ごきげんよう。Shino.(紫乃)です。
HiSTさんやしゅんいちさん、御茶麒麟さんが「RTAを始めるために」というタイトルの記事を書いていたので、パズルゲームRTAを布教すべく、私も同様の記事を書いてみることにしました。
この記事を読んでいる方の中には、「パズルゲームは苦手だから……」と思っている人もいるのではないでしょうか。事実、RTA走者の中には「パズルは自分には走れない」と口にする人も多いです。
しかし、パズルゲームが苦手でも、パズルゲームは走れます。極端な話ですが、ゲームの選び方によっては、通常プレイが全くできないレベルでもRTAができます。
「パズルゲームは苦手だから走れない」と思っている皆さん、これを機にパズルゲームのRTAを始めてみませんか?
パズルゲームには2種類ある
突然ですが、皆さんは、パズルゲームRTAの走者が乱数に苦しめられている姿を目にしたことはありませんか?
パズルボブルの乱数に勝てる人類などいない
— ぽ氏 / poshi (@potato_digger) November 3, 2020
パズルゲーム走者の乱数に対する怨言の一例。パズルゲーマーをフォローしていると、タイムラインによくこんな声が流れてくる。
RTA走者の目の敵にされがちな乱数ですが、「最適解を考える」ことがゲームの根幹であるパズルゲームにとって、乱数は必要不可欠な存在です。
しかし、乱数を活用して初期配置などをランダムに生成するパズルゲームがある一方で、ほとんど乱数が存在しないパズルゲームがあるのも事実です。
そこで、筆者はパズルゲームは「乱数の影響を強く受けるかどうか」で2種類に分けられると考えています。
タイプ1:乱数の影響を強く受けるタイプ
1つ目は、「乱数の影響を強く受ける」タイプのパズルゲームです。一般的なぷよぷよやテトリス、パズルボブルなどがこのタイプに該当し、プレイするごとに変化する状況に対応することが求められます。
これらのパズルゲームは、乱数次第で無限にステージを生み出せるため、エンドレスに遊べるゲームが多いのが特徴です。本稿では以降、このタイプに属するゲームを「ぷよぷよ型」と呼びます。
タイプ2:乱数の影響をそれほど受けないタイプ
2つ目は、「乱数の影響をそれほど受けない」タイプのパズルゲームです。これらのパズルゲームは、ステージクリア型のゲームが多いのが特徴です。
2020年に行われたPuzzle Game RTA Festivalで披露されたゲームのうち、ことばのパズル もじぴったんやママにゲーム隠された、ハコボーイ!、Helltakerがこれにあたります。
本稿では以降、このタイプのゲームを「もじぴったん型」と呼びます。ぷよぷよ型ともじぴったん型、どちらもひらがなで可愛いですね。
ぷよぷよ型ともじぴったん型の差異まとめ
さて、そんなぷよぷよ型ともじぴったん型のパズルゲームですが、その違いは乱数の影響の大きさだけではありません。
具体的には、以下の表に示したような違いがあります。
ぷよぷよ型 | もじぴったん型 | |
乱数の影響 | 強い | それほど強くない、もしくはほぼない |
ゲームのタイプ | エンドレスゲームや対戦が多い | ステージクリア型が多い |
解法 | 複数あることが多い | 開発者がある程度想定していることが多い |
ここで注目していただきたいのは、「ぷよぷよ型は解法が複数存在するが、もじぴったん型はある程度決まっていることが多い」という点です。
以上を踏まえて、それぞれのパズルゲームのRTAについて見ていきましょう。
「ぷよぷよ型」パズルゲームのRTA
ぷよぷよ型のパズルゲームを走るにあたっては、そのゲームをある程度プレイできるようになることが求められます。
「何を当たり前のことを……」と思われるかもしれませんが、そうでないゲームがこの後たくさん出てきますので、今のところはとりあえず納得しておいてください。
そんなぷよぷよ型のパズルゲームを走れるまで上達するには、それらのゲームで求められるテクニックを覚えるのが近道です。
テトリスであればTスピンの作り方、ぷよぷよであれば連鎖を打てる積み方などがこれに当たります。
ぷよぷよを例に見てみましょう。
ぷよぷよで連鎖を狙う際の積み方の1つに、「階段積み」があります。名前のとおり、ぷよを階段状に並べる積み方です。
同じ色を縦に3つくっつけて、その上に隣接するぷよと同じ色を置くという一見簡単な積み方ですが、これを覚えただけでぷよぷよが上手くなるわけではありません。
