レア社が誇る一連の名作アクションゲーム『スーパードンキーコングシリーズ』。中でもSFC版の3作品『スーパードンキーコング』『スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー』『スーパードンキーコング3 謎のクレミス島』は、知名度や売上だけでなく、RTAの競技人口という点においてもシリーズ内では飛び抜けています。
では、GB、GBC、GBAの3機種で発売されている全7作品のリメイク版のRTAは開拓されていないのかというと、全くそんなことはありません。本記事では、各リメイク作品の特色の簡単なまとめに加えて、筆者が個人的に熱いと思う3作品(☆印)をピックアップして世界記録やRTAテクについて紹介します。
『スーパードンキーコング』のリメイク
『スーパードンキーコング』(1994年発売)のリメイクは、以下の3作品です:
- スーパードンキーコングGB(1995年発売、GB)
- ドンキーコング2001(2001年発売、GBC)
- スーパードンキーコング(2003年発売、GBA)
『スーパードンキーコングGB』☆
『スーパードンキーコングGB』は、1995年にGBで発売された、原作をベースに新たなギミックやBGMがふんだんに盛り込まれた外伝的作品です。原作のRTAでは、圧倒的なスピードが武器のディディーばかり用いられますが、GB版では移動速度のキャラ差がないため、多くの敵を1発で踏んで倒せるドンキーをメインで使用するのが最大の特徴です。
現在のAny%の世界記録は、Cabbage氏が2020年5月に達成した30分23秒となっています。これは他のリメイク版に共通して言えるのですが、リメイク版には原作ほど派手なバグ技が存在しないので、基本的には見た目通り最速なルートを忠実に走りきれるかどうかが最もタイムを左右します。そんなGB版のRTAにおいて、1番の見せ所と言えるのがラスボスの『キングクルール』戦です。
(動画は [WR]スーパードンキーコングGB Any% RTA 30分23秒 より)
上の動画では、クルールが王冠を投げるモーションに入ってから王冠が手を離れるまでに踏みつけることで、クルールに反撃の隙を与えず連続で踏み続けるというテクニックを使用しています。全13回の踏み付けを上手く決めることができれば20秒以上もの短縮になる重要なポイントです。
同氏によれば、現状のテクニックでは30分切りは可能ではあるものの険しい道のりになるだろう、とのことです。今後の新しい技術の発見や、29分台の達成に是非注目したい作品です。
『ドンキーコング2001』
『ドンキーコング2001』は、2001年にGBCで発売された、GB版のシステムをベースにステージ構成などをより原作に近づけた作品です。『シール』という収集アイテムや『ファンキーフィッシング』といったミニゲームも追加されており、ハード性能上のハンデがありながらも、単なる移植にとどまらない魅力を持っています。
GBC版のAny%の世界記録は、2020年1月にOniLink86氏が達成した48分13秒です。47分台も可能であると断言する同氏は、更なる記録更新にも意欲を見せており、今後どこまでタイムが縮められるのか楽しみな作品です。
『スーパードンキーコング (GBA)』
『スーパードンキーコング』は、2003年にGBAで発売された、グラフィックやBGMの面でGBC版よりも更に高い再現度を誇る作品です。収集要素・ミニゲームが追加されているほか、原作ではやや単調だったボスの倒し方が一新され、行動パターンが豊富になっている点は特筆すべきと言えるでしょう。
GBA版のAny%のRTAでは、2018年に初の39分台が達成されて以来、大きな進展はありません。本作のRTAに興味を持っている原作走者もおり、今後記録が大きく動くことになるかもしれない作品の1つです。
『スーパードンキーコング2』のリメイク
『スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー』(1995年発売、SFC)のリメイクは、以下の2作品です:
- ドンキーコングランド(1996年発売、GB)
- スーパードンキーコング2(2004年発売、GBA)
『ドンキーコングランド』
『ドンキーコングランド』は、1996年にGBで発売された、GBシリーズの中では最も原作に忠実に作られた作品です。ステージの構造が簡略化されていたり、チームアップができなくなっていたりと、ハード性能が原因の変更点は多々あるものの、『とげとげタルめいろ』で使用されている名曲『Stickerbush Symphony』などは、GB独特の音源による再現がむしろ高く評価されています。
