックだけのチャートが生まれました。カードゲームとは一体……
孤独なウィズボットチャート
孤独なウィズボット/Lonely Wizbot
×2
2/1まとわりつき/Clinger
空きスペースに自分の生物が置かれると、この印を持つカードは可能な限りその生物へ向かって移動する。出典: Inscryption Wikiより
Fight Skipが見つかるまでは、孤独なウィズボット/Lonely Wizbotをとにかく強化する方法に注目が集まっていました。Part 3で用意されているカードとしては非常にコストパフォーマンスが高く使いやすいので、これをフィニッシャーに育て上げ1ターンキルを狙っていくのがチャートの目標です。
それまで投稿されていた記録も鑑みて、こちらのチャートを使う場合のカテゴリはAny% (NFS)となります。NFSとはNo Fight Skipの略で、Fight Skipを使用しないという意味です。
セットアップ
孤独なウィズボット/Lonely Wizbotはコンテナパズルを解く事で入手出来ますが、なにより大事なのはカードに付与する強化です。具体的には以下の順で攻略していきます。
- 印付与マスで、孤独なウィズボット/Lonely Wizbotに二叉攻撃/Bifurcated Strikeを付与する
- 悪しき死の世界で、孤独なウィズボット/Lonely Wizbotにオーバークロック/Overclockedを付与する
- ピカピカジェムランドで、空き容器/Empty Vesselを全てサファイアの容器/Sapphire Vesselに変更する
- ピカピカジェムランドで、孤独なウィズボット/Lonely Wizbotをジェム化する
- カード除去マスで、デッキサイズを3枚まで減らす
- ウーバーボット戦後、サファイアの容器/Sapphire Vesselにバッテリー運搬/Battery Bearerを付与する
まとめると、「コスト1・3/1・二叉攻撃/Bifurcated Strike」のカードを初手で引きます。
一番最初の手順である印付与マスでは、提案される3つの印から1つを選びカードに付与する事が出来ます。問題なのが、印の候補が多すぎて二叉攻撃/Bifurcated Strikeがなかなか選ばれない事です。候補に無かった場合はそのままオプションからタイトル画面に戻り再ロード、印付与マスからマップを移動する事で印候補が再抽選されます。万が一に備えて、一度立ち上がって座りオートセーブを挟む事で、次の再抽選の手間を若干減らすことが出来ます。
実際の運用例
- サファイアの容器/Sapphire Vesselを展開して、バッテリー運搬/Battery Bearerを発動させる
- サファイアの効果でコストが1になった孤独なウィズボット/Lonely Wizbotを展開、攻撃する
デッキが完成したならば、この手順で1ターンキルを行います。カード同士のシナジーも強力ですが、孤独なウィズボット/Lonely Wizbotを引くためだけに3枚までに削られたデッキサイズがゲームを破壊しています。様々なカードゲームにおいて、デッキサイズに下限が設けられている事、サーチ系のカードが制限や禁止の対象になる理由、このチャートを試せば実体験として理解出来るのではないでしょうか。
使える物は何でも使う、そういう人達の集まり
メタルギアソリッドで発見された「The Boba Skip」は、RTAコミュニティとは関係ないプレイヤーが偶然体験したバグを聞きつけてRTAの有識者が集まり、わずか3時間ほどでグリッチとして実用化されました。この逸話を耳にした人も多いかと思いますが、RTA走者は検証と研究を重ねた上で一番時間が早い方法を選んでいるだけに過ぎません。些細なバグが確認されたとして……それで1秒でも早くなるなら再現するだけの価値がありますし、そうでないなら他の方法を探し出すまでです。
Inscryptionにも細かいテクニックやまだ再現性の低いグリッチがいくつか存在し、そして記事執筆中にも記録が数秒早くなる有用なグリッチが実用化されました。ゲーム愛が一般の人と比べて若干重いかもしれませんが、好きでゲームを壊しているわけではないのです。もちろん正規の攻略法が一番早ければグリッチなんてやりません、本当です信じて下さいなんでもしますから。
Inscryptionはリリースされてまだ半年程度、当然RTA用チャートもまだまだ発展段階です。この連載記事で興味が出てきたのなら、Discordチャンネル「Inscryption Speedrunning」で議論が行われているので是非参加してみてください。
© 2021 Daniel Mullins Games.
© 2021 Devolver Digital.
Shoutcast時代から約20年ぐらい、配信を趣味にしている人。
最古参配信コミュニティの一つ、限界集落なんでも実況Vの民。
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