【AGDQ 2020向け】ファイナルファンタジー8 any% Co-op Relay の見どころ紹介

AGDQ 2020 FINAL FANTASY VIIIRPG

はじめに

ファイナルファンタジー8』は1999年に『スクウェア(現スクウェア・エニックス)』から発売されたプレイステーション用RPGであり、『ファイナルファンタジー』シリーズの8作目にあたる。主人公とヒロインのラブストーリーを全面に押し出したシナリオや、G.F.(召喚獣)や個数制となった魔法を「ジャンクション」するゲームシステム、そしてプレイステーション時代とは思えぬ美麗なムービーが特徴だ。昨年の9月にはキャラモデルが一新されたリマスター版が発売されたことは記憶に新しい。

現在開催中の世界最大のオフラインRTAイベントである『AGDQ 2020』において、『ファイナルファンタジー8』は日本時間1/8(水)の16:30頃に開始が予定されているディスク4枚で構成されていることもあり、予定タイムは8時間55分と、採用されたゲームの中では最長である。カテゴリは『any% Co-op Relay』。英語版のany%を、Tojju氏、Muttski氏、Luzbelheim氏の3名が協力して走る。この3名は、ちょうど1年前のAGDQ 2019で『ファイナルファンタジー9』を走ったメンバーでもある。

ここでは、現役ではないものの『ファイナルファンタジー8』RTAプレイヤーのひとりである筆者がその見どころを紹介したい。

プレイヤーについて

speedrun.com上の『PS版US Any%』カテゴリにおいて、Muttski氏は32人中3位、Luzbelheim氏は1位に位置している。Tojju氏の記録は載っていないものの、Twitchの彼のチャンネルで11位相当の記録の録画が確認できる。

Luzbelheim氏については、『AGDQ 2019』という大舞台で『ファイナルファンタジー9』の約1分間に渡る目隠しメニュー操作を披露した人物として記憶している方もいるかもしれない。彼は目隠しメニュー操作に象徴されるコマンド捌きの技量もさることながら、戦略についても非常に造詣が深い。筆者が日本語で公開したゼルカード一発ツモ技(この後簡単に紹介)を、日本人プレイヤーを差し置いて逸早く導入していたのを見たときは度肝を抜かれたものだ。また、ゲーム開始前の乱数調整によって歩数エンカウント数を減らす「Pre New Game Stepcount Manipulation」を用いた記録を出しているのも、筆者の知る限り現在のところLuzbelheim氏だけだ。彼は自身の持つ英語版の世界記録を昨年の11/26に更新し、史上初の8時間20分切りを達成している。

戦略について

『ファイナルファンタジー8』のany% RTAの戦略を一言で表すと「力を上げて物理で殴る」である。序盤は主人公であるスコールの特殊技「連続剣」を、アーヴァインの加入後はアーヴァインの特殊技「ショット」を主に用いてボスを撃破してゆくが、そんな戦術を取れるのも物理攻撃力である「力」を高めているからこそ。

ではどのようにして「力」を上げるのか。鍵となるのは「キスティスカード」と「ゼルカード」という2枚のレアカードだ。レアカードは世界でたった1枚しか存在せず、カードをアイテムに変換する「カード変化」アビリティをレアカードに使用すると、そのカードが永久に失われる代わりに強力なアイテムを得ることができる。

「キスティスカード」からは「ソウルオブサマサ」3個を経由して魔法「トリプル」180個を精製できる。魔法「トリプル」は「力」ジャンクション増分のランキングにおいて魔法全49種類の中で3位に位置しており、ジャンクションすることによって「力」を飛躍的に伸ばすことができる。

「ゼルカード」からは「ハイパーリスト」を3個精製できる。「ハイパーリスト」はG.F.に使用すると「力+60%」アビリティを習得させられる。これは文字通り「力」を6割増加させるアビリティであり、魔法「トリプル」の「力」ジャンクションとの相乗効果によって、非常に高い物理攻撃力を得られるのだ。

見どころ紹介

レアカードの一発ツモ

「キスティスカード」と「ゼルカード」の入手手段は、それぞれ所持している特定の人物とのカードゲームに勝利して奪い取るというものだ。ただし、相手がレアカードをすぐに使ってくれるときもあれば、なかなか使ってくれないときもある。カードゲームは速くても1戦あたり約40秒掛かるため、相手がレアカードを出し渋りし続けた場合のタイムロスは大変なものになってしまう。だが現在は「キスティスカード」「ゼルカード」ともに、たった1戦でツモる方法が確立されているのだ。

キスティスカード

「キスティスカード」はバラムガーデンの食堂で駄弁っている「トゥリープ会員#01」が所持しており、彼が「キスティスカード」を使用する確率は約30%だ。

現在の戦略では、ゲーム開始直後に2F廊下の生徒からカードを数枚もらい、脇目もふらずにガーデンの食堂へ向かって「トゥリープ会員#01」にいきなりカードゲームを挑む。だが手持ちのカードはレベル1の弱いカードばかり。こんなデッキで勝てるのか?

