RTAGamers Advent Calendar 2021も残すところあと4日となりました。22日目の今日は、Celeste Speedrun界を騒がせた、新グリッチ「Dash Tigger Skip」を紹介します!
新グリッチ「Dash Trigger Skip」とは何か
「Dash Trigger Skip」(以下DTS)とは、10月15日にTAS制作者のVampさんとCr33pyCatさんが制作したFarewell(チャプター9)のTAS動画にて初めてお披露目されたグリッチ技です。
チャプター9の冒頭では、本来ならば強制的にダッシュの回数が1回になるイベントが挟まれます。しかしこのグリッチを使って、そのイベントを回避することでダッシュ2回の状態を持ち越すことが可能になります。
これが何を意味するのか。『Celeste』をチャプター7まで遊んだことのある人ならご存知かと思いますが、ダッシュが1つ増えるだけで取れるアクションのバリエーションは、ダッシュ1回の頃とは比べ物にならないほど増えます。
つまり、本来であればダッシュ1回を想定されているステージをダッシュ2回で駆け抜けられるということはタイムの大幅な短縮に繋がります。革命的なグリッチが見つかったことで、Celesteコミュニティは狂喜乱舞の1日を過ごしました。
wowowow, a new glitch was discovered in Celeste Farewell that lets you keep two dashes for most of the chapter. The new TAS completes the chapter in sub-10 minutes!! So cool https://t.co/TgHz7ccTSk
— Maddy Thorson (@MaddyThorson) October 14, 2021
Celeste開発者、Maddy Thorsonさんのツイート
「Dash Trigger Skip」の原理
では具体的にはどのような操作を行っているのでしょうか。DTSは大まかに二つのステップによって構成されています。
ステップ1:空中浮遊シーケンス
強制的にダッシュが1回になるイベントを回避するためには、イベントの開始トリガーになるバデリンオーブを使わずに自力で上の部屋に到達しないといけません。
そこで登場するのが空中浮遊バグです。お墓の前で「話す」ボタンを押した1フレーム後に「ジャンプ」ボタンを入力するとマデリンが反重力状態になり、空中浮遊を始めます。なぜ反重力状態になるのか、詳しくは分かりませんが、おそらくイベント中に右側に落ちることを防ぐための処理が働いているからだと思われます。入力に成功するとイベントをスキップするまでマデリンが浮遊し続けます。
人力で1フレームの入力を行うのは非常に困難です。そこでポーズバッファという技術を使います。ポーズ→ポーズ解除を高速で行うことでゲームを1フレームずつ進めることが可能になり、フレーム単位で入力を行うことが容易になります。
浮遊してから約16秒後にイベントスキップをすると、本来のスポーン位置の外側にマデリンが出現し、強制イベントを回避することができます。
ステップ2:判定スキップシーケンス
強制イベントの回避ができたならダッシュ2回を維持して進めそうに思えますが、そう簡単にはいかず、ダッシュトリガーという不可視の判定を越える必要があります。
二つの紫の線で囲まれた範囲がダッシュトリガーです。これにマデリンの当たり判定が触れるとダッシュを1つにする処理が働いてしまいます。なのでダッシュトリガーの判定をどうにかしてすり抜ける必要が出てきます。
到底すり抜けられないように見えるダッシュトリガーですが、実は画面の外を見てみるとなんとカメラの外で判定が途切れています(!)。
足場のブロックの位置が最高点に来たタイミングで、ミッドエアースーパーというテクニックを使ってダッシュを回復し、上→右とダッシュしてダッシュトリガーの上を通ることで、ついに判定のスキップに成功します。
まとめると、次のようになります。
- 空中浮遊バグを使って強制イベントを回避する。
- ダッシュトリガーの判定の上を通ることでダッシュをひとつにする処理を回避する。
簡略化している部分もありますが、これが「Dash Trigger Skip」の全容になります。より詳細な解説やセットアップについて知りたい方はこちらの動画が参考になると思います。
「Dash Trigger Skip」が与えた影響
モデレーターの対応
TAS動画が投稿された翌日に、『Celeste』のリーダーボードを管理するモデレーター陣は、Farewell(チャプター9)のIL Speedrun(個別ステージラン)を「DTS」と「No DTS」の二つのカテゴリーに分けることを発表しました。
IL SpeedrunでのDTSが影響を及ぼす範囲があまりにも大きいこと、それによって今までとは根本的にプレイングが変わってしまうことがリーダーボードの分割に至った主な理由です。しかしチャプター9を含むフルゲームカテゴリー(True Endingなど)では、影響範囲が小さいことからDTSの使用が認められています。なので、DTSの使用の有無にかかわらず同じリーダーボードに載ることになります。よってチャプター9を含む全てのカテゴリで世界記録の更新が見込まれます。
理論値の大幅更新
「Dash Trigger Skip」はCeleste Speedrunの歴史の中でも、トップクラスで大きな短縮技です。
執筆時点(2021/12/21)でのCommunity SoB(コミュニティ全体での理論値)では、「No DTS」と「DTS」の最速クリアタイムは約1分の差がついています。
数多のプレイヤーが最速のルートを探求してきたことを踏まえると、とんでもない短縮幅です。研究が進めば、短縮幅はさらに伸びると思われます。今後のコミュニティの動向にも注目していきたいです!
おまけ:祝採用!『RTA in Japan Winter 2021』Celeste見どころ紹介
12月26日から開催される『RTA in Japan Winter 2021』の採用ゲームタイトルに、『Celeste』(カテゴリ:True Ending)が選ばれました!採用を祝して、4人のレース形式となる今回の見どころを勝手に紹介したいと思います。
ハイレベルな走者たちが繰り広げる、まばたき厳禁・白熱必至の4人レース!
今回のレースで走られる、puddingguriさん、manbou_rubikさん、Nose_celebさん、tokikumoさんの4人は、Any%の30分切り(上位3.6%)を達成している超実力者です。世界的に見てもハイレベル、日本Celeste界の至宝たちによる熾烈なレースが繰り広げられること間違いなしでしょう。
さらに直近で、puddingguriさんが今回走られるカテゴリ「True Ending」の世界記録を更新しています!ヤバいですね…
12月20日に更新された「True Ending」のWR 46:41.073
セレステ星人4人組による、まばたき厳禁のレースに是非ご期待ください。
「Dash Trigger Skip」をいかに確実に決められるかが勝負
ポーズバッファというテクニックを使用することで、「Dash Trigger Skip」を成功させることがかなり容易になることは先ほど説明しました。しかし、DTSはつい最近発見されたテクニックです。本番の緊張感もあるなかで、新技を決めないといけないプレッシャーは相当のものでしょう。
言い忘れていましたが、DTSを失敗してしまうと、一回につき約20秒ものタイムロスが発生してしまいます。ヤバいですね…
本番で一発でDTSを決めたときには、拍手のエモートで迎えてあげてください!
最後に
ここまで読んでくださってどうもありがとうございます。この記事によって「Dash Trigger Skip」への理解を深めてくだされば、大変ありがたく思います。
最後に、『RTA in Japan Winter 2021』の『Celeste』の出番は26日の23時45分からです。白熱必至のレースを見逃さないようにしましょう!
「RTA in Japan Winter 2021」のスケジュールはこちら
2020年8月からRTAを始めました。主にRefunct,Celesteをプレイしています。シンプルなのに奥深いゲームが好みです。
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