はじめに
RPGのRTAを中心に行っているもかと申します。
特に大々的に発表しているわけでもなく細々とRTAを行っており、昨年ですと3作品でRTAのWR(世界記録)を更新しました。
誰にも知られることなく埋もれるのは惜しいため、今回はそのうちの1作品である『神代學園幻光録 クル・ヌ・ギ・ア』のRTAについて紹介させてください。
本作『神代學園幻光録 クル・ヌ・ギ・ア』について
ご存知の方が少ない作品だと思うのではじめに詳しく紹介させていただきますが、『神代學園幻光録 クル・ヌ・ギ・ア』は2008年10月9日に発売されたPlayStation2用ソフトです。ゲームのジャンルとしてはRPGに相当します。
街で起きている行方不明事件を調査していくうちにそれよりもっと大きな事件に巻き込まれていき、“現代編”と“大正編”のふたつの時代から事件の真相が明かされていくというのが大まかなお話の流れです。
実際の評価
これだけ聞くと至って普通のストーリー構成ですが、残念ながら発売後のプレイヤーからの評価は芳しくありませんでした。
特に上記の「友情パワー」は発動時のボイスが盛大にずれていることもあり、本作を象徴する“ビッグワード”として発売から13年が経過した今もあまりお行儀が良くないユーザーの間で親しまれています。
(ちなみに友情パワーは特定メンバーを戦闘に入れていると使うことができる相陣連技です)
しかし、本作にゲームとしての魅力がないかと言えばそうではありません。
私に言わせれば「割と面白い」という評価に落ち着きますし、本作の評価を汚名返上すべくキャラクターのレベルを最大まで上げるやりこみを行う方が現れたり、いかに早くゲームをクリアできるのか試すべくRTAを行う方も複数名存在します。
僭越ながら本作のRTAのWRを所持している者として、本作の魅力を踏まえながらRTAを行う上でどのようなことに気をつけているのかを語らせていただきます。
RTAを行う上でのポイント
本作は物語を楽しむ“ノベルパート”と街を探索する“RPGパート”に分かれており、ノベルパートはゲーム内の機能で高速スキップが可能となっています。
ノベルパートでは基本的に差が出ないことから、RTAでは主にRPGパートの最適化を目指していくことになります。
ノベルパートについて
ノベルパートでは乱数で変わる要素などもないため、基本的に最もイベントが早く進行する選択肢を選んでいくだけです。
ノベルパートの選択肢選びのテクニックとして微妙に重要なものとして一点挙げるなら、本作のノベルパートは“先行入力”が効くので“方向キーの下を押し続けながら決定ボタンとなる○ボタンを連打する”ことで最速で一番上の選択肢を選ぶことができます。
とはいえノベルパートの大部分を占める会話部分は高速スキップできることから選択肢選びだけでタイムを縮めるのは厳しく、基本的にノベルパートでタイム差がつくことはありません。
移動パートについて
RPGでは街のマップとフィールドのマップが分かれているもの、オープンワールドで街とフィールドが地続きになっているものなどさまざまなマップがありますが、本作では上記のように全体マップから行きたい場所を選ぶようなシステムとなっています。
方向キーで移動して行きたい場所を選びますが、こちらもノベルパートと同様に“先行入力”が効きます。
移動パートではダッシュや瞬間移動のような時短要素は存在しないため、行きたい場所を狙って先行入力を決め続ければ人力でも容易にTASと同じ速度で移動することが可能です。
この先行入力は押す方向キーを間違えない限りミスする要素がないくらい誰でもできるものなので、ノベルパートと同様に移動パートでも差がつくことはありません。
戦闘パートについて
RPGの要となる敵との“戦闘”は本作にも存在します。
そしてRTAのタイム差がつく場所としては、なんと9割がこの“戦闘パート”となります。
タイム差がつく要因としては“ランダムエンカウントの多さ”や“キャラクターの異常に低い命中率”などが挙げられますが、これらは後にまとめて紹介させてください。
運要素について
運要素と言えば前述したランダムエンカウントもそうですが、本作の最大の運要素は上記の“ハルモニアの贈り物”でしょう。
このアイテムはいわゆる“換金アイテム”となっていてお店に売ることしか使い道がないですが、この売却価格がものすごく高くなっています。
換金して得たお金を使えば最序盤で最強装備を整えることができるくらいに売値が高くなっており、RTAでは必須のアイテムとなっています。
この“ハルモニアの贈り物”をドロップする敵はゲームを始めてから約7分のところで固定敵として遭遇します。
ドロップするか否かで開始数分で最強装備を整えられるかどうかが決まることから、ここでドロップしなかったらもう世界記録を出すのは不可能というレベルでタイムに影響するアイテムとなっています。
体感でドロップ率は2割程度となっているため、記録を狙う時はドロップするまで延々とゲームをやり直すことになります。
実際に記録を出す上でどうするのか
ここまで淡々とゲームの仕様を語ってきました。
ノベルパートや移動パートではほぼ差が付かず、運要素の換金アイテムもドロップするまでリセットするので試行回数で何とかできます。
となると差がつくのは“戦闘パート”ということになりますが、この戦闘パートがRTAを行うプレイヤーを苦しめることになります。
タイムに強く影響する要素は主に二点ほど、ここからさらに詳しく解説します。
ボス戦
より強大な敵として立ちはだかってくるボスは通常のRPGではとても厄介な存在となるでしょう。
その点本作は素晴らしく、すべてのスキルの命中率が100%であり、かつ麻痺の状態異常は解けることがないという仕様になっています。
麻痺効果を与える“シャクス”というスキルも存在している上に取得が容易なため、シャクス取得後のボス戦はシャクスを当てた瞬間に勝利が確定します。