勝てる、そして「キスティスカード」を奪えるのだ。実は、戦闘もカードゲームも行わない状態で「トゥリープ会員#01」にカード勝負を挑み、カードゲーム開始画面で素早く「はい」を選択すれば、相手のデッキに「キスティスカード」を含み、かつ特定の手順で必ず勝てるパターンを猶予3フレーム(0.05秒)で引き当てることができるのだ。

実はこの技は秒間20連射以上の連射機を用いれば必ず成功するのだが、英語版のルールでは禁止されているためそれはできない。一発勝負である『AGDQ 2020』の舞台では、走者は恐らく直前にセーブしてから挑むだろう。

ゼルカード

「ゼルカード」はゼルの家にいる「ディンお母さん」が所持しており、彼女が「ゼルカード」を使用する確率は約10%だ。まともに挑んだ場合、10回以上勝負してもツモれない、なんてことも珍しくない。一体どのようにして一発でツモるのだろうか?

かいつまんで言うと、「トゥリープ会員#01の使用したデッキ」と「戦闘中のカード乱数消費回数」の情報があれば、「ディンお母さん」とのカードゲーム開始画面で19フレーム(約0.32秒)の目押しを行うことによって「ゼルカード」を使用させることができる。

「戦闘中のカード乱数消費回数」を数えるには、以下の内容をトレースする必要がある。最後が意味不明かもしれないが、そういうものなのだ。我慢してほしい。

  • エンカウント内容
  • 戦闘中の敵味方の行動
  • 戦闘終了時のカメラ視点

プレイつつ自力でこれらをトレースするのは困難を極める。「FF8 Utilities」に内蔵される「ZELL CARD RNG CALCULATOR」というカウント専用のツールが存在するが、これを使っても厳しいだろう。だがそこは協力プレイ。プレイしていない2名が全力でサポートしてくれるはずだ。

恐らく走者は「ディンお母さん」に最速でカードゲームを挑めるタイミングであるドール試験帰還直後にゼルカードを奪取するだろう。この時点で手持ちには「キスティスカード」と「イフリートカード」という2枚のレアカードがあり、その上「ディンお母さん」のAIは弱いため、カードゲーム自体は苦戦しない。

ディアボロス戦

「力+60%」を習得できるのはDISC 1の2/3辺りから。魔法「トリプル」がジャンクションできるのはDISC 1の終盤からであり、それより前のボス戦では、HPジャンクションもしていない味方のHPをわざと削って特殊技を何度も発動させるという、綱渡りな戦術がとられる。

中でも難しいのは「ディアボロス」戦だろう。めでたくSeeD試験に受かった翌朝、シド校長からSeeDとしての初任務を言い渡されると同時に「魔法のランプ」が手渡される。この「魔法のランプ」を使うことによって、好きなタイミングで「ディアボロス」と戦うことができるようになる。

「ディアボロス」はこの時点でも約7000もの高いHPを持ち、パーティ全員に現在HPの3/4のダメージを与える「グラビジャ」を使いこなす上に攻撃力の高い強敵である。だがRTAではシド校長から「魔法のランプ」を手渡された直後に撃破する。RTAに欠かせないアビリティである「時空魔法精製」(前述した魔法「トリプル」を精製する)や「エンカウントなし」(効果は文字通り)が習得可能なのはディアボロスだけであり、これらをなるべく早く覚えるためだ。

では一体どのような戦術でこの強敵を倒すのだろうか? 答えはゼルの特殊技「デュエル」だ。「デュエル」は制限時間内であれば、フィニッシュブローを発動しない限り特技のコマンドを入力することによっていくらでも攻撃できる。「デュエル」の特技の一つに、現在HPの1/4のダメージを与える「メテオストライク」があり、これをコンボに多く組み込んで高速でコマンドを入力することによって、「デュエル」1回で撃破することが可能なのだ。

参考までに、これは「ディアボロス」戦をプレイする筆者の手元を映した動画だ。この動画では「ヘッドショック」と「かかと落とし」は連射機を使うことで即時に入力しているが、英語版のルールでは連射機が禁止されており、その分入力が遅れることになる。また、「デュエル」の制限時間には4,6,9,12秒台の4パターンあるが、最短の4秒台を引いた場合は1回の「デュエル」でHPを削り切ることは難しい。この高速コマンド入力を要求される「ディアボロス」戦には注目したい。