GB版のAny%では、2015年に45分台が達成されて以来、長い間世界記録が動いていません。今後、本作のRTA史を大きく動かすような新しい走者が現れることが期待されます。
『スーパードンキーコング2(GBA)』☆
『スーパードンキーコング2』は、2004年にGBAで発売された作品であり、前作以上に多くの収集要素やミニゲームが追加されていることが特徴です。また、『さいかいドンキーコング』に追加されている新たなボス『ケロゾーン』は、赤い恐竜のような見た目が強烈に印象に残ります。
GBA版のAny%の世界記録は、Snodeca氏によって2019年に達成された57分23秒です(録画は残っていないものの、56分台も達成されています)。RTAで使われる重要なテクニックとしては、ヘビの『ラトリー』の即時ハイジャンプが挙げられます。
(動画は [WR] Donkey Kong Country 2 GBA – Any% in 57:23 より)
上の動画では、Rボタンをタップした後にAボタンを押すことによって、本来は長い溜めを必要とするハイジャンプを瞬時に連発しています。他にも、クモの『スクイッター』による素早い足場展開のためのテクニックも見所です。
また、同氏が作成に携わっているTAS動画では『こおりのみずうみ』にて、時間停止トリックを利用して壁を抜けるという驚くべきルートが見られます。1秒しか短縮できない高難易度技であることからRTAでの採用は現実的でないようですが、コングたちがステージ中盤を華麗にショートカットする様子は必見です。
『スーパードンキーコング3』のリメイク
『スーパードンキーコング3 謎のクレミス島』(1996年発売)のリメイクは、以下の2作品です:
- ドンキーコングGB ディンキーコング&ディクシーコング(2000年発売、GBC)
- スーパードンキーコング3(2005年発売、GBA)
『ドンキーコングGB ディンキーコング&ディクシーコング』☆
『ドンキーコングGB ディンキーコング&ディクシーコング』は、2000年にGBCで発売された作品で、マップやステージ構成が一新されていることが特徴です。前作同様チームアップができないほか、コングファミリーやクマのイベントの多くが削除されている点で、残念ながら原作の壮大なボリューム感を再現しきれてはいません。
GBC版のAny%の世界記録は、2020年2月にdna423氏が達成した34分13秒です。ご多分に漏れず通常ルートの延長に近いプレイが基本となる本作のRTAですが、精密な操作や犠牲ジャンプを利用した短縮が求められるボス戦は、テクニックの魅せ場となっています。
(動画は donkey kong land III pb/wr 34:13 より)
上の動画では、ボス『カオス』戦において、ディンキーで敢えてダメージを受けて踏みつけることで相手の攻撃ターンをスキップしています。同氏によると、3秒差で2位の記録を保持しているemptysys氏の動向次第では33分台を目指すとのことなので、今後の熱い記録更新合戦に期待されます。
『スーパードンキーコング3(GBA)』
『スーパードンキーコング3』は、2005年にGBAで発売された作品です。本作のRTAについては、当サイトで既に2本の解説記事を投稿しておりますので、まだの方は是非ご一読ください:
【スーパードンキーコング3】時を止め壁を泳ぎ崖をよじ登る「GBA版」RTAの魅力
【世界記録紹介】スーパードンキーコング3 (GBA) Any%
また、上の記事で紹介している世界記録は50分02秒ですが、この記録は2020年7月に筆者が49分41秒にまで更新し、解説付きの動画を投稿済みです:
【世界記録】スーパードンキーコング3 GBA Any% RTA 49:41 (1/3)【ゆっくり解説】
『RTA in Japan Online 2020』にて『スーパードンキーコング3(GBA)』が披露されます
『スーパードンキーコング3(GBA)』Any%のRTAが、『RTA in Japan Online 2020』にて、以下の通り披露される予定です。
日時:2020年8月14日(金)午前6:36~7:31
走者:とんこつ(筆者)
解説:アジーン
配信場所:twitch.tv/rtainjapan
本作のRTAは、他のリメイク作品とは全く異なり、原作以上に壊れたバグ技を利用してステージを攻略する場面が非常に多く、特にSFC版に馴染みのある方にとってエキサイティングな内容となっています。是非本番の模様をチェックいただければ幸いです(アーカイブは以下の動画です)。
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