RTAの世界には、ユーモア溢れるインパクトの強い名前が付けられている技があります。その内の1つが、今回紹介する『大化の改新』です。
大化の改新(たいかのかいしん)は、皇極天皇4年(645年)6月14日の乙巳の変に始まる一連の国政改革。
本記事では、スーパードンキーコングRTAにおける『大化の改新』という技の由来と、その進化の歴史やRTAに与えた影響についてご紹介します。
大化の改新(Super Jump Roll)とは
『スーパードンキーコング』のRTAにおける『大化の改新』とは、画面外を高速ローリング移動するバグ技のことを言います。まずは、以下の動画をご覧ください。
この技は、2つのバグ技を組合わせて発見されたものです。『大化の改新』というユーモラスな名前は、ベースとなった技の1つ『飛鳥文化アタック』の発展形ということで、一動画に付けられたコメントが発祥です。現在、これらの名前はRTAプレイヤーの間でも広く定着しています。
『大化の改新』は、海外では『Super Jump Roll (SJR)』と呼ばれます。この名称は、元となった2つの技『Superjump』と『Jumproll』(飛鳥文化アタックの英名)に由来します。
『Superjump』はその名の通り、限りなく高くジャンプする技です。ダメージを受けて画面外に逃げるディディーが崖に引っかかってフワーっと上昇する挙動が、バグの仕込みになっています。
『飛鳥文化アタック』は、空中をローリングで一直線に飛び続けるバグ技です。見た目がギャグ漫画に登場する必殺技とそっくりであることから、この名前が付けられました。ジャンプとローリングという2つの動作を組合せたような動作であることから、海外では『Jumproll』とも呼ばれます。この技を出すには、下の動画のように、敵を踏む動作とローリングの始動をぴったり重ねることが必要です。
『飛鳥文化アタック』『大化の改新』は、ステージのギミックを無視して空中を高速できるという強力なバグ技である反面、ジャンプとローリングをちょうど重ねなければならない1F技(約1/60の入力精度を要する技)でもあります。そのため、これらの技の発見以降、多くの上位プレイヤーが幾度となくリセットボタンを叩く要因にもなりました。
なお、本節で紹介した技の発見の歴史は、以下の動画に詳しくまとめられています。
どのように進化を遂げた?
2018年、『大化の改新』に革命が起こりました。それまで1F技だったものが、新たなセットアップを加えることで、ほぼ確実に成功する技へと変貌を遂げたのです。その鍵となったのは「ロープの経由」でした。
上の動画では、「Superjump状態が、ロープを一旦掴んでから着地した後も持続する」という性質を利用することで浮力を得ています。元々はエッジ付近に敵を位置調整してからローリングする必要があったのに対して、この方法だとローリングの始点がどこであっても成功します。
この画期的な新技は、元となった『Super Jump Roll (SJR)』とは対照的に、簡単に発動できるという意味を込めて『Super “Free” Roll (SFR)』と呼ばれます。具体的な入力手順については以下の動画で筆者が紹介していますが、RTA経験のないプレイヤーからもこれまでに多くの成功報告を頂いている、紛れもなく「Free」な技です。
サルでもできる大化の改新 (動画から抜粋)
VC版でも出来るのでドンキー1お持ちの方は是非!#sm35681570 pic.twitter.com/bZkuGxj2DJ— とんこつ (@tnkt_kong) September 15, 2019
この技を発見したのは、以前紹介した『Reverse Boss Order』でも数々のバグ技を発掘してきたSnakpak氏です。
【スーパードンキーコング】ボスを逆順に倒す『RBO』の歴史と革新
2018年11月、バナナを1本も集めない縛りプレイのルートを構築していた同氏は、4-2『クリスタルトンネル』にて、Superjumpによってステージを丸ごとジャンプしてクリアできないか試みました。結果はNoでしたが、テスト中にロープを経由して着地したあとにもSuperjump状態が保持されていることに偶然気づいた同氏は、その事実を海外コミュニティ内で共有しました。
それを受けて多数のプレイヤーがこの現象の応用先を探した結果、6つのステージに適用できることが数時間のうちに洗い出されました。特に6-3『どくガストンネル』では、既存のSJRルートとほぼ同速かつ簡単なSFRルートが編み出され、後半の大きなリセットポイントが無くなることが判明しました。
また、2019年2月には3-3『ジンガーのもり』でも有用なSFRルートが発見され、現在ではこれらの2ステージで多くのプレイヤーに愛用される技となっています。
RTAをどのように変えた?
本作のRTAでは、『飛鳥文化アタック』『大化の改新』といった1F技が非常に大きくタイムを左右していました。『All Stages』の世界記録争いが、全部で7回ある1Fチャレンジの成否によってほぼ決まっていた時期もあるほどです。
本記事で紹介した『Super Free Roll』は、高難易度技に比重の偏った競技性を大きく変えるものでした。この技の発見直後、本作のRTAを長い間離れていた古株のプレイヤー達が復帰する動きが見られたことからも、1F技の減少が記録狙いのハードルを下げたことが伺えます。
しかし、最近ではSJRの研究が再度進んだことで、新たに1F技が使えるようになったステージが増加してきており、No Major Skipsのようなバグなしのカテゴリの人気が高まってきています。
【世界記録紹介】スーパードンキーコング No Major Skips
このような背景から難易度が再び上昇しつつある『All Stages』の世界記録は、本稿執筆時点で、lovebird920氏による31分06秒となっています。31分切りという壁が、人力の限界を更に突破することによって達成されるのか、はたまた技術的なブレイクスルーによって実現されるのか、今後も要注目です。
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