バルブを回せ

しつこいようだが英語版のルールでは連射機が禁止されている。これがダイレクトにタイムへ影響するポイントを紹介したい。

DISC 2、バラムガーデン地下のMD層でバルブを回すときにちょっとしたミニゲームが発生する。ここでは約9秒間に一定回数□ボタンを連打する必要がある。初回挑戦時のノルマは100回で、失敗するごと50回→20回→1回とノルマは緩和されるが、失敗するたび約20秒のロスが発生する。果たして一発で突破できるだろうか? ちなみに連打の遅い筆者は一度も成功したことがない。

エスタ時限

『ファイナルファンタジー8』のRTAでは、空白の時間を利用してメニュー操作を済ませるポイントが以下の3箇所存在する。

  • DISC 1、バラムガーデン、SeeD試験終了後の結果待ち
  • DISC 1、ラグナ編1のデリングシティ、ホテル地下
  • DISC 3、エスタ市街、ルナティックパンドラ通過イベント

最後は特に「エスタ時限」(英語では「Esthar Menu」)と呼ばれている。ここでは5分間もの自由な時間が与えられるのだが、RTAではこの5分間をフルに使い、この時点で可能なメニュー操作を全て済ませてしまうのだ。メニュー操作だけではない。買い物もするし、アビリティポイントを稼ぐためにエンカウントを2回も起こす。それら全てを5分以内に収めるという走者のコマンド捌きの最大の見せどころなのだ。

百聞は一見にしかず。Luzbelheim氏の持つ英語版any%の世界記録におけるエスタ時限を見てみてほしい。

さて『AGDQ 2020』では、15,000ドルのDonation IncentiveによってLuzbelheim氏がこのエスタ時限で目隠しメニュー操作を実行してくれる。かつて彼は、『RPGLB 2018』で『ファイナルファンタジー8』を走ったときに1分半に及ぶエスタ時限の目隠しメニュー操作を披露している。

だがこの時は、魔法の受け渡しの途中で画面をチラ見して失敗しているのだ。今回行う目隠しメニュー操作は『RPGLB 2018』のときの1分半を上回る2分以上とのこと。彼の挑戦に大いに期待したい。

Eyes On Me

ここまでは技術的な観点からばかり見どころを挙げてきたが、最後に、そうではない見どころを挙げたい。

DISC 3、宇宙にさまよう飛空艇ラグナロクにスコールとリノアの二人が偶然辿り着き(そこ、ご都合主義とか言わない!)、機内に跋扈するモンスターを討伐してコックピットに進入する。ここでは会話が自動で進み、フェイ・ウォンの『Eyes On Me』をBGMに、二人きりのロマンチックなシーンが流れる。

『RPGLB 2018』ではここで解説と走者が全員で『Eyes On Me』の合唱を行い、走者の一人であるCordellium氏はリコーダーの演奏まで披露してくれた。今回の『AGDQ 2020』では、10,000ドルのDonation IncentiveによってMuttski氏のギターの伴奏つきで走者全員が歌ってくれるとのことだ。

なお『Eyes On Me』はエンディング中にも流れるものの、計測終了地点の約13分後にあたるため、そこまでプレイされることはないだろう。

おわりに

筆者が特に見どころが多いと考えている区間はゲーム開始1時間程度までの序盤だ。だが『ファイナルファンタジー8』の開始が予定されているのは、最初に述べたように平日の夕方である1/8(水)の16:30頃であり、序盤をリアルタイムで視聴できる方はそう多くないだろう。残念なことだ。しかし最大の見どころとなるであろう「エスタ時限」は夜23:30頃に見れるので、この記事を見て少しでも興味をもった方は是非そこだけでも視聴してみてほしい。

見逃してしまった場面は『過去の動画一覧』(『Japanese Restream』の方はこちら)からすぐに見返すことができる。もちろん『ファイナルファンタジー8』以外のゲームも見返せるぞ。

『ファイナルファンタジー8』のDonation Incentiveには、他にもスコール・リノア・グリーヴァの命名、更に隠しボスである「オメガウェポン」の撃破がある。これらも楽しみなところだ。また、日本語ミラー配信が行われる『Japanese Restreamの解説は、分かりやすい解説に定評のあるアジーン氏とRTAプレイヤーである神意氏が担当する予定だ(神意氏は18時頃から)。この二人の解説にも期待したい。Hype!

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