ぷよぷよは落ちてくるぷよの色がランダムなので、階段積みを作るうえで不要な色が出ることも多々あり、不要な色を処理するための能力がないと連鎖が組めないからです。
加えて、対戦の場合には相手の盤面を見ながら「いつ連鎖を開始させて攻撃を送るか」というタイミングも見極めなければならず、ぷよぷよの上達には長い時間がかかります。
では、時間をかけてテクニックを習得し、ぷよぷよが上達したと仮定して、ぷよぷよのRTAを走るためにはどのような練習をすればいいのでしょうか。
答えは単純明快、習得したテクニックを使って走るだけです。
ぷよぷよ型のパズルゲームの場合、ゲームの上達に必要なテクニックがあれば、大抵のカテゴリは走れてしまうからです。
もちろん、「CPUの特性を熟知して適切なタイミングで攻撃を送る」などのタイム短縮のための細かいテクニックはありますが、走り切るだけなら通常プレイの範疇で何とかなるケースがほとんどです。
ぷよぷよ型のパズルゲームのRTAは、「初見からではテクニックの習得に時間がかかるが、通常プレイができるようになれば特別な準備をしなくても走れるゲームが多い」と言えるでしょう。
「もじぴったん型」パズルゲームのRTA
先ほど、ぷよぷよ型はそのゲームがある程度プレイできないと走れないと言いましたが、もじぴったん型の中には、そのゲームをやったことがなくても走れるゲームが存在します。
「通常プレイをやっていなくても走れる」という一見矛盾している表現を可能にしているのは、前述の「解法がある程度定められている」という特徴です。
その最たる例が、ピクロスです。
日本でもスーパーファミコン Nintendo Switch Onlineで配信が開始された「マリオのスーパーピクロス」は、出題されるピクロスの問題は全て固定であり、答えも1つしかありません。
その結果、RTAでは「答えを見ながらいかに素早く入力できるか」を競う、パズルゲームとは到底思えない競技と化しています。
Mario’s Super Picross Level 1 Speedrun World Record (4m 44s) | YouTube
ことばのパズル もじぴったんの場合、ピクロスのように答えが1つに固定されているわけではないためそう簡単にはいきませんが、初期配置や使えるひらがなは固定されています。
そのため、RPGなどのRTAと同様に、「チャートを組む」という作業が必要です。
注目すべきは、ゲームを自力でクリアできなくても、チャートさえあれば走れる点です。極端な話、自分でチャートを作らなくても、チャートさえ入手してしまえばすぐに走れます。
その分、タイムを大きく左右するのは操作精度です。アクションゲームやその他のジャンルのRTAと同様、正確な入力と速度が好タイムを出すためには必要不可欠です。
たとえば、将棋ゲームの「本将棋 内藤九段将棋秘伝」は、CPUを詰ませる最速の手順が確立されているため、駒を8回動かすだけで完走できます。
しかし、ファミコンのコントローラーで斜めを入力しなければならないなど、駒を最速で動かすためには緻密な操作が求められるため、発売から30年以上経った今でも多くの走者に愛されています。
内藤九段将棋秘伝はパズルゲームではないものの、この「操作精度と速さが必要」という点が走者を惹きつけてやまないのは、もじぴったん型のパズルゲームと同じです。
もじぴったん型のパズルゲームのRTAは、「チャートさえ入手できれば、通常プレイができなくても走れるゲームが多く、良いタイムが出せるかは操作精度次第」と言えるでしょう。
パズルゲームが苦手な人でも走れるパズルゲームとは
前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題です。パズルゲームが苦手な人でも走れるゲームを紹介します。
もう察しがついているかもしれませんが、もじぴったん型のパズルゲームを選べば、パズルゲームが苦手でも走れます。中でも筆者が個人的におすすめするタイトルを紹介します。
なお、過去にもパズルゲームRTAにおすすめのタイトルを紹介する記事を執筆していますので、そちらに掲載したタイトルは省略します。もじぴったんが気になる人は以下の記事からどうぞ。
マリオのスーパーピクロス
- ジャンル:パズル
- 対応プラットフォーム:Nintendo Switch、スーパーファミコンなど
- speedrun.comのリーダーボード:https://www.speedrun.com/marios_super_picross