状態異常が毒などの場合は数ターンで効果が切れるのですが、麻痺だけは持続時間が永続となっています。本作の慈悲深いところでしょう。
ちなみに麻痺が入るからボス戦でもタイム差がつかないかと言えばそうではなく、本作はキャラクターの命中率がかなり低く設定されているため攻撃を当ててくれるかどうかでタイムが決まります。
具体的な例を挙げますと、ひどいときはひとつの戦闘で+1分持っていかれるくらいには命中率がタイムに影響します。
攻撃に関わるステータスではなく命中に関わるステータスを優先的に上げることでタイムを安定させることはできますが、そうすると平均していいタイムが出るようになる反面低命中高火力で攻撃を当て続けている記録に勝つことはできません。記録狙いの場合にどこまで安定を取るのかは悩ましいところとなります。
ランダムエンカウント
本作では移動パートを進んでいるときに敵とランダムでエンカウントする仕様となっています。
戦闘自体は『友情パワー』などの敵全体を対象とした相陣連技を1回使うだけで出現しているすべての敵を一撃で倒せるので問題ありません。
また、レベルアップでHPMPが全回復する仕様なこと、後述しますが一部アクセサリーの仕様がおかしいことから相陣連技を使うために必要なMP管理も問題ありません。
ランダムエンカウントで何か厄介かというと、単純に戦闘に入るまでのロード時間が長く一撃で敵を倒せるとしてもエンカウントしただけで相当時間を持っていかれることです。
またさらに厄介なこととしては、本作に登場する敵はすべてこちらのパーティーメンバーのレベルに応じて能力値が変化します。そして、こちらのレベルが上がりすぎると敵のHPが上がり、相陣連技を1回使うだけでは敵を倒せなくなってしまいます。
本作は敵からの逃走を選択することもできますが、逃走失敗時は敵のターンになるのでそこでさらに時間を使ってしまいます。はっきり言って敵からの逃走はハイリスクローリターンで恩恵がほぼないのですが、敵を倒しすぎると物語後半になってから敵を一撃で倒せなくなってしまうのです。
タイマーのラップタイムを見ると調子がいいという状況は記録狙い時に幾度となく発生しましたが、敵を一撃で倒せなくなる物語後半から真綿で首を絞められるように徐々にタイムを失っていくのは恐怖そのものです。
ちなみに上記画像は大正編序盤で逃走を選択したものですが、逃走に失敗して誰かが倒れたらリカバリ不可能なのでリセットとなります。
ケレスの指輪の面白い仕様
RTAで使うアクセサリーに『ケレスの指輪』というものがありますが、この仕様がちょっと面白いのでついでに紹介させてください。
上記画像の説明文だとMPをUPすると書かれていて、実際に装備するとMPが20アップします。
この装備の面白いところは、現在MPではなく戦闘時のMPを20アップする効果ということです。
主人公のMPが50として、ケレスの指輪を装備したとしましょう。一般的に思い浮かぶMPの状態は“50/70”と最大MPが20増えるようなイメージのはずです。
本作の場合は装備してメニューを開くとMPは“50/50”であり、戦闘に入ったときに“70/70”になります。
MPが“70/70”の状態でMPを30消費するスキルを使って戦闘を終了させ、メニュー画面を開くと主人公のMPは“40/50”となります。
私は多くのRPGをプレイしていますが、このようなMP上昇の挙動を見せる作品は本作以外で出会ったことがありません。
このような仕様のためRTAでは移動パートで常に2つケレスの指輪を装備し、戦闘に入ると40上昇するというアドバンテージを活かしながらプレイします。
おわりに
『神代學園幻光録 クル・ヌ・ギ・ア』のRTA解説、いかがだったでしょうか?
長々と書いていますが、運に左右される部分が多すぎるというところだけ分かっていただければ幸いです。
タイムを安定させるべく力上昇の補助スキルを使用したり、敵の弱点を利用した主人公の二回行動などを活用したりとRTAっぽいこともやっていたりするのですが、それらの工夫も一度のエンカウントで帳消しにされるのが本作のRTAとなっています。
最後にこれはきつい仕様すぎて取り入れていないテクニックを紹介します。
本作はゲームプレイ中にどこからでもタイトル画面に戻ることが可能です。
ある程度ゲームを進めてからタイトルに戻り、再度最初から始めるとキャラクターの立ち絵の表示が最初のほうで早くなる挙動を示すことを確認しています。
おそらく一度キャラクターのグラフィック情報をメモリかなにかに格納するようにしていて、タイトル画面に戻ってもメモリ内の情報が保持されることからこのような挙動になっているのだと推測しておりますが、これを許可すると最初に数十分プレイしてからタイトルに戻ってプレイすることがRTAの必須条件になってしまい、ただでさえ少ないRTA人口がさらに減りそうなので敢えてやっていません。
また、選択肢でキャラクターの好感度が上がってキャラクターがパワーアップするということを耳にしたこともあるのですが、一度の攻撃のミスでそれらの工夫も帳消しにされるので敢えて調査していません(選択肢の総当りが面倒というのもあります)。
今から本作のRTAに参戦したい方はぜひ調査の上ご参加くださればと思います。まだ見ぬ走者の登場をお待ちしております。
筆者記録&チャートはこちら
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プレイするときにメモとして見てるやつ
※ゲーム画像はすべて YouTube – Kamiyo Gakuen Makorouku Kurunugia Any% RTA in 1:22:20 より引用しました。
普段はなりたい私にミラーインしてます。
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