前の章でも紹介した、数字をヒントにます目を埋めていくパズルゲーム「ピクロス」が遊べるゲームです。
先駆者の走りを見て答えを確認しても良いですが、検索すれば解答を掲載しているサイトがたくさん出てくるので、検索エンジンのお世話になるのが手っ取り早いと思います。
スーパーファミコン Nintendo Switch Onlineで配信されているので、オンラインサービス加入者であれば無料で挑戦できるのも始めやすいポイントです。
Helltaker
- ジャンル:パズル、アクション、恋愛シミュレーション
- 対応プラットフォーム:PC(Steam)
- speedrun.comのリーダーボード:https://www.speedrun.com/helltaker
限られた手数でゴールへ向かうパズルゲームと、女の子との会話で適切な返答を選ぶ恋愛シミュレーションゲームを繰り返し、最後にボス戦でアクションを行うゲームです。
HellTaker SpeedRun [4:34.067] Any% | NEW WORLD RECORD | YouTube
パズルの答えと会話の正しい選択肢は決まっているので、覚えてしまえばあとはアクションパートでの勝負です。Steamで無料で遊べることもあり、始めるハードルが低いのもメリットです。
speedrun.com上には投稿時現在で237人もの走者がいるなど、RTAでも大人気の今作。Puzzle Game RTA Festivalでも披露されました。
ゲームの内容もさることながら、出てくる女の子がみんな可愛いのが一番のおすすめポイント。ちなみに、筆者はパンデモニカちゃんが一番好きです。困憊悪魔は、いいぞ。
Baba Is You
- ジャンル:パズル
- 対応プラットフォーム:PC(Steam)、Nintendo Switch
- speedrun.comのリーダーボード:https://www.speedrun.com/baba
自分でルールや目標を変えてクリアを目指すパズルゲームです。ルールそのものがブロックとして配置されているので、操作してルールを変えてしまう、といった感じです。
Baba Is You Any% Speedrun WR – 04:55.81 | YouTube
「どう動いて、どうルールを変えるのか」をじっくり考えるのが醍醐味のゲームですが、RTAでは解法は全て分かっているので、純粋に操作が速い人が勝ちます。
投稿時現在でspeedrun.comにAny%の記録が登録されているのは20人、うち日本人は1人だけなので、今が狙い目のタイトルとも言えるのではないでしょうか。
知名度も高く名作と評判のゲームなので、「俺、Baba Is You走れるから」と言えたらちょっとかっこいいかもしれないですね。
The Pedestrian
- ジャンル:パズルアドベンチャー
- 対応プラットフォーム:PC(Steam)、PS4など
- speedrun.comのリーダーボード:https://www.speedrun.com/thepedestrian
「ピクトさん」の愛称でおなじみのピクトグラムのキャラクターを、3D世界に点在する2Dの標識の中で冒険させるゲームです。
The Pedestrian in 11:50.00 | Any% [WR] | YouTube
本作におけるパズル要素は、「ピクトさんが移動できるように標識を繋げたり並びかえたりすること」なので、正解さえ分かってしまえばあとは操作精度の勝負です。
投稿時現在で走者が13人いるので、先人たちの走りを見て覚えてしまえばすぐにでも走れます。
筆者個人としては、世界観も含めてとても気に入っているゲームなので、興味を持ったらまずは通常プレイから楽しんでいただきたいです。初見でも5時間ほどでクリアできます。
おわりに
今回は、「パズルゲームが苦手でもパズルゲームは走れる」をテーマに、パズルゲームに苦手意識がある人に向けて走りやすいゲームを紹介しました。
パズルゲームが好きな人間としては、「パズルの面白いところを一切無視して走るのはちょっと……」と思ってしまうこともありますが、ゲームの楽しみ方は人それぞれなので、自分に合った楽しみ方をしてもらえればいいのではないかと思います。
この記事を読んで少しでもパズルゲームRTAに興味がわいたら、ぜひ始めてみてくださいね。
パズルボブルRTAをやる人。みんなからはタイトーの回し者と呼ばれておるぞ